死亡フラグじゃなかったん？ 「俺に任せて先に行け」と言って生存したキャラ

■死亡フラグは毎回回収されるわけではない

　マンガやアニメで、緊迫した状況での「ここは俺に任せてお前は先に行け」というのは、いろんな「死亡フラグ」のなかでも代表的なセリフです。しかし、死亡フラグを立てておきながら、ちゃっかり生存するキャラもいます。

　タイトルにこのセリフが入っている作品では、ライトノベル、コミカライズ版も人気の『ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。』（原作：えぞぎんぎつね）があります。魔導士・ラックが戦士・ゴラン、勇者・エリックとパーティーを組んで、次元の狭間で魔神王と戦っていました。戦い切った彼らが家族のところへ帰ろうと話していると、魔神の大軍がやってきます。3人とも疲れ果てていましたが、仲間のことを想ったラックが「ここは俺に任せて先に行け！！」と言って残りのふたりを逃がすのです。

　ラックは魔神王やその軍勢と戦い続け、ついに決着を付けます。戦い終えたラックが次元の狭間から王都へ戻ってくると、なんと10年が経っていて、伝説の勇者として語り継がれていて……というところから新たな話が始まるストーリーです。ラックのようなレベルで戦い続けるのは珍しいですが、「ここは俺に任せて先に行け」と言って、普通に生還してきた人気キャラはたびたび話題になります。

　アニメシリーズも大好評の『鬼滅の刃』の鬼殺隊の一員・村田は、「那田蜘蛛山編」にて「ここは俺に任せて君も先に行け！」と言いました。主人公の炭治郎や伊之助たちが、先遺隊で山にいた村田のところに応援部隊として到着した際、敵の蜘蛛糸で操られる隊員との交戦で、村田は糸を切れば操りを解除できると考えます。そして、操られている4人の相手を引き受けて、炭治郎と伊之助を先に行かせたのです。

　死亡フラグのセリフを吐いただけでなく、状況的にもかなり危なかった村田でしたが、結果的に軽症で生き残っています。アニメ放送時、「村田さん、そんな強くない上に死亡フラグ立てたのに、生きてるなんてかなりの強運なのか」「村田さん、なんだかんだいつも生きてるから地味に最強なのでは」とのコメントもありました。

　一方、シンプルな実力の高さで、普通なら死亡フラグに思えるセリフを言っても、「あんまり心配しなかった」「めちゃくちゃ勝つ未来しか見えなかった」とも言われるのが、『るろうに剣心』の斎藤一です。それは「京都編」にて、志々雄真実一派のアジトで十本刀・魚沼宇水と戦う前のことでした。剣心に「ここは俺が相手する。お前はさっさと先へゆけ」と言った斎藤は、余裕の笑みを浮かべて戦いに入ります。

　宇水は、志々雄に目を斬られ、盲目になってから目覚めた異常な聴覚によって、人間の身体から鳴る音で相手の心理状態や動きを読み取れる「心眼」を取得していました。新撰組屈指の剣の使い手と言われた斎藤でも苦戦してもおかしくない強敵でしたが、斎藤は足に傷を負うも近距離に特化した奥義「牙突零式」で宇水を突き刺し、胴体を真っぷたつにして勝利します。

　斎藤はただ勝っただけでなく、「隙あらば志々雄を殺しても良い」という条件で志々雄の配下に入っていた宇水が、実際は志々雄のあまりの強さゆえに「復讐を諦めている」ことを見抜いて指摘し、彼を激怒させていました。さらに、勝利後も「己の信念を貫けなかった男など　死んでも生きてても惨めなものだ」と容赦ない言葉を浴びせています。この一戦は、ネット上で「死亡フラグセリフから始まったのに、精神的にも完全勝利とはすごい」「相手の死の間際にも全く優しい言葉もかけない非情さがかっこいい」と、人気を集めていました。

　また、1996年に放送されていた『機動新世紀ガンダムX』では、宇宙革命軍の大佐ランスロー・ダーウェルが、物語終盤で「ここは我々が食い止める」と言いました。新地球連邦軍と宇宙革命軍の戦闘が激化するなか、ランスローは、「ここは我々が食い止める」と言って、主人公・ガロードとティファを月面のD.O.M.Eへ行かせています。

　死亡フラグとも取れるセリフでしたが、ランスローは生存して戦争終結後に宇宙革命軍の代表として、新地球連邦軍との停戦協定を結びました。ネット上では「ガロードとティファに未来を託す場面のランスローがかっこいい」「死亡フラグ立てたけど、生き残って停戦協定を結んだランスローすごい」などと称賛の声があがっています。

（LUIS FIELD）