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「聞いたよ」の声がなぜ続出? 映画で使われなかった安田成美「風の谷のナウシカ」の真相

マグミクス / 2023年8月3日 7時10分

「聞いたよ」の声がなぜ続出? 映画で使われなかった安田成美「風の谷のナウシカ」の真相

■「媚態丸出しの軟弱な詞」がファンに大不評?

 流麗でドラマティックなイントロ、荘厳さと明朗さを兼ね備えたメロディーライン、そして凛とした少女が内に秘めた不安定な心を表現したような可憐で揺れる歌声……。

 映画『風の谷のナウシカ』のシンボル・テーマソング、安田成美さんが歌った「風の谷のナウシカ」は、ある世代にとってとても印象深い曲だと思います。

 松本隆作詞、細野晴臣作曲、萩田光雄編曲という、当時のヒットチャートの世界における最強の布陣をそろえて制作された「風の谷のナウシカ」ですが、多くの方がご存知のとおり、映画本編には使用されませんでした。

 この曲の使用に反対したのは、宮崎駿監督とプロデューサーを務めていた高畑勲さんです。特に、音楽に造詣の深い高畑さんが強く反対しました。『宮崎駿全書』(叶精二・著/フィルムアート社)には次のように記されています。

「この主題歌は『青空から舞い降りたら やさしく抱きしめて』といった媚態丸出しの軟弱な詞、『風の谷の~ナウ~シカ~』と連呼するメロディなどが、原作の壮大なイメージを損ねるとしてファンには不評であった。宮崎・高畑もこの曲に拒否反応を示したが、進行中のキャンペーンとの兼ね合いもあり、今更主題歌変更はあり得なかった。しかし、高畑は強硬に反対を貫き、ついに主題歌を劇中で使用しない方針を認めさせるに至る」

 その後、紆余曲折あってエンディングには久石譲さんが作曲した「風の伝説」が流れることになりました。公開時はもちろん、ビデオ・DVDなどのソフト、テレビ放送など、すべてそうなっています。

 ところが2023年5月、当時の観客が『風の谷のナウシカ』上映時の思い出をTwitterに投稿したところ、大きな反響を呼ぶことになります。「劇場公開時、使われなかったと言われていますが、私は妹と劇場で観たんですが、エンディングで安田成美の歌を聴いたと思うんですよね」という内容でした。

 書き込みに対して、「シンボル・テーマソングなので劇中では使われていません」という説明や、映画館の幕間やロビーでは流れていたもののエンディングでは流れていなかったというリプライが大量に寄せられる一方、「私は上野で観ましたが、安田成美流れましたよ」「公開当時渋谷で観ましたが流れていました」「北九州でしたが聴いた記憶があります」などの声も続々とあがっています。

 安田成美さんの「風の谷のナウシカ」がエンディングに入っているバージョンもあって、差し替えが間に合わずにそのまま上映されたという説もあれば、自主的にエンディングに安田成美さんの曲を流していた映画館があったのではないかという推察もあります。はたしてそんなことは可能なのでしょうか?

■スタジオジブリの公式回答は?

「STUDIO GHIBLI 7inch BOX」(徳間ジャパン)に収められた「風の谷のナウシカ」ジャケット

 知人の映画館関係者に話を聞いたところ、「当時のアニメ作品は公開ギリギリまで手直ししていたので、遠方の劇場には0号、初号、関係者試写用のプリントが配送された劇場があったかもしれない」のだそうです(0号とは、関係者がチェックを行うための試写のこと)。また、劇場に安田成美の曲のテープが宣伝用に送られていれば、映写室から独自にエンディングにあわせて曲を流すことも技術的には簡単だということでした。

 0号試写で安田成美さんの曲がエンディングで流れたバージョンを観た宮崎監督や高畑プロデューサーが激昂して差し替えを要求、しかし差し替えが間に合わなかったプリントが地方などの映画館で上映された……という説明なら、成り立つかもしれません。

 しかし、実際には宮崎監督が自ら作詞、久石譲さんが作曲したオリジナル主題歌の制作が試みられています。ちょうど来日中だったスーダンの弾き語りミュージシャン、ハムザ・エル・ディーンに歌唱してもらう予定でしたが、何度やってもうまくいかずに時間切れとなり、現在の「風の伝説」バージョンになったといういきさつがあります。ギリギリのスケジュールとはいえ、それでもオリジナル主題歌の制作ができるぐらいの早い段階で宮崎・高畑コンビは「NO」と言っていたわけなので、「0号試写で~」という説明は成り立ちません。

 ハフポスト日本版がスタジオジブリに問い合わせたところ、「(安田成美さんの曲は)映画本編では流れなかったということでいいでしょうか?」という質問に対して「はい」という回答が寄せられました。これが公式回答ということになります。

 ただし、地方の映画館主が独自の判断でエンディングに安田成美さんの曲を流したという可能性がゼロとも言い切れません。今なら到底あり得ませんが、当時は映画館も多く、勝手なことをする館主(あるいはバイト)がいたという可能性もなくはないのです。

 公式は否定しましたが、安田成美さんの「風の谷のナウシカ」がエンディングで流れたのを観た全員が記憶違いをしているのか、それとも本当に流れた映画館があったのかは、永遠の謎だと言えるでしょう。

 ただひとつだけ確かなのは、安田成美さんが歌う「風の谷のナウシカ」は当時のアニメファンには不評だったかもしれませんが、『風の谷のナウシカ』が公開されて約40年経った今でも聴かれ続けている、素敵な曲だということです。

(大山くまお)

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