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社説:選択的夫婦別姓 政治の不作為は許されない

京都新聞 / 2024年3月31日 16時0分

 もはや、たなざらしは許されない。当事者や各界から切なる声が上がる男女不平等の救済に向けて、政治が大きく踏み出すべきだ。

 夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は、個人の尊重などを定める憲法に違反し無効だとして、北海道や東京都などに住む男女ら計12人が今月、国に対し、別姓のまま婚姻できる地位の確認や損害賠償を求めて東京、札幌の両地裁に提訴した。

 夫婦同姓を法律で義務付けているのは世界で日本だけであり、実際はほとんど女性が改姓している。

 訴状では、現行法はいずれかの姓を変えるか、婚姻自体を諦めるかの「過酷な二者択一」を迫っていると強調。「家族の在り方や国民意識の多様化が進み、別姓を認めないことに合理性はない」と訴えた。

 この問題では、法相の諮問機関・法制審議会が1996年、夫婦が同姓でも別姓でも希望に応じて選べるようにする「選択的夫婦別姓」の導入を盛り込んだ民法の改正案を答申している。もう30年近くになる。

 2022年の参院選では自民党以外の政党が公約で、導入に前向きな姿勢を示した。だが、一部の保守派の反対で自民だけがまとまらず、ブレーキをかけ続けている。

 業を煮やして、経済界が動き出した。

 企業経営者らによる有志の会が、経団連など5団体とともに今月、選択的夫婦別姓の早期導入を求めて、法人役員ら千人超の署名を添えた要望書を政府に提出した。

 経団連の十倉雅和会長も定例会見で「一丁目一番地としてやってほしい」と明言している。

 旧姓を通称使用している現状では、仕事上とパスポートでの姓が異なり、海外渡航時の手続きなどで支障が多い。技術者からは論文執筆や特許取得など旧姓での実績が、改姓後は生かされないなどの訴えが続く。

 共同通信が昨年に実施した世論調査でも、8割近い人が導入に賛成と答え、30代以下は9割に及ぶ。

 国連の女性差別撤廃委員会は日本に対し繰り返し、法律で夫婦同姓を義務付けることは女性差別で、速やかに改正すべきだと勧告してきた。

 ところが岸田文雄首相は昨年2月の衆院予算委員会で、夫婦別姓や同性婚の制度導入を求められ、「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と答弁し、今国会でも慎重な姿勢を崩していない。政権・与党の不作為というほかない。

 選択制は同姓を希望する人に何ら不利益はない一方、現状のままではアイデンティティーを否定されたようで生きづらさを感じる人がいる。

 自分の姓を選択できる権利が、当たり前にある社会が求められている。

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