社説:ガザ反戦デモ 学生の訴えに向き合え
京都新聞 / 2024年5月8日 16時0分
深まる人道危機に憤る若者たちの声を受け止めるべきだ。
イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃に反対する学生デモが、全米に広がっている。
学生たちは、大学内で座り込むなどして抗議活動を展開し、警察の強制排除などによる逮捕者は、約50大学で計2300人を超えた。
ガザ住民ら死者3万4千人を超える惨状に対し、自衛をはるかに踏み越えた「ジェノサイド(大虐殺)だ」と学生たちは批判。イスラエルと、支援を続ける米政府に「ノー」を突き付けている。
発火点となったのが、ニューヨークのコロンビア大だ。4月半ば以降、学生たちは「ガザ連帯キャンプ」を掲げて学内に張ったテントに泊まり込んで戦闘停止を訴えた。一部が校舎に侵入、占拠したとして大学側は警察に介入を要請し、100人以上が逮捕された。
カリフォルニア大ロサンゼルス校では、デモ参加者と、イスラエル支持派とみられるグループが衝突して負傷者も出た。警察が解散を命じても学内にとどまった数千人が反戦を訴えるなど、各地で熱を帯びている。
米国では、資金力のあるユダヤ系団体・企業が政財界に強い影響力を持つ。イスラエルへの批判は、「反ユダヤ主義」と攻撃されるのを恐れて避ける風潮も根強い。だが、しがらみの少ない学生から批判が噴き出したといえる。
CNNテレビが4月に行った世論調査で、ガザ攻撃を止めないバイデン米大統領の対応について、18~34歳の若年層の81%が「支持しない」と答えた。
学生たちは大学側にも厳しい目を向ける。運営資金を得る基金運用でイスラエルに関係する企業への投資をやめるよう求めている。
一方の大学側には、経済界などが学生への厳しい対応を要求。秋の大統領選の争点にも浮上し、親イスラエルの共和党は抗議活動をやり玉に、ハーバード大学長らを辞任に追い込んだ。
圧力に屈した形の大学側の警察導入や停学処分に世論の反発も見られる。若者、リベラル層の支持離れは、再選を目指すバイデン氏に危機感を募らせている。イスラエル支持を続けつつも、ガザ最南部侵攻に難色を示し、弾薬供与を停止したのはその表れだろう。
かつて米大学のベトナム反戦デモは世界的なうねりに発展した。そうした若者たちの厳しい声に向き合い、一刻も早い停戦実現に力を尽くさねば、米国の国際的な信用のさらなる低下は免れまい。
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