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「スライム」は本来強かった? 最弱イメージを受え付けた「戦犯」ゲームたち

マグミクス / 2023年6月3日 21時25分

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■昔は強かったのに…コンピュータRPGで印象が様変わりした「スライム」

 ファンタジーRPGのモンスターといえば、強敵ならば「ドラゴン」、雑魚なら「ゴブリン(小鬼)」などが定番ですが、こと国内においては「スライム」を思い出す方も多いのではないでしょうか。

「スライム」の知名度を跳ね上げた立役者は、言わずも知れた『ドラゴンクエスト』シリーズ。冒険に旅立つ勇者が初めて出会うモンスターが、このスライムでした。もちろん最序盤で出会うため、その強さは知れたもの。レベル1の勇者でも勝てる、いわゆる最弱級のモンスターです。

 しかしスライムは元来、簡単に倒せる最弱モンスターとは全く異なります。そんな元々のイメージがすっかり薄れてしまったのは、『ドラクエ』の影響が少なくありません……が、『ドラクエ』以外でも、スライムを弱く描いたゲームがいくつも存在します。

「スライムは弱い」。そんな印象を広めたのは、どんなゲームだったのか。ファミコン初期を中心に、スライムの強さを繰り下げた容疑者候補のゲームを振り返ります。

●元々の「スライム」ってどんな敵なの?

 スライムの原点は小説に端を発し、「不定形で粘液状の不気味な生命体」といった存在でした。そのイメージを元に、会話形式で行うテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下、D&D)にて、モンスターとしての「スライム」が定着化します。

『D&D』は世界初のRPGと呼ばれており、コンピューターゲームを含めた「RPG」そのものの原点。つまりゲームにおけるスライムの原点も、この『D&D』と言えるでしょう。

『D&D』に登場するスライムはとても最弱とは呼べず、対策なしだと非常に厄介な相手。不定形なので剣やメイスなどの切断・打撃攻撃は有効ではなく、効果的なのは火や魔法といった一部の攻撃手段のみです。

「だったら、魔法使いがいれば楽勝では?」と思うかもしれませんが、魔法使いにとってもスライムは難敵。不定形なので、ダンジョンにある壁の隙間や天井に潜り込めるため、思わぬ角度からの不意打ちを可能とします。この不意打ちでスライムの体内に取り込まれると、満足に呼吸もできず、呪文すら唱えられません。

 ドラゴンのような最強格にいるモンスターでこそありませんが、できれば会いたくないモンスターとして独特の地位を築いていました。そんな、手ごわい相手だったはずのスライムも、さまざまなゲームの影響もあり、すっかり「駆け出し勇者ご用達の最弱級モンスター」になり果てています。

●「弱くて可愛いスライム」を印象付けた『ドラクエ』

 国内において、「スライム=弱い」を広めた最有力候補は、やはり『ドラクエ』でしょう。不定形で粘液状という性質自体が変わり、基本形は涙滴型(ただしバブルスライムなどは、原点のフォルムに近い)。しかも目や口も備えており、作品によっては会話による意思疎通も可能です。

『ドラクエ』シリーズに登場するスライムは種類が豊富で、中盤以降に登場する場合はそれなりの強さを秘めたものもいます。ですが、最初に出会うスライムはやはり弱く、そこで「最弱」のイメージをプレイヤーたちに植え付けました。

 可愛くユーモラスな姿を得た『ドラクエ』のスライムは、デザイン・キャラクター性ともに魅力的で、作品を重ねるごとに人気と知名度を高めていきます。その魅力の高さがゆえに、最弱という印象もまた広まってしまいました。

 初代『ドラクエ』が発売されたのは、1986年5月27日。人気シリーズだけにその影響力は大きく、「スライム=弱い」の印象を植え付けた最有力候補といっても過言ではありません。

■「スライム=弱い」を植え付けたのは、『ドラクエ』だけにあらず

『ドラクエ』に先駆け、最弱モンスターとしてスライムを描いた国産ゲーム『ドルアーガの塔』

●世界的に「弱いスライム」を広めた『ウィザードリィ』

 国内では『ドラクエ』の影響が大きいのですが、海外でスライムの弱さを(結果的に)広めた作品といえば、『ウィザードリィ』が代表的です。1作目の『ウィザードリィ』が発売されたのは1981年。初代『ドラクエ』よりも当然古く、コンピューターRPGの確立に寄与した金字塔的な作品です。

