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社説:侵略的外来種 国際的な協力で対策強化を

京都新聞 / 2023年9月30日 16時0分

 実効性ある対策と国際的な協力が急がれる。

 生息域外から持ち込まれ、生態系や人々の暮らしを脅かす虫や魚、植物など「侵略的外来種」による被害の実態が、国際的な科学者組織の報告書で明らかになった。

 経済的損失は、少なくとも年4230億ドル(61兆8千億円)に上るという。

 報告書によると、貿易や人の移動で、本来の生息域ではない場所に侵入した3万7千種のうち、3500種以上が侵略的外来種だった。世界で絶滅した動植物の6割に、侵略的外来種が関与していたという。

 現在も年200種のペースで確認されている。グローバル社会が進む中、今後も被害の拡大が予想される。今以上に侵入予防や早期防除が不可欠だ。

 日本での侵略的外来種は、身近にも琵琶湖のオオクチバス(ブラックバス)が知られる。密放流で1980年代後半ごろに激増し、琵琶湖固有種が減少した。毒のあるセアカゴケグモも京都や滋賀の各所で発見されている。片や海外では、ワカメやコイが日本発の侵略的外来種として扱われている。

 特に近年、政府が危機感を強めるのが南米原産のヒアリだ。刺されるとやけどのような痛みが出て、重いアレルギー反応が生じ、海外では死亡例もある。

 輸入した貨物のコンテナなどに紛れて入るケースが急増し、初確認された2017年以降、国内侵入は100件を超えた。

 生息が定着すれば防除には膨大な費用が見込まれる。日本側は貨物到着時に調査や消毒に取り組んできたが、輸出国には駆除する責務がない。

 環境省はヒアリを要緊急対処特定外来生物に指定して対策を強化してきたが、水際で防ぐだけではもはや限界である。

 輸出前の「出どころ」で、貿易相手国によってコンテナ内の消毒や確認の強化ができれば、一定の侵入抑制につながる。事業者の協力は不可欠で、ルール作りが求められる。

 昨年末に開かれた国連の生物多様性条約締約国会議(COP15)では、30年までに侵入速度を半減させる目標で合意した。

 また札幌市で4月にあった先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合でも、国際協力の強化が必要との認識で一致している。

 ただ、世界で外来種対策の具体的な法律や規制を制定した国は2割弱に満たない。ペットとして飼育できる生き物に関しては、輸入や販売、野外放出の禁止などさらなる規制も検討していくことが求められよう。

 政府はG7で議論を進め、11月に東京で開かれるワークショップで、各国が取るべき行動をまとめる方針だ。

 日本は各国で具体策が講じられるよう、議論を主導してほしい。G7の枠を超えた国際連携も進めていくべきだ。

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