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壮大なSFアニメ『地球へ…』BS12で放映 原作者・竹宮惠子ら「花の24年組」が巻き起こした新しい風

マグミクス / 2024年3月23日 20時10分

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■星雲賞を受賞した本格的なSF作品

 みなさんは「花の24年組」という言葉をご存知でしょうか。1949年(昭和24年)ごろに生まれ、1970年代のマンガ界に革新をもたらした女性漫画家たちの総称です。

 竹宮惠子さん、萩尾望都さん、山田ミネコさん、樹村みのりさん……と、多彩な顔ぶれがそろっています。生年は多少前後しますが、山岸涼子さん、青池保子さん、大島弓子さん、坂田靖子さん、木原敏江さんらも「24年組」と呼ばれています。

 少女マンガのみならず、「24年組」は次第に新ジャンルを開拓するようになります。そのトップランナー的存在だったのが、元祖BLマンガ『風と木の詩』を世に送り出した竹宮惠子さんです。竹宮さんのもうひとつの代表作『地球(テラ)へ…』は、1977年から1980年に「月刊マンガ少年」に連載され、優れたSF作品に与えられる「星雲賞」コミック部門を受賞。1980年に劇場アニメ化されています。

 2024年3月24日(日)のBS12では、19時からの「日曜アニメ劇場」にて劇場アニメ『地球へ…』が放映されます。『地球へ…』の注目ポイントとあわせて、「花の24年組」の軌跡を振り返ります。

■薬師丸ひろ子さんら人気俳優を声優に起用

ジョミーはソルジャー・ブルーの遺志を継ぎ、ミュウのリーダーとなって地球を目指すことになる。映画『地球へ…』より (C)竹宮惠子/東映アニメーション

 遠い未来、人類は地球から離れた植民惑星で暮らすようになっていました。生活はすべてスーパーコンピュータで管理されており、システムに反抗的な考えや感情を持った者は直ちに洗脳されるか、排除される社会となっています。

 14歳の誕生日を迎えたジョミー・マーキス・シンは、今の生活に疑問を感じつつも「適正審査」を受けることになります。そんなとき、超能力を持つソルジャー・ブルーからのテレパシーをキャッチします。

 ソルジャー・ブルーによると、超能力を持つ新人類は「ミュウ」と呼ばれ、人類から迫害を受けているそうです。自分も「ミュウ」の一員であることを悟ったジョミーは、他の「ミュウ」たちと協力し、遠い故郷・地球を目指す旅へと向かうのでした。

 声優陣には、当時のイケメン俳優、井上純一さん、志垣太郎さん、沖雅也さんらを起用。薬師丸ひろ子さん、秋吉久美子さんらも参加しています。

 監督は、伝説の青春ドラマ『傷だらけの天使』(日本テレビ系)のオープニングを撮った恩地日出夫監督が務めています。メインキャストにキャラクターの衣装を着せてアフレコをさせるなど、ユニークな演出を施しています。名ばかりの監督ではなく、恩地監督は脚本から手がけるなど、劇場アニメという新ジャンルに熱心に取り組んでいたことが知られています。

■萩尾望都さんの人気作も劇場アニメに

『11人いる!』『続・11人いる! 東の地平 西の永遠』を収録した「萩尾望都スペースワンダー 11人いる! 復刻版」(小学館)

 竹宮惠子さんが生み出したSFマンガ『地球へ…』の劇場アニメ化に続き、萩尾望都さんの人気マンガ『11人いる!』も、1986年にアニメーション化され、劇場公開されています。『11人いる!』の原作マンガは、『地球へ…』よりも早い1975年に発表され、少女マンガ初の本格SF作品となっています。

 竹宮さんの『地球へ…』が壮大なロードムービーなのに対して、萩尾さんの『11人いる!』は宇宙船を舞台にした密室サスペンスとなっています。宇宙大学への最終試験として、10人の受験生が宇宙船で共同生活を45日間送るというものです。ところが、船内には受験生がなぜか11人いるため、彼らはお互いの正体を疑いながら、課題に挑むことになります。

 直感力に優れたタダ、女の子のような容姿をしたフロル、リーダーシップのある王さま、貴族の生まれの四世……と、さまざまな星から集まった受験生たちの対立と友情を描いた青春ドラマとなっています。萩尾さんもお気に入りだったのでしょう。タダやフロルたちのその後を描いた『続・11人いる! 東の地平 西の永遠』を、1976年に発表しています。

 萩尾さんがキャラクターデザインを手がけたSFアニメ『時空の旅人』も、1986年に劇場公開されています。また、大島弓子さんの人気マンガ『綿の国星』は、1984年に虫プロによって劇場アニメ化されました。1988年には異色ファンタジー『四月怪談』が、中嶋朋子さん主演作として実写映画になっています。

 24年組ではありませんが、美内すずえさんの人気作『ガラスの仮面』は1984年にTVアニメ化され、和田慎二さんの『スケバン刑事』は斉藤由貴さん主演作として1985年にTVドラマ化されています。1980年代は、少女マンガ誌出身の漫画家たちが脚光を浴びた時代でもありました。

■「大泉サロン」で過ごした青春の思い出

 新人時代の竹宮惠子さんと萩尾望都さんは、東京都練馬区大泉の借家で、1970年から72年に共同生活を送ったことが知られています。二階建ての古い借家でしたが、「24年組」を中心にした女性漫画家たちやファンが集う交流の場となり、「大泉サロン」と呼ばれるようになりました。

 借家の更新がきっかけで、「大泉サロン」は2年間で解散します。解散することになった経緯は、竹宮さんが自伝『少年の名はジルベール』(小学館)、萩尾さんが『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)で、それぞれ語っています。クリエイター同士の、とても繊細な事情があったことが分かります。

 竹宮さんと萩尾さんは、「大泉サロン」解散後はそれぞれの道を歩むことになりました。竹宮さんの『地球へ…』は、人類と新人類との憎しみの連鎖を描いていますが、物語の最後は和解の可能性を感じさせます。萩尾さんの『11人いる!』では、タダやフロルたちは葛藤を重ねつつ、信頼関係で結ばれていきます。どちらの作品も、多感な青春時代に味わった挫折感だけでなく、新しい旅立ちへの希望も託されているように思えます。24年組の旅は、まだまだ続いているのかもしれません。

(長野辰次)

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