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同じファミコンソフトなのに、性能のいいゲーム・悪いゲームがあったのはなぜ?

マグミクス / 2023年2月16日 20時10分

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■「低性能の壁」を越えようと頑張っていた開発会社

 1980年代以降のファミコン時代、ゲームの数が膨大になると、ハードの性能をどこまで引き出せるかがクオリティの差につながり、売り上げを左右するという側面がありました。当時の開発者も、マンガやアニメ、映画などと同等以上の表現を望んでいましたが、昔のハードは性能が低かったため、制約の壁を乗り越えられるかどうかは、ゲームのアイデアやシナリオの善し悪しと並んで重要な課題でした。

 例えばファミコン版『ファイナルファンタジーIII』(1990、スクウェア)で見せた、飛空艇ノーチラスの驚異的な移動速度が、本来ファミコンの性能では実現できず、ある種のバグを利用したものだったという噂は有名です。その話を知らなくとも、当時飛空艇を動かした子供たちはそのスピードに驚いたことでしょう。

 また、ファミコン版『グラディウスII』(1988、コナミ)では、自機に追従するオプションがアーケード版同様に4つになりました。自機+オプション4つという状態は、ファミコンの定説「スプライト(キャラクター)が5つ以上並ぶとチラつく」を覆しており、これも随分と話題になりました。

 しかし、こうした成果を全ての会社が残せたわけではありません。それはプログラマー個人の技術差だけでなく、開発会社が独自に用意するツールの完成度も大きな要因でした。

 ゲームを開発する際、プラットフォーマー(任天堂など)からプログラム命令が提供されます。ファミコンでプログラミングを体験できた『ファミリーベーシック』(1984、任天堂)でその雰囲気を感じられます。これはプログラミング言語「BASIC」に似た言語を使い、ファミコンの機能を利用してゲームなどを作ることができるというものでした。

 マリオなどのキャラクターを簡単な命令で呼び出せて、コントローラー操作もできました。いずれもパソコンには存在しない機能で、実現したければ全てゼロから用意しなければいけません。提供されるプログラム命令とは、こうしたゲーム機専用の機能を使うためのものです。

 しかし、実際はそれらの命令だけでゲームを作るのは大変でした。例えば「2×100」を計算するのに足し算しかできなかったらどうでしょう? 確かに結果は出せますがあまりに非効率で、かけ算命令が欲しいところです。この話はあくまでイメージですが、そういう痒(かゆ)いところに手が届かない問題がありました。絵や音の分野でも同じです。

 ただ前提として、そういう便利なものが必要なら自分で用意するものなので、開発会社は独自に仕様を研究し、専用の命令や開発ツールを作って使っていたのです。

■「技術の差」がさらに開いた、スーパーファミコンの時代

『ファイナルファンタジーVI』は、冒頭から映画のような演出と音楽でプレイヤーを魅了した

 とはいえ、研究のためには予算、時間、人員が必要です。小さな会社にはその余裕がなく、大手との間に技術格差が生まれてしまいました。ユーザーに会社の事情は関係ありませんから、「大手のゲームはスゴい→売れる→もっとスゴいゲームが出る」……という循環が生まれたのです。

 筆者の認識では、この差が大きく開いたのがスーパーファミコン(SFC)の時代で、トップに立っていたのはスクウェアです。SFC時代の中期、1994年に『ファイナルファンタジーVI』が発売されましたが、それを「超えた」とユーザーが感じるゲームの多くは、同じスクウェアのタイトルだったといっても過言ではありません。

 筆者はそうした時期に、ある開発会社でサウンドを担当していたので、特に「音」に注目していました。

 SFCの音は「サンプリング音源」といって、録音した楽器の音を使います。しかしそれはとてもデータ容量を使うのです。CDの音質で楽器の音を1秒間録音した場合のデータ容量は約176KB、たった1秒で『スーパーマリオブラザーズ』4本分以上です。バンドを表現するにも多くの楽器が必要なので、これではとても使えません。

 そこで音質を落として容量を小さくしますが、音は音質が劣化すると「こもる」のです。SFCゲームのBGMは楽器の音をリアルに感じられる反面、こもって聞こえるのはこのためです。この「音」を小容量・高音質にまとめる技術がスゴかったのが、スクウェアだったのです。

 また、ひとつの音をずっと鳴らし続けていると「オゥオゥオゥ……」とループ再生していることがわかるのですが、ループの瞬間をあまり感じさせず自然であることも驚きでした。当時はこれをサポートしてくれる市販のツールなどほとんどなく、ほぼ手動で頑張る必要がありました。そこで苦労し、結局満足のいく音を生み出せず不本意な結果に甘んじていた身としては、「スクウェアには優れた補助ツールがあることは間違いない」と感じており、羨ましい限りだったものです。

 なお、「手動で頑張る時代」とは、初代PlayStation時代も含まれます。そこに『ファイナルファンタジーVII』(1997年、スクウェア)が登場するのです。常にディスクアクセスをする都合でCDを音源として使えなかったであろう本作のBGMは、SFCとほぼ同様のサンプリング音源を使っています。機会があればぜひ当時のBGMを聴いてください。工夫の詰まり具合がおわかりになると思います。

(タシロハヤト)

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