京都の「古墳のまち」支えて50年 保存運動続ける男性は、百舌鳥古墳群の街で育った
京都新聞 / 2024年4月9日 15時30分
「古墳のまち」とも呼ばれる京都府城陽市。200基以上が確認されているが、戦後の宅地開発などで現存するものは半数ほどだ。住民を中心につくる「城陽の緑と文化財を守る会」は埋蔵文化財の消失を憂い、保存運動に取り組んできた。代表の杉浦喜代一(すぎうら・きよいち)さん(73)は「古墳や遺跡は千年の時を飛び越え、地域の歴史を感じさせてくれる。この地に『住みたい』という動機になる上、緑化にもつながりますよ」とほほ笑む。
団体結成は今から半世紀前。現在は国史跡である芝ケ原古墳や正道官衙(かんが)遺跡などの保存に向けて、行政への要望活動を展開してきた。「どうにか未来に残したいとの思いだった」。2009年には、文化財保護に尽力する全国の団体や個人をたたえる和島誠一賞に輝いた。
郷土史にまつわる論考が載る会誌「和訶羅(わから)河」の発行も活動の軸だ。誌名は、地域の歴史文化を育んできた木津川の古名。山城地域を代表する前方後円墳「久津川車塚古墳」の調査と保存の歴史や、平家打倒を目指した以仁王にまつわる府南部の伝承、明治維新の元勲・木戸孝允の城陽での足跡など、扱うテーマや時代は多彩だ。
杉浦さんは百舌鳥古墳群で有名な堺市で育ち、古墳には子どもの頃から親しんできた。一方、大学では地理学を専攻し、会誌で発表を続けるテーマは古代史より、むしろ近現代史よりだ。市役所東側にあった「城南農工場」という引き揚げ者の施設を追ってきた。
旧満州の開拓移民が多かったといい「現地で収穫ができたのは1、2回だけ」「ソ連の戦車が迫る中をなんとか逃げ帰った」など、体験者のライフヒストリーを聞く中でひかれていった。
施設一帯がたどった歴史を「東部丘陵開発の前史」と位置付け、戦前からの開発史の調査を進めてきた。農地の広がっていた地域に、昭和に入りラグビー場や野球場が完成。だが、太平洋戦争で軍需工場に転用され、敗戦後に引き揚げ者を受け入れる施設となった。今は中学校や住宅地となったが「国策に左右されることがなければ、全く違う景色が広がっていたかもしれませんね」。
自身は元市職員。新米時代に同会に加わり、今は会長。「日々新しい学びがある。楽しんでいるうちに、気付いたら50年近くたっていました」。会では古墳や社寺、名木などの見学会も行っており、「『住んでいるまちのことが知りたい』と思ったら、気軽に参加して」と呼びかける。城陽市寺田。
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