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京都駅を混乱させた「不審物騒動」は損害賠償請求に当たるのか JR西日本の対応、専門家の見方は?

京都新聞 / 2024年5月8日 17時30分

不審物騒動で混乱した京都駅の改札口

 今月5日、京都市下京区のJR京都駅に到着した列車の網棚から不審なリュックサックが見つかり、JR西日本が在来線のホームを封鎖したり列車の運行を見合わせたりする騒動があった。結果的に単なる忘れ物として取り扱われたものの、大型連休のまっただ中とあって乗客の足やJR西日本の業務に多大な影響を及ぼした。そこで気になるのが、今回のケースは損害賠償請求や被害届の対象になり得るのかということだ。JR西日本や法律の専門家に見解を聞いた。

 まずは当日の状況を振り返ろう。午後4時20分ごろ、京都駅に到着した湖西線の普通列車の網棚から不審なリュックサックが発見されたため、駅員が「化学薬品の可能性がある」と110番した。安全を確保するため、京都府警とJR西日本は同駅在来線のホームを封鎖し、同駅を発着する列車の運行をすべて見合わせた。駅構内にいた利用客は避難させられたほか、京都駅の改札の外にも足止めされた利用客の人だかりができた。線路上では計3本の列車が立ち往生し、約1250人の乗客が車内に一時とどめ置かれたという。

 京都府警下京署などによると、発見されたリュックサックは縦約60センチ、幅約50センチで、「四塩化一黄酸」との漢字6文字が表面に記されていた。出動した府警機動隊員が中身を確認すると衣類や軍手が入っていた。化学物質などは入っていなかったという。乗車していた男性が車内に忘れた荷物だったという。京都府警が安全を確認し、全線で運行を再開したのは午後6時ごろ。JR西日本の説明では、特急を含む計80本の列車が運休し、約8万5千人に影響が出たという。

 大型連休のさなかの繁忙期に大動脈を直撃した今回の騒動。JR西日本は、リュックサックの持ち主に対する損賠請求や警察への被害届を検討しているのだろうか。

 京都新聞社の取材に対し、近畿統括本部の広報担当者は「結論の回答は差し控えさせていただく」としつつ、「京都府警は故意ではなく、持ち主に遺失物として返還していることを踏まえ、被害届の提出(損倍請求)は難しいものと考えている」との認識を示した。

 では、損倍請求や被害届を出すのはどのようなケースなのか。広報担当者は「個別の判断になるが、故意性や悪質性がある場合に請求することがある」と説明する。

 下京署は、「故意性がなく、何らかの被害を受けた人もいない。業務妨害などの刑法犯に問われることはない」とする。

 民事訴訟についてはどうだろう。鉄道トラブル問題に詳しい翠光法律事務所(東京都千代田区)の小島好己弁護士(東京弁護士会)は、「京都駅の事案で、損害賠償請求は難しいのではないか。リュックは混乱させるためにわざと置いたのではなく、置き忘れに過ぎないからだ」と指摘する。

 さらに「確かに『四塩化一黄酸』というネーミングはまぎらわしい。ただ、『まぎらわしい名前を書いたリュックを置き忘れたら、鉄道が混乱する』ということを事前に予見できるかというと、そこまで強力な注意義務は発生しないだろう」と解説する。

 一方で「本物の塩酸や硫酸などの毒劇物を置き忘れ、鉄道に混乱が生じた場合は、損害賠償請求が発生する可能性がある。『危険な物を置けば混乱する』ことは予見可能で、課される注意義務は、衣類が入っただけの『四塩化一黄酸』のリュックとは全く異なるものになる。認知症患者の徘徊により、鉄道トラブルが生じることがある。この場合は、徘徊によって混乱が生じる可能性を、家族が予見可能であるとして、損害賠償請求を受けることがある」との見方も示す。

 いずれにしても、今回のケースが損害賠償や事件に発展する可能性は極めて低いと言えそうだ。

 一方、JR西日本は今回の駅員による対応をどのように評価しているのだろうか。広報担当者は「多くのお客様にご不便をおかけし申し訳ございませんでした。安全最優先の対応をさせていただいたのでご理解いただきたいと考えている。引き続き、不審物を発見した際の対応を徹底していく」としている。

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