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80年代ラグビー漫画『ウォー・クライ』は、日本vsオールブラックスの激闘を予言?

マグミクス / 2019年10月15日 19時40分

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■ドラマ『スクール・ウォーズ』よりも早かった連載マンガ

 2019年9月20日(金)から開催されているラグビーW杯2019日本大会では、日本代表チームが強豪アイルランドやスコットランドを撃破し、日本ラグビー史上初となるW杯決勝トーナメント進出を決めました。

 これまで国際ラグビーでは「ティア1」と呼ばれるラグビーの伝統国(ウェールズ、イングランド、アイルランド、スコットランド、フランス、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカなど)が圧倒的な強さを誇ってきたのですが、日本はアジア勢として初めてその“順列”を打ち破り、念願のW杯ベスト8入りを果たしました。優勝候補の一角・南アフリカを相手にした準々決勝(10月20日開催予定)で、日本代表がどんな闘いを見せてくれるのか楽しみです。

 ラグビーを題材にした作品といえば、伏見工業高校をモデルにした『スクール・ウォーズ 泣き虫先生の7年戦争』(TBS系)や、池井戸潤の企業小説を原作にした『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)などのTVドラマが有名ですが、『スクール・ウォーズ』が放映された1984〜85年よりもひと足先に、ラグビーという競技のワイルドな魅力に迫った人気マンガがありました。1980〜81年に「少年ビッグコミック」(小学館)で連載された、竜崎遼児氏による『ウォー・クライ』です。

“ウォー・クライ”とは、ラグビーの試合前にチーム全員で行う鬨(とき)の声と踊りで、世界最強と目されるニュージーランド代表が試合前に士気を鼓舞するために行う「ハカ」が広く知られています。国家代表に選ばれた屈強な男たちが分厚い手を叩き、丸太のような足を踏み鳴らす様子は、選手だけでなく試合を観戦している人たちの心も熱くたぎらせるものがあります。走る格闘技ともいえるラグビーの面白さ、熱さ、危険性を、マンガ『ウォー・クライ』は余すことなく描いています。

 物語の舞台となるのは、都内に新設された扶桑高校ラグビー部です。この高校の蓬萊校長は、かつてはラグビー日本代表の監督を務めたこともある人物です。全国から不良中学生たち15人をスカウトし、ラグビー部を創設したばかりでした。

 エネルギーを持て余している15人は、手の施しようもない悪童ばかり。そんなラグビー部の監督に就任したのは女性教師の冴木麗緒(さえき・れお)です。あらゆるスポーツに精通している冴木は格闘技にも優れ、部員たちから「アマゾネス」と恐れられることになります。そのアマゾネスの指導のもと、意外性に満ちたチームとの練習試合が次々と組まれることになるのです。

■落ちこぼれラガーマンたちが編み出した必殺技

2019年9月20日から始まった「ラグビーワールドカップ2019日本大会」は、動画配信サイト「Hulu」でもリアルタイム配信されている(画像:HJホールディングス) (C)楕円銀河

 扶桑高校の初めての練習試合の相手となるのは、全国大会の常連校である堂園高校でした。熱血漢のスタンドオフ・叶闘志也を主将に選んだ扶桑高校は得意のラフプレーで堂園高校に立ち向かいますが、堂園高校の熟練された組織プレーにはまるで歯が立たず、200点近い大差で破れます。「ラグビーは紳士がやるもっとも野蛮なスポーツといわれているが、けっして野蛮人のやるスポーツではない」と堂園高校からは酷評されてしまいます。

 それまで負け犬人生を甘んじて受け入れてきた叶たちでしたが、屈辱的大敗を喫したことから怒りのはけ口をラグビーの練習に向けるようになっていきます。

 その後もニュージーランド高校選抜、オリンピック級のスーパーアスリートたちを集めた女性チーム、扶桑高校以上のワルがそろった少年院チームといった超個性的な強敵との練習試合が続きます。高体連からの正式な認可が降りず、公式戦はなかなか組まれない扶桑高校ですが、練習試合とはいえ真剣なプレーの応酬の中で、小柄だけど俊敏な快速ウィングのネコ、「ハゲ」と呼ばれると怒りのパワーを発揮する巨漢ロックのクマなど、扶桑高校の15人はそれぞれの個性を大いに発揮していくようになります。

 圧巻なのは堂園高校とのリターンマッチです。その後も東京都大会で優勝を遂げ、強さに磨きをかけた堂園高校に、扶桑高校は必殺技「アマゾネス」で逆襲を挑みます。監督のあだ名を付けたこの必殺技は、FWもバックスも合わせた15人全員がひと塊となって攻撃し、トライを狙いにいくというものです。

 死人が出る恐れもあるほどの突破力と破壊力があるのですが、相手にボールを奪われると逆にいっきにトライを決められてしまう両刃の剣のような戦法です。落ちこぼれラガーマンたちの意地と負けん気が、共に流した汗と涙によってバインドされ、ひとつの巨大な肉塊となり、エリート校のゴールラインへとなだれ込むのでした。

■“世界最強”オールブラックスとの対戦なるか?

 最終話も印象深いものとなっています。時は流れ、場所は満席状態で熱気あふれる東京・国立競技場。世界最強チームである「オールブラックス」ことニュージーランド代表を日本代表が迎え撃つ国際試合が、マンガ『ウォー・クライ』のフィナーレを飾ります。日本代表のスタンドオフには、扶桑高校卒業後も大学、社会人とラグビーを続けた叶が選ばれています。叶のほかにもネコやクマといった扶桑高校出身者や扶桑高校と熱戦を繰り広げてきたライバルたちが桜のジャージをまとって闘います。

 オールブラックスを相手に大善戦した日本代表は、試合終了間際にネコがトライを挙げて1点差にまで詰め寄ります。最後にゴールキックを決めれば、オールブラックスから歴史的勝利を得ることになります。そして、その運命のキックを任されたのが叶でした。長年のラグビーファン、テレビで観戦するビギナーファン、怪我でラグビーができなくなった扶桑高校時代の後輩らが見守るなか、叶が蹴った楕円球が大空に吸い込まれるところで物語は終わりを告げるのです。読む人に結果を委ねる、とても余韻の残るエンディングです。

「ワンチーム」を標語に掲げ、日本代表がチーム一丸となってエンドレスで走り抜く姿は、扶桑高校の闘いぶりを彷彿させるものがあります。2015年に開催された前回のワールドカップで南アフリカを相手に奇跡の逆転勝利をつかんだ日本代表が、再び南アフリカを下すことになれば、オールブラックスと決勝で対戦する可能性も大きくなります。1980年代に『ウォー・クライ』が予言した日本代表とオールブラックスとの激闘が、今回のワールドカップで実現することになるのでしょうか。『ウォー・クライ』を読み返しながら、歴史的瞬間が訪れる日を心待ちにしたいと思います。

(長野辰次)

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