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社説:台湾総統選 住民は「現状維持」を選んだ

京都新聞 / 2024年1月16日 16時0分

 台湾の総統選で、与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳氏が、中国との融和路線を掲げる最大野党・国民党の侯友宜氏らを破り、初当選した。

 1996年に総統直接選挙を導入して以来、同一政党が初めて3期連続で政権を担う。

 頼氏を独立派と見なし敵視する中国は軍事的な威嚇や経済面の締め付けを強めたが、台湾の有権者は動じず、中国から距離を置く現政権の継続を選んだ。

 民主的な政権選択を重ねてきた有権者の判断は重い。中国は力で緊張を高めるべきではなく、中台の安定に向けた対話を求めたい。

 頼氏は「台湾を守る決意がある」と勝利宣言した。ただ、得票数は、前回の蔡英文氏(総統)に及ばず、侯氏と野党第2党・台湾民衆党の柯文哲氏の合計も下回った。同日選の立法委員(国会議員)選でも民進党は過半数を維持できなかった。

 これをとらえて、中国は「民進党は台湾の主流な民意を代表していない」などとしているが、見当違いも甚だしい。

 民進党は、いまは独立を主張しておらず、国民党も一国二制度による統一を否定している。統一も独立も求めない「現状維持」は台湾の人々の共通意識であり、体制選択が今回の選挙の主要争点でなかったのは明らかだ。

 民進党が得票を減らした主な要因は、対中姿勢ではなく、2期8年続いた政権周辺での汚職や低賃金、都市部を中心とした住宅費の高騰など、主に内政への批判だろう。

 立法委員選挙で民進党が国民党に第1党の座を譲り渡したのも、台湾人のバランス感覚が働いたとみるべきだ。

 むしろ、台湾周辺で軍事演習を繰り返したり、香港で民主派への弾圧を強めるといった中国の姿勢が、かえって台湾有権者の警戒感を募らせたのではないか。

 頼氏は当選後、対話や交流を中国に呼びかけるなど、慎重な姿勢を見せている。当面は、5月20日に予定されている総統就任演説で、歴代総統が触れてきた「一つの中国」について、どのように言及するかが注目される。

 米国は頼氏に祝意を贈る一方、バイデン大統領は「米国は台湾独立を支持しない」と明言した。

 米国と中国は中東などの紛争対応や内政、経済面でともに不安を抱えている。不測の事態を招かぬよう、関係の改善と安定化が求められる。

 日本は粘り強く中国と台湾双方に対話を働きかけるなど、地域の緊張緩和に尽力すべきだ。

 日本国内には「台湾有事は日本有事」などと、声高に防衛力強化を求める動きがある。

 むやみに地域の緊張を高めるのは台湾の人々を含めリスクであり、冷静になるべきだ。

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