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ファミコンのバグ技「カセット斜め差し」はなぜ可能だった? 画面が化けてもゲームが動いたワケ

マグミクス / 2023年6月15日 21時10分

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■カセットを正しく差さないと異常が発生する理由

 かつて、ファミコンゲームを裏技的に遊ぶ方法のひとつとして「斜め差し」というものがありました。

「斜め差し」とは、ファミコンのゲームカセットをしっかり差し込まず、意図的に半端な状態(斜めなど)にしてバグ的な動作を引き起こす行為で、「半差し」「半抜き」などとも呼ばれます。

 これをすると、表示される絵が乱れてもゲームを遊べることがあるのですが、それだけでなく、いきなりエンディングが始まったり、存在しないステージが遊べるなど、ゲームによってさまざまな現象が発生したため、当時のゲームファンのなかにはそれを探して楽しむ人たちもいました。

 これはいったいどういう原理で起きるのでしょうか? それを知るには、ファミコンの構造を知る必要があります。

※本記事はファミコンで発生するバグなどの現象について構造面から解説するものであり、それを利用した遊びを推奨するものではありません。ゲームカセットの「斜め差し」を行うと、カセットやファミコン本体が破損する可能性があります。

 現代のゲーム機はほぼ全て、ゲームデータをメモリなどに一度読み込み、溜めてから処理します。任天堂のゲーム機の場合、この仕組みは1996年発売のNINTENDO64から採用されました。

 この方式の代表的な利点は、CD-ROMゲームで発揮されます。ROMと比較して読み込みが遅いため、最初にデータをまとめて読み込んでおくことでその欠点を補おうというわけです。当時ゲームをROMカセットで供給していたNINTENDO64がこの構造を採用したのは、「元々64はCD-ROMでゲームを供給する予定だったから」という噂が流れたことがあるぐらい、CD-ROMにとってメリットが大きいのです。

 他には、読み込んだデータをチェックして破損などの不正があった場合、もう一度読み込み直すことでバグを極力防止できるという利点もあります。

「斜め差し」を語る場合は、この後者に着目すると分かりやすいでしょう。実はファミコンは、ゲームカセットから読み込んだデータを直接処理する構造でした。ということは、ゲームデータが本体に送られる経路に問題があって、データが壊れていてもそのままです。

 ところが経路に問題があるかどうかは、私たちプレイヤーの手に委ねられていました。ゲームカセットをしっかり差し込まないと、端子の接触が悪くなり正しくデータが送られません。そのほか、扱いが雑だと端子に汚れが付くこともありますね。これらの要因によって、普通に使っていたつもりでも、ゲームが途中で止まったり絵が化けたりといったことが起きました。「斜め差し」はそれを意図的に行ったものというわけです。

 では次に、どうしてその状態でもゲームが動くのかを説明しましょう。

■ファミコン独特の構造が「バグ技」を可能に?

ゲームカセット内部の基板のイメージ(画像:写真AC)。ファミコンカセット内部の基板は、左にプログラムROM、右にキャラクターROMがあるのが基本だった

 ファミコンは、プログラムの処理とグラフィック(キャラクター)を処理する演算装置が独立した構造で(CPUとPPU)、アーケード基板の構造に似ていました。当時の他社製ゲーム機はCPUだけで全て処理するものが多く、任天堂がファミコン以前にアーケードゲームを開発していたことが影響していると思われます。

 ゲームカセットを分解すると、左右にROMがふたつ並んでいるのが基本です。向かって左にプログラムROM、右にキャラクターROMです。ファミコン本体では、CPUがプログラムROM、PPUがキャラクターROMの読み出し・処理を担当していたので、プログラムROMから正常に読み込めればゲームは原則動きます。「斜め差し」の基本は、この性質を利用し意図的にキャラクターROMからの読み込みに問題を起こすことです。そのため斜めに差すときは、右側を少し浮かせるのがコツということになります。

 当時は「ハックROM」と言って、一部の悪い業者がキャラクターROMの中身を書き換えたものを密かに売っていたようです。イメージ的に言えば「スーパーマリオブラザーズ」の全ての絵を、別のマンガやアニメの絵に書き換えてしまうようなものですが、そういうことができたのはこの独立構造のおかげでしょう。改造の難易度が低かったということですね。

 ただ、独立と言ってもプログラムを処理するCPUの動作は極めて複雑です。PPUの処理に一切影響しないということはありません。また、ゲームカセットから顔を覗かせている端子部分は、固くて曲がることはありません。それを斜めに差しているわけですから、キャラクターROMとの接触端子だけを上手く浮かせたつもりでも、プログラムROMの接触も悪くなっているということはあり得ます。「斜め差し」で単に絵が変わるだけでなく、ゲーム内容に影響が出てしまうゲームがあるのは、これらの理由によるものだと思われます。

 なお、スーパーファミコンも構造上はファミコンと似たようなものでしたが、斜め差し(接触不良)の対策が取られたため、ファミコンのような裏技的な現象は見られなくなりました。そして前述の通り、現代で同様の構造を持つゲーム機はほぼありません。ファミコンならではの懐かしい(しかし危険が伴う)遊びだったということですね。

(タシロハヤト)

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