社説:ネット中傷対策 改正法で匿名暴力防げ
京都新聞 / 2024年5月17日 16時0分
インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷投稿への迅速対応を求める改正プロバイダー責任制限法が成立した。
交流サイト(SNS)を運営する事業者に削除申請の窓口整備や手続きの公表などを義務付ける。名称も情報流通プラットフォーム対処法に改める。
「匿名の暴力」とも言われる卑劣なネット中傷に歯止めをかけるとともに、被害者の救済につなげたい。
ネット中傷による被害の深刻さを再認識させたのが、2020年に起きたプロレスラー木村花さんの急死だ。SNSで多くの中傷を受けていた。旧ジャニーズ事務所の性加害問題を巡ってもネット中傷が横行し、被害者の男性が昨年、命を絶つ悲劇を招いた。
匿名による正当な内部告発や政治批判まで安易に排除されてならないのは言うまでもないが、ネット中傷の悪質さは目に余る。
事態の深刻化を受け、同法は21年にも改正され、投稿者の情報開示手続きを簡素化するなど対応を強化してきた。事業者側も違法な投稿の削除やアカウント停止などに取り組んでいるものの、対策が追い付いていないのは明らかだ。
総務省が委託する「違法・有害情報相談センター」には22年度に5745件の相談があった。とりわけ中傷投稿の拡散を防ごうと速やかな削除を申し入れても「きちんと対応してもらえない」との不満が目立ったという。
このため、今回の改正は、フェイスブックやX(旧ツイッター)などを運営する巨大IT企業を念頭に、削除の相談窓口を整備して公表し、一定期間内に削除に応じるかどうかを通知することを義務付け、対応の迅速化を促す。
被害者救済に一定の効果が期待できるとはいえ、事業者側がどこまで削除に応じるかなど実効性が課題となる。大手ITの多くは海外に拠点を置いており、いかにルールを守らせるか。政府は1年以内とする施行に向け、日本法人の体制強化など政省令の中身を詰める必要がある。
違法コンテンツの排除を義務付ける欧州連合(EU)のデジタルサービス法(DSA)に比べ、物足りなさは否めない。誹謗中傷以外にも、ネット空間には災害時の偽情報や成りすましによる詐欺など真偽や根拠が不明の情報があふれている。こうした違法コンテンツへの対策も急務と言えよう。
ネット中傷への安易な追随や拡散も深刻な被害を招く。一人一人が情報発信には責任が伴うことを忘れてはなるまい。
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