社説:保護司不足 持続可能な制度へ見直しを
京都新聞 / 2023年6月4日 16時0分
新たな人材確保につなげ、持続可能な制度となるよう見直したい。
罪を犯した人の立ち直りを支援する保護司が減少する中、法務省がなり手の確保に向けて有識者の検討会を立ち上げた。
保護司は、刑務所や少年院を出た保護観察中の人たちと定期的に面会し、就職や生活の相談に乗り、社会復帰を手助けする。
満期出所者よりも保護観察の対象となる仮出所者の方が再犯率が低いというデータもある。住居や就労の支援は対象者の孤立を防ぎ、再犯防止につながる。地域事情に詳しく、継続して寄り添える保護司たちの活動維持は極めて重要といえよう。
保護司は、法相の委嘱を受けた非常勤の国家公務員ではあるが、実態は交通費などの実費以外は無報酬の民間ボランティアだ。
法務省によると、保護司の数は定員5万2500人を下回り、今年1月現在で約4万6千人(70代後半の特例再任除く)。60歳以上が約8割を占めており、高齢化が顕著だ。あと20年もたたない間に、中核を担ってきた世代が次々と退任する。
検討会では、新たな任用は66歳以下としている年齢制限の緩和のほか、保護司法で「給与を支給しない」とする規定見直しが大きな論点となる。
企業で定年延長が進んでいるのに加え、保護司の善意や熱意に頼るばかりでは制度の維持はおぼつかない。年齢制限の緩和や報酬の導入により、より若い世代で人材を発掘できる可能性がある。
後任選びは退任者のつながりで見つけることが多いが、「忙しい」「家族の理解が得られない」などの理由で断られることが多いという。地域コミュニティーの希薄化も、なり手確保の壁といえよう。
また保護司からは、自宅での面接や、すべての活動への参加が困難といった不安の声も聞かれている。
検討会では公募制や、業務の一部のみを請け負う「担当制度」の導入も検討課題としてあがっている。保護司が安心して活動ができるような環境整備が急務だろう。
法務省は一昨年から、76歳未満という保護司の年齢上限を、特例再任で2年延長できる制度を始めた。面会場所の拡充、インターンシップ制度の導入も歯止めにはなっておらず、業務と待遇の抜本的な改革が欠かせない。
2年前、京都市で開かれた「世界保護司会議」では、国連犯罪防止刑事司法委員会に対し、ボランティアの国際ネットワーク構築や「世界保護司デー」設立を求める「京都保護司宣言」が採択された。
若い世代には、保護司の存在もあまり知られていないとされる。その活動と役割について、さらなる周知と発信も必要となっている。
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