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『千と千尋』のカオナシは「大出世」キャラ? 宣伝でも出ずっぱりだった理由

マグミクス / 2023年8月5日 7時10分

『千と千尋』のカオナシは「大出世」キャラ? 宣伝でも出ずっぱりだった理由

■『千と千尋の神隠し』に登場するカオナシは、影の主人公?

 2001年に公開されたスタジオジブリのアニメ映画『千と千尋の神隠し』には、印象的なキャラクター「カオナシ」が登場します。物語の中盤以降、重要なキャラとして存在感を放つカオナシは、宮崎駿監督や鈴木敏夫プロデューサーにとっても、非常に重要な存在だったそうです。カオナシに込められた制作側の想いとは、一体どんなものだったのでしょうか。

 2001年7月1日に発売された『千尋と不思議の町 千と千尋の神隠し 徹底攻略ガイド』では、宮崎監督がカオナシというキャラクターの誕生秘話について語っています。同書によれば、カオナシは当初、単なる脇役として『千と千尋』の舞台である「油屋」に訪れた神々の脇で、橋のそばに立っているだけのキャラクターだったとのことです。

 ところが、その絵が映像として完成してみると、宮崎監督のなかで「妙に気になるヤツ」に変化しました。カオナシのことが気になってきた宮崎監督は「アイツはなんであそこに立っているんだろう」と、カオナシのキャラクターについて深堀りを始めたのです。

 鈴木プロデューサーもまた、突如現れたカオナシについて、著書『ジブリの仲間たち』で、「人間の心の底にある闇、心理学でいうところの『無意識』を象徴している」と語っています。

 ちなみに物語の中盤以降では、無意識を象徴しているはずのカオナシが、あらゆる欲望を飲み込みながら暴走する、という展開が描かれました。そんなカオナシを主人公である千尋が鎮め、千尋の名前を奪った湯婆婆の双子の姉・銭婆に会いに行く……という、物語のなかでも重要な場面へと繋がっていきます。最初は、ただ立っているだけの脇役の予定だったカオナシが、主人公・千尋をとりまく物語に大きく関係するキャラクターへと変貌をとげたのです。

 宮崎監督は『千と千尋の神隠し』のフィルムを全部通して見た際に「これはカオナシの映画だ」と言うほどお気に入りのキャラクターとなり、鈴木プロデューサーもそれに対し「当たり前じゃないですか」と答えたそうです(『千と千尋の神隠し―Spirited away(ロマンアルバム)』より)。

 ただ、いくらカオナシが重要とはいえ、主人公は普通の女の子・千尋で、もちろん彼女も重要な存在でした。映画『千と千尋の神隠し』企画書の宮崎監督の言葉によれば、同作のテーマは「今日、あいまいになってしまった世の中というもの、あいまいなくせに浸食し喰い尽そうとする世の中を、ファンタジーの形を借りて、くっきりと描き出すこと」だそうです。

 宮崎監督はこのような「世界の縮図」としての役割を、物語の舞台である「油屋」に担わせました。そして、神々をもてなす世界で「主人公の資格」を持つ者として、千尋というキャラクターを任命したのです。企画書には、千尋という「主人公」についてこのように記されています。

「千尋が主人公である資格は、実は喰い尽くされない力にあるといえる。決して、美少女であったり、類まれな心の持ち主だから主人公になるのではない」

「人間の心の底にある闇」を象徴する「喰い尽くす者」であるカオナシと、「喰い尽くされない者」である主人公・千尋の関係性は、千尋とカオナシのシーンだけをつないだ予告編でも表現されました。鈴木プロデューサーはその後も、カオナシをメインに据えた宣伝方針を打ち出し、新聞広告などにもカオナシを何度も起用したのです。ちなみに、千尋と心を通わせる、物語のヒーロー的存在のハクについては「恋愛映画ではないから」という方針で、予告や広告には登場しませんでした。

 カオナシはスタジオジブリ作品のなかでも、特に印象的なキャラクターで、モノマネやコスプレをしたことがある人も多いのではないでしょうか。このような誕生秘話があったことを知ってから『千と千尋の神隠し』を観ると、さらに楽しめるかもしれません。

(LUIS FIELD)

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