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ヒーローショー出身の『レッドタイガー』 特撮暗黒期を救った影のヒーロー

マグミクス / 2023年7月29日 7時10分

ヒーローショー出身の『レッドタイガー』 特撮暗黒期を救った影のヒーロー

■78年は冬の時代だった?

 ヒーローショーの聖地といえば、「東京ドームシティアトラクションズ」です。いつもTVで見ているヒーローが目の前で見られるので、子供たちは大興奮ですが、今から45年前の1978年、「後楽園ゆうえんち」(東京ドームシティの前身)から誕生したオリジナルヒーローが、TV番組化されるというパターンがあったことをご存じでしょうか。

 タイトルは『UFO大戦争 戦え! レッドタイガー』(東京12チャンネル 現・テレビ東京)です。1978年4月から12月まで、全39話が放送されています。マイナーなヒーローかもしれませんが、この作品の存在はかなり貴重でした。

 1978年は、アニメの「巨大ロボットブーム」が訪れ、特撮ヒーローが下火の「暗黒期」でした。ウルトラマンも仮面ライダーもシリーズが途切れ、戦隊の『ジャッカー電撃隊』の放送も予定より早く(77年12月)終了したため、空白期間ができていたのです。

 そんな状況で困ったのは、「後楽園ゆうえんち」です。TVで人気のヒーローを使うショーが難しくなりました。ただ、後楽園側では77年にオリジナルヒーローを誕生させて、ショーも行っていたのです。それが『レッドタイガー』(原作「大野剣友会」大野幸太郎氏)です。

 オリジナルヒーローならばどんな事態があってもショーは続けられる上に、またTVヒーローのショーは権利の関係で売上げを原作や放送局側と折半していましたが、それも軽減されるなどのメリットもありました。特撮は冬の時代でしたが、ショーの存続を賭けて「レッドタイガー」をTV化させ、メジャーヒーローにしようと考えたわけです。

 製作は「バロン」シリーズなどを手がけた、「創英舎」がメインとなり、企画はスタートします。タイトルの「UFO大戦争!」は、当時の映画『スターウォーズ』、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』などの宇宙ブームに便乗したものと思われます。

■低予算でもスタッフは頑張った

後楽園のヒーローショーの歴史をまとめた「東京ドームシティアトラクションズ スーパーヒーローショーヒストリー」 (カゼット出版)

『レッドタイガー』のスタッフは敏腕ぞろいです。なんといってもレッドタイガーのスーツアクターが、仮面ライダーシリーズのメインを努めた中屋敷鉄也さんだったため、TV映えしました。しかも、レッドタイガーの声は特撮での仕事が初めてという古谷徹さん(※途中降板)です。脚本にはウルトラシリーズや数々の特撮、ドラマも執筆している大御所、長坂秀佳、上原正三の両先生をメインに据えていました。さらに、OP・EDソングはささきいさおさんが歌っています。

 あらすじは……「日本防衛研究所の天野博士が建造した巨大ロボット要塞・ランボルジャイアント。このロボットを奪おうと襲いかかるブラックデンジャー魔王率いるUFO軍団との戦い。天野博士の3人の子供たちがピンチに陥ると、謎のヒーロー・レッドタイガーが出現し敵を倒す。彼らを助けてくれるヒーロー・レッドタイガーとは何者なのか?……」というものです。

 内容もなかなか凝っていました。天野兄弟&レッドタイガーとUFO軍団の戦いに加え、「消えた天野兄弟の母親捜索」とランボルジャイアントの完成までの「謎解き」が作品全体のポイントでした。

 天野3兄弟がピンチになり、「レッドタイガー!」と叫ぶとヒーローが登場します。「弱き者、正しき者の味方! レッドタイガー!」という決めゼリフもハマっていました。ヒーローは主役が変身するのが普通ですが、レッドタイガーは正体が誰なのか分からないままストーリーが進行します。

 最終的には、レッドタイガーは15年前にバーン星人に連れ去られた天野兄弟の長男・銀河ということが判明しますが、銀河の素顔は最後まで明かされません。レッドタイガーは、最初は白のコスチュームですが、怒りが頂点に達すると「レッド変身スパーク!」と叫び赤コスチュームに変わるという、2段階の演出も見どころでした。電磁ムチで戦闘員を打ち「タ」「イ」「ガ」「ー」の人文字にする必殺技「タイガー人文字殺法」のほか、あっちむいてホイで敵を倒す「あっちむいてホイ殺法」もなかなかユニークです。

 ただ、番組はかなりの低予算だったため、チープさが出てしまった部分もありました。レッドタイガーのマスクはアメフトのヘルメットにゴーグルを付けたようなデザインで、口元、アゴは出ているライダーマンのような姿です。

 また「巨大ロボット要塞・ランボルジャイアント」は全高100m、5万tの設定ですが、二の腕部分が細く、二足歩行ではなく車輪で移動するなど、正直重厚感に欠けるおもちゃのようで、壊される街のセットなども低予算であることが伝わりました。しかし、厳しい状況ながら、特にアクションシーンはカメラワークも含めてダイナミックで、スタッフが愛情を込め丁寧に作り込んでいたことが伝わってきます。

 番組は3か月ごとに放送時間が変わるという異例の形式(土曜18時から30分、火曜19時30分から30分、木曜19時30分から30分)で9か月間も続き、1978年12月28日に39話で終了します。実は、戦隊シリーズの復活が決まっていたため、「お役御免」だったようです。

 東京12チャンネルはネット局が少なく、さらに再放送も少ない上に、DVD化もされていないため、同番組を見た人は貴重かもしれません。子供向け雑誌に情報が掲載されていましたが、「番組は見たことがない」という人もたくさんいました。しかし、特撮暗黒期をつないだ『UFO大戦争 戦え! レッドタイガー』の功績は高かったと思われ、特撮ファンのあいだでは「幻のヒーロー」とも言われているそうです。

 そして、放送終了後の1979年正月の「後楽園ゆうえんち」では、複数のヒーローがコラボ出演する「スーパーヒーロー大集合」の始まりとなる「せいぞろい 帰ってきたスーパーヒーロー」が行われます。『秘密戦隊ゴレンジャー』『仮面ライダーストロンガー』といったメジャー作品が並ぶなか、メインは「レッドタイガー」でした。なんとも胸が熱くなるエピソードです。

(石原久稔)

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