時代の先を行きすぎた?「ジャンボーグ9」登場から半世紀 その存在が先駆的だった理由
マグミクス / 2023年7月18日 6時10分
■衝撃的なデビューを果たしたジャンボーグ9
本日7月18日は、1973年に『ジャンボーグA』第27話「ジャンボーグA-2号誕生! その名はJ-9」が放送された日。今年で半世紀となります。このエピソードから登場した新たなヒーロー「ジャンボーグ9」は、それまでにいなかった画期的な背景を持ったヒーローでした。
ジャンボーグ9が初登場する第27話は、同時にそれまでの主役ヒーローだったジャンボーグAが敵に敗れ去るという、衝撃的な展開から始まります。
このジャンボーグAを倒した強敵こそが「ジャンキラー」。それまでの怪獣タイプの敵ではなく、ジャンボーグと同じくスマートなロボット型のデザインでした。実はこのジャンキラーは、もともとAから9までの間に開発されたジャンボーグという設定でデザインされ、それを悪役として流用したと言われています。いわば兄弟の関係に近しい存在と言えるかもしれません。
その名前も「ジャンボーグ・キラー」の略称なのでしょう。そういう点からも他の敵怪獣と異なる因縁深い強敵、ライバル的な存在だったと言えるかもしれません。後にジャンキラーjr.という後継機も登場しています。作品中のゲスト怪獣で代表的な一体でしょう。
この強敵・ジャンキラーに敗れたジャンボーグAに代わって現れ、打ち破った新ヒーローがジャンボーグ9でした。普段はジャンカーZ(使用車はホンダZ)という軽自動車で、搭乗者の立花ナオキの「ジャン・ファイト・ツー・ダッシュ!」の掛け声でジャンボーグ9に変身します。
左右非対称に塗り分けられた紅白のボディは変身前のジャンカーから引き継いだもので、ジャンボーグ9の特徴的なデザインのひとつでした。ヒーローと言えば左右対称が基本でしたから、左右非対称のカラーリングのジャンボーグ9はそれだけでも他のヒーローより目立つ存在だったというわけです。
そしてジャンボーグAとの大きな違いに「操縦方法」がありました。コクピット内でナオキの動きをトレースするジャンボーグAと違い、ジャンボーグ9は自動車のようにハンドルで動かす形になっています。このハンドル操作で動かす方式は他番組を見てもそれほど多くなく、これもジャンボーグ9の個性のひとつになりました。
こうして二大ヒーローが活躍することになった本作ですが、Aと9のふたりのヒーローを並び立たせたことが特筆する点です。本来ならば後発のヒーローの方が強いとなるのが普通ですが、Aと9はそれぞれの個性を出すことで両雄を並び立たせました。
ジャンボーグAと違って空を飛ばない代わりにパワーが高いジャンボーグ9。互いの長所と短所を描き分けることで、番組は2大ヒーロー制を維持していきます。惜しむらくは搭乗者はナオキひとりということで、Aと9の共闘は描かれなかったことでしょうか? もっともエメラルド星人が搭乗して一度だけ夢の共闘は見られました。
■ジャンボーグ9が特筆される理由とは?
ジャンボーグ9が初登場する27話を収録し、ジャケットでジャンボーグ9が大きく描かれる、「ジャンボーグA VOL.6」DVD(東映)
このジャンボーグ9の特筆する点は、番組途中で全く新しいヒーローを登場させたことにあります。
たとえば番組途中で新ヒーローが登場するという点では『仮面ライダー』の仮面ライダー2号や、『突撃! ヒューマン!!』のヒューマン2号といった存在がありました。古くは『悪魔くん』のメフィスト(弟)を思い出す人もいるでしょう。
しかし、前述のキャラクターはマイナーチェンジといった形であり、Aと9のようにまったく異なるデザインというわけではありません。あえて言うならば仮面ライダーV3やキカイダー01がそうかもしれませんが、世界観がつながっていても別番組となっています。同じ番組内で新ヒーローを出したという点でジャンボーグ9は先駆的でした。
これが子供番組で定番化するのは1980年代になってからです。アニメでは奇しくもジャンボーグ9と同じくハンドル操作型の『戦闘メカ ザブングル』(1982年)、特撮では『超新星フラッシュマン』(1986年)以降でしょうか。これら中盤でのパワーアップは現在では既定路線。長期間放送する番組では必須となっています。
これらが定番化するようになったのはスポンサー側の商品展開の都合、いわゆるマーチャンダイジングによるものです。しかしながらジャンボーグ9の登場は、特にスポンサー側からの強烈な指示というわけではなかったようです。
この当時はまだスポンサー主導で新キャラクターを登場させるという風潮はあまりなく、その点からも製作サイドによる物語展開の一環として誕生したジャンボーグ9は異質な存在だと言えるかもしれません。
もっとも、注目は集めたものの、ジャンボーグ9の存在が「大成功」とならなかったことで後続の作品に大きな影響を与えることはありませんでした。そのため、いわゆる2号ロボの定番化は10年ほど先のこととなったのでしょう。あまりにも早すぎたアイデアだったのかもしれません。
ちなみに、劇場版『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(2010年)で、過去の円谷作品ヒーローが現代風にリファインされた時、ジャンボーグAはジャンボットという新ヒーローに生まれ変わりました。
この時、ジャンボーグ9はリファインされませんでしたが、後にオリジナルビデオ『ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』(2011年)のなかで、当初はジャンキラーと呼ばれていましたが、最後にジャンナインと改名した形で登場しています。このジャンナインは『ウルトラマンギンガ』(2013年)でも登場し、ライバルからセカンドヒーロー的な立ち位置で活躍しました。
『ジャンボーグA』本編の最終回で、ジャンボーグ9はジャンボーグAを倒した最後の敵であるデモンゴーネを見事に倒しています。そういった点ではタイトルのジャンボーグAでなく、新型であるジャンボーグ9が有終の美を飾ったのでした。
(加々美利治)
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