 デフォルメされた『ドラクエ』のスライムとは異なり、『ウィザードリィ』のスライムは原点に近い見た目を備えています。しかし、強さまでは受け継いでおらず、苦労せずに倒せる雑魚程度。『ドラクエ』よりも古い『ウィザードリィ』の段階で、スライムは弱化を辿(たど)っていました。

『ウィザードリィ』は日本にも上陸し、当時のPC向けに展開したほか、1987年12月にはファミコン版も登場。PC版は『ドラクエ』よりも先に「弱いスライム」を国内外中に広め、ファミコンソフトとしても比較的早い段階からファミコン少年たちにその印象を与えており、『ドラクエ』に並ぶ容疑者候補と言えるでしょう。

●『ドラクエ』よりも先に、スライムを弱く描いた『ドルアーガの塔』

『ウィザードリィ』の影響も侮れませんが、こと国内においては『ドラクエ』がスライムの弱さを広く知らしめました。ですが、『ドラクエ』よりも先に、弱いスライムを描いた国産ゲームが存在します。それは、『ドルアーガの塔』です。

『ドルアーガの塔』は、恋人を救うために60階建ての塔を登っていくアクションRPGで、1階ごとに1ステージの構成。そのステージをクリアすると次の階に移動します。そして、最初のステージとなる1階から、緑色のスライムが複数登場します。

 アクション要素が強いため、タイミングを間違えるとスライムにもあっさり殺されることも。とはいえ、相手が止まっている時に攻撃すれば、あっけないほど倒せます。若干の怖さこそあれ対処はしやすく、ゲーム内における最弱モンスターなのは間違いありません。

 本作を手がけたのは、『ゼビウス』など数多くの代表作を持つクリエイターの遠藤雅伸氏。『ドルアーガの塔』は、アーケード向けが1984年に、そしてファミコン版が1985年に登場しており、いずれも『ドラクエ』よりも前。そのため、日本における「スライムは弱い」の印象を最初に決定づけた戦犯だと、遠藤氏は自称しています。

 なお時期が近い同ジャンルでは、『ハイドライド』もスライムを弱く描いており、こちらも容疑者候補です。

●ジャンルを超え、新たな角度から「スライムの弱さ」を綴った『ぷよぷよ』

『ウィザードリィ』が世界的に「弱いスライム」を広め、同作品の影響を受けた『ドルアーガの塔』や『ドラクエ』もスライムを最弱級のモンスターとして扱ったことで、「スライム=弱い」の印象が強まっていきました。

 この時点ですでに最弱の地位を確立したと言えますが、「RPGを遊ばないけど、スライムの存在が知っているゲームファン」にもスライムの弱さを印象付けた作品として、『ぷよぷよ』の影響も個人的には外せないと考えています。

 RPGを中心とする『魔導物語』シリーズから派生した『ぷよぷよ』は、ジャンルを大きく変えて「落ちものパズル」として登場したゲームです。そのタイトルは、本作におけるスライム的なモンスター「ぷよぷよ」を指す言葉。作品名との混同を避けるため、「ぷよ」という通称で呼ばれることもあります。

 この「ぷよ」は、『ドラクエ』のスライムにやや近く、口こそありませんが目を持っており、身体全体も液状ではなくある程度の弾力を持つ軟体型です。原点である『魔導物語』シリーズにも登場し、そちらでの強さも推して知るべしといったところですが、『ぷよぷよ』ではその弱さがさらに加速します。

『ぷよぷよ』における「ぷよ」は、同じ色の「ぷよ」同士を4つ繋げるだけで、なんと跡形もなく消えてしまいます。「オワニモ」という呪文の効果で時空の狭間に消えているとのことですが、呪文をその都度唱えている様子はないので、一度唱えたら世界全体に影響する呪文なのかもしれません。

 その結果、特に攻撃する必要もなく、4つ繋がるだけで消えてしまう「ぷよ」。これほど手間なく倒せるモンスターは、他に類を見ないほどです。戦うことすらなく倒せるモンスター……スライム系モンスターの「弱さ」を新たな角度から描き、RPGファンだけでなくパズルユーザーにも広げた『ぷよぷよ』もまた、重要な容疑者です。

* * *

 元は手ごわかったのに、最弱級として印象付けられてしまった「スライム」。その落差は悲しむべき変遷かもしれません。しかし、その弱さが記憶に残り、今日まで長く愛される一因になった面も確かにあります。

 スライム自身が選んだ道ではないとはいえ、強さを失ったことが存在の確立に繋がったのであれば、キャラクターとしての「強さ」を手に入れたと考えることもできます。果たしてスライムは、強いのか弱いのか。あなたのご意見は、どちら寄りですか?

(臥待)

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