「心にふたした子どもの助けに」 いじめられた京都・宇治出身の絵本作家 秘めたる思い
京都新聞 / 2023年6月7日 14時34分
植田薫さん(42)は、自身が遭ったいじめの経験をベースに絵本を制作し、作品の寄贈や朗読会を通して物語を伝える活動をしている。「いじめなどで心にふたをしてしまった子どもたちの助けになりたい」と語る。
いじめの原因は小学2年の時、通学路にあったイタチの遺骸。ほかの児童が見て見ぬふりをしたり、石を投げつけたりする中、「あかんやろ」と感じ、空き地に運んで埋めた。すると同級生から避けられたり、「ゾンビ」などと悪口を言われたりするようになった。
いじめはその後、自然になくなったが、もやもやとした感情が残った。「諦めに似た、えたいの知れない気持ちだった」と振り返る。
1作目の絵本「いたちとぼく」はその時のエピソードを下敷きに2年前に書き上げた。亡くなったイタチが語りかけ、主人公が自らの行動を肯定する物語に仕立てた。「悪いことに対して憤りを感じるのに、心にふたをしてしまう。学校だけでなく、家庭や職場などさまざまな場所であるはず」と話す。
京都府宇治市出身。子どもの頃は絵や工作に熱中し、美術系の高校や大学でデザインを学んだ。広告代理店などを経て、35歳で独立し、ウェブ制作や企業支援などに取り組む。
フリーランスになってから、「アンパンマン」作者の故やなせたかしさんのような「メッセージ性のある絵本を書きたい」との思いが募り、新型コロナウイルス禍で仕事が減ったのを契機に絵本制作を手がけた。現在3作目に取りかかろうとしている。
今春、自作絵本の寄贈などにかかる費用を調達しようと、クラウドファンディングを行った。当初目標の2倍に当たる約122万円が147人から集まり、240冊分の資金になった。
これまで京都市や大津市などの児童施設や子育て支援団体に寄贈し、朗読会を開いてきた。今後は生まれ育った宇治市にも対象を広げる予定で、「少しでも自分の経験を地元に役立てたい」と力を込める。大阪府豊中市。
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