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社説:デジタル教材 活用へ教員負担の軽減必要

京都新聞 / 2024年3月25日 16時0分

 来春から中学生が使う教科書で、デジタル教材が大幅に増えた。生徒1人に1台の端末配布を終えたことを踏まえた対応だが、多忙な教員の負担がいっそう重くなる面が否めない。

 デジタル教材を生徒の多様な学びにつなげるには、教員が効果的な使い方をじっくり検討する時間が要る。それを支える体制づくりと一体で進めることが求められよう。

 文部科学省が公表した教科書の検定結果によれば、合格した中学教科書の10教科100点の9割超が2次元コード(QRコード)を掲載した。読み取ると、動画や音声など文字では表現しにくい知識が得られる。紙のページ数を減らすため、従来は載せていた教材の一部をデジタル化した社もあった。

 文科省は4月から、小学校5年生~中学3年生の英語でデジタル教科書を先行導入する。今回のデジタル教材拡充は、科目をさらに広げる地ならしの面も大きいとみられる。

 デジタル教材は、校務支援システムなどICT(情報通信技術)活用とうまく統合すれば、教材作成や成績処理といった面で教員の負担軽減になることも期待できるという。

 だが、そこに至るまでの移行過程では、従来業務に加えた研修やデジタル機器への対応といった二重の負荷が教員にのしかかる点は見過ごせない。

 教員の長時間労働が問題視されて久しい。

 働き方改革の一環として、中学では教員の負担となってきた部活動指導の「地域移行」が打ち出されたが、受け皿不足などで遅々として進んでいない。文科省は当初、23年度からの3年間で集中的に移行するとしたが、早々に期限は撤回された。

 デジタル移行も地域移行も「場当たりに上から降りてきて、逆に仕事を増やすばかり」との声が現場に渦巻く。教員増や事務作業などを支援するスタッフ拡充など、国は一段と踏み込んだ対応が欠かせない。

 各自治体や地域、保護者らが、変化に追われて疲弊する学校をどうサポートできるかも考える必要があろう。

 生徒たちは、SNS(交流サイト)など激変するデジタル環境のまっただ中にいる。

 今回の検定では、新聞を活用するNIE(教育に新聞を)を取り上げる教科書が増えた。

 新聞記事を通して、偽のニュースや画像、デマの拡散といった新たなメディアが生み出す負の課題への向き合い方を考え、情報リテラシー(読解力)を高めてほしい。

 人工知能(AI)の話題も多くの教科書が掲載したが、生成AIで宿題に回答することが可能な時代に、生徒の学ぶ力をいかに育むのか。社会的な議論が迫られる。

 紙媒体を用いて学ぶ重要さも改めて指摘したい。

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