1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. アニメ・コミック

「凍る」「炎」「嘘つき」……『フリーレン』の本質は翻訳すると見えてくる?

マグミクス / 2024年3月22日 21時50分

写真

■ドイツはファンタジーと縁の深い土地

『葬送のフリーレン』に登場する人名や用語などには、主にドイツ語が用いられています(一部ではフランス語なども使われています)。ドイツがファンタジーと縁深い土地であることが大きな理由でしょう。

 ドイツにはエルフやドワーフが登場する民間伝承がたくさんあり、ドワーフが登場する叙事詩『ニーベルンゲンの歌』が多くの人に親しまれています。『モモ』や『はてしない物語』のミヒャエル・エンデもドイツの人です。

『葬送のフリーレン』ではドイツで使われる名前を用いているのではなく、ドイツで使われる言葉を名前にしているのも特徴的で、登場人物にその言葉の意味が込められていると考えられます。ここでは主に物語の前半に登場した主要人物の名前をご紹介しましょう。

●フリーレンと旅をする仲間たち

 主人公のフリーレン(frieren)はドイツ語で「凍る」を意味します。1000年以上生き続けたため諦念が強く、ほかの人間に対して興味を持たなかったフリーレンの冷たさを表しているようです。しかし、フリーレンはともに冒険の旅をしたヒンメルの人となりを知ろうとしなかったことを深く悔い、新たな旅を始めることになります。『葬送のフリーレン』は凍てついていたフリーレンの心が解けていく過程を描く物語だといえるでしょう。

 フリーレンの弟子、魔法使いのフェルン(fern)はドイツ語で「遠い」です。フェルンは旅の始まりの頃、フリーレンは自分に興味がないのではないかと思い悩んでいました。また、フェルンはフリーレンのヒンメルやハイター、アイゼンへの思いが育まれていく様子を離れた場所から見守っています。「遠い」は、フェルンとフリーレンの心の距離、フェルンのフリーレンへの視点の場所を示しているのではないでしょうか。その後、フェルンとフリーレンの心の距離は、旅を重ねるごとに縮まっていきます。

 戦士のシュタルク(stark)は「強い」という意味です。彼は非常に臆病で自己肯定感が低い若者ですが、実際は高い戦闘能力を持っています。実力は師であるアイゼンやフリーレンにも認められていますが、まだ強くなっていく過程にあるようです。

 僧侶のザイン(Sein)は「存在・生存」です。少年時代から冒険者に憧れていたものの、冒険者になることができなかったザインは、10年前に旅立ったまま消息を絶った親友が生存しているかどうかを知るためにフリーレンと旅立ちました。親友の消息とともに、自分の存在を探しているようにも見えます。

■フリーレンの旅の目的である「天国」とは

画像はTVアニメ『葬送のフリーレン』PVカット (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

●かつての勇者一行メンバーと魔族たち

 勇者パーティーとして、フリーレンとともに魔王を討伐した勇者のヒンメル(Himmel)は「空・天国」という意味です。ヒンメルは既に亡くなっており、「空」あるいは「天国」にいるものと考えられます。フリーレンの旅の目的地は「天国」とも呼ばれる「オレオール(魂の眠る地)」であり、目的はヒンメルと対話することです。ヒンメルと旅した10年は、1000年以上生きるフリーレンにとってとても短く感じられるものでしたが、その後の人生に大きく影響を与えました。

 勇者パーティーの僧侶であるハイター(heiter)は「朗らかな」です。晩年は戦災孤児だったフェルンを育て、フリーレンに託します。酒を愛し、フリーレンらに「生臭坊主」と言われても、いつも穏やかな笑みをたたえている人物でした。「朗らかな」という表現はハイターによく似合っています。

 勇者パーティーの戦士でドワーフ族のアイゼン(Eisen)は「鉄」という意味です。どんな高さから落下しても無傷で済むぐらい頑強なアイゼンにふさわしい名前だと思います。

 もう少し見ていきましょう。ヒンメル一行に封印された魔族のクヴァール(Qual)は「苦痛」を意味します。ゾルトラーク(人を殺す魔法)を開発し、悪逆の限りを尽くしました。人びとに苦痛を与えた魔族らしい名前です。

 フリーレンの師匠にあたる人間の大魔法使いのフランメ(Flamme)は「炎・激情」です。彼女の情熱的な性格を示しているとともに、「凍る」を意味するフリーレンと対極の存在であることが示唆されています。

 魔王直属の「七崩賢」のひとりである魔族で、「断頭台のアウラ」の異名を持つアウラ(Aura)は、「オーラ」です。オーラは「霊的なエネルギー」と訳されることもあります。「服従の天秤」に自分と相手の魔力を乗せて、魔力が少ないほうを服従させるアウラにふさわしい名前です。

 アウラの配下で「首切り役人」の筆頭格である魔族のリュグナー(L?gner)は「嘘つき」を意味します。人間との和睦を装って、街の防護結界を解除させようとした策士をストレートに表現していました。このようなネガティブな意味合いの名前を持っても平然としているあたりが魔族らしさともいえそうです。

 同じくアウラの配下で「首切り役人」のひとりである魔族のリーニエ(Linie)は「線・輪郭」です。人間の魔力の流れを覚えて、動きや技を模倣するのが得意なリーニエですが、本質がともなっていませんでした。輪郭のみをなぞっているから、このような名前がついたのかもしれません。同じく魔族のドラート(Draht)は「針金・ワイヤ」を意味します。「魔力の糸」を使うので、この名前がついたのだと考えられます。

 ほかの登場人物の名前も、このようにドイツ語と照らし合わせて見ていくと、それぞれの性格や位置づけを理解する一助になるかもしれません。なお、意味を優先したネーミングになっているため、ドイツの人から見ると少し変な名前になっているそうです。

(大山くまお)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください