社説:盛り土規制法施行 安全確保へ実効性を高めよ
京都新聞 / 2023年6月5日 16時0分
危険な盛り土による土砂災害の防止を目指す「盛り土規制法」が、先週から施行された。
盛り土が崩落すれば住宅に被害が出る恐れのある場所を、都道府県などが規制区域に指定し、許可がなければ区域内で造成ができないようにした。違反した法人には、最高で3億円の罰金を科すことも規定している。
法規制は、2021年7月に静岡県熱海市で発生した大規模土石流を教訓に導入された。不適切に盛られた建設残土の崩壊が起点になっていたからだ。静岡県に規制条例はあったが、罰則の軽さもあって、抑止力に欠けたと指摘されている。
全国一律の基準で規制は強化されたが、違反を見逃さない行政の対応も伴わなければならない。実務を担う自治体には、法規制の実効性を高める体制づくりが求められる。
盛り土はこれまで、宅地や農地、森林など、造成される場所によって適用される法令や規制が異なっていた。所管部署間での情報共有や連携が不足する一因とされてきた。
共同通信の調査によると、盛り土規制法の施行を前に、京都や滋賀など31都府県が担当部署の新設や人員増強などを行っている。ただ、規制区域の指定に向けた基礎調査や造成の許可、管理状況の監視など、業務量は膨大になる。自治体からは「人手が足りなくなるのでは」と懸念の声が上がっている。
同法では、許可が必要になる盛り土の規模を知事らの判断で国より厳しくできる。自治体間の差が狙われ、規制が緩い地域に建設残土などの搬入が集中しかねないため、連携も必要だろう。
自治体が執行体制を整え、業務を円滑に進めるためには、人材育成や適切な情報提供といった国のサポートが不可欠だ。責任の所在を明確にしつつ、自治体も縦割りを排して対応力を高めたい。
盛り土の崩落は京都や滋賀でも起きている。18年の西日本豪雨では、京都市伏見区の大岩山山頂付近に運び込まれた建設残土が崩れ、大量の土砂が住宅地のすぐそばまで迫った。
21年8月には、大津市の国道161号西大津バイパス「近江神宮ランプ」に土砂が流れ込み、7カ月にわたって出入り口が通行止めになった。
大岩山では、複数の土木会社が宅地造成規制法の許可などを得ずに残土を運び込んでいた。西大津バイパスでも、建設会社が無許可で行った盛り土の崩落だった可能性が高いとされる。
京都市や大津市はそれぞれ是正を指導してきたとするが、なぜ不法行為が見逃されてきたのか。詳しく検証し、対策に生かさなければならない。
局地的な豪雨が頻発し、土砂災害の懸念が高まっている。法規制を契機に、地域の被害リスクの再点検と低減に努めたい。
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