ファミコン世代が感動した「神移植作品」3選 「よくぞ再現してくれた」「違った魅力も」
マグミクス / 2024年3月28日 21時50分
■ファミコンブームの火付け役になった?
ゲームセンターやパソコンなどで人気だったゲームタイトルが、ファミコンにも多数移植されています。とはいっても、ファミコンの性能でアーケードやPCゲームを完全再現するのは難しく、どうしても微妙な出来になる移植作品が多かったのは否めません。
しかし、そんなハード面の制約があるなかで、ファンから称賛された移植作品も少なからずありました。そこで今回は個人的に「神移植」だと感じた、ファミコンに移植されたゲームソフトを振り返ります。
●ファミコン初期の人気を後押した「革命的シューティングゲーム」
ファミコンが発売された翌年の1984年11月、ナムコからファミコン版『ゼビウス』が発売されました。ゲームセンターで一世を風靡した『ゼビウス』は、現在まで続くシューティングゲームの基礎を作った斬新な作品として知られています。
それまでシューティングゲームといえば、横移動しかできない自機で、敵機を全部撃破するというシンプルなものが大半でした。しかし、ゼビウスでは美しい背景がスクロールし、地表と空中の敵を撃ち分ける要素も盛り込まれます。さらにステージが進むとボスが待ち構えているという構成は、その後のシューティングゲームの定番となりました。
そんなアーケード版がリリースされた翌年、ファミコン版の『ゼビウス』が登場します。当然アーケード版に比べると、グラフィックが簡素化された部分もありましたが、敵の滑らかな動きや、美しい背景のビジュアルなどは、しっかり踏襲されています。
ファミコンキッズの心をくすぐる隠し要素も満載で、『ゼビウス』の自機が無敵になる「隠しコマンド」を掲載した雑誌が完売するほどの影響を与えたのも有名な話です。筆者の周囲では、ファミコン版『ゼビウス』のクオリティに感激してファミコン本体の購入を決めた……という人が何人もいました。
ファミコン版『ゼビウス』を発売した1984年時点では、ナムコはハドソンに続く2社目のサードパーティでした。そのナムコが、アーケードのヒット作『ゼビウス』をファミコンのスペックに落とし込み、127万本も売り上げたことは、その後の参入メーカーにも大きな影響を与えたことでしょう。
●予想以上の出来に、セガっ子も衝撃を受けた?
左右に自在にスクロールする自由度の高さや、自機のパワーアップをショップで行うといった斬新な内容で人気を集めたのが、セガのアーケードゲーム『ファンタジーゾーン』です。ポップでキュートな世界観が特徴的で、自機「オパオパ」の個性的なデザインも目を惹きました。
そんなセガの大ヒットタイトル『ファンタジーゾーン』を、ファミコンに移植したのは「サンソフト」でした。
ファミコン版『ファンタジーゾーン』は1987年7月にリリースされましたが、その約1年前にセガのゲーム機「セガ・マークIII」でも発売されています。セガ・マークIII版では一部のボスが実装されず、別のボスに差し替えられましたが、ファミコン版では全てのボスが再現されました。
また、敵が出る前線基地の動きや、ショップの商品グラフィックの再現度も高く、移植に際してアーケード版に近づけようとした努力がうかがえます。
そして何より気に入っていたのが、ファミコン版のBGMです。本家『ファンタジーゾーン』のBGMが好きな人は多いと思いますが、ファミコンの乏しい音源で再現された曲は、これはこれで味があります。もしファミコン版を未プレイの方は、ぜひBGMにも耳を傾けてほしいところです。
サンソフトといえば『いっき』や『アトランチスの謎』のイメージが強いメーカーですが、筆者のように『ファンタジーゾーン』をプレイして印象がガラッと変わった人もいるかもしれません。
■グラフィックBGMともに「ファミコンの最高峰」
コナミの開発技術のすごさを実感! 画像はファミコン版『グラディウスII』(Konami)
●ファミコンの性能を超越した移植作品?
1988年のアーケードゲーム界は、コナミがリリースした『グラディウスII -GOFERの野望-』が席巻しました。従来のシューティングゲームとは一線を画す美しいグラフィック、しびれるほどカッコいいBGMに魅了されたファンは多いことでしょう。
人工太陽からドラゴンが飛び出すステージや、神秘的な結晶が印象深いステージ、そして『グラディウス』から続く伝統のモアイステージなど、当時のアーケードゲームの最高峰ともいえるクオリティに感動させられました。
そして同年の12月、早くもファミコンへの移植作『グラディウスII』が発売されます。過去にも『グラディウス』『沙羅曼蛇』などがファミコンに移植されましたが、ハード性能の限界から、どうしても本家と比べると大きく見劣りする部分が目立ちました。しかし、ファミコン版の『グラディウスII』は、これまでとはひと味違う「移植作品」だったのです。
ファミコン版『グラディウスII』をプレイすると、最初から「アーケード版の完全再現」は狙っていないことが分かります。本家『GOFERの野望』の「らしい部分」はしっかりと再現しつつも、技術的に難しい部分はオリジナル要素に変更、さらにファミコン版ならではのアレンジも加えられています。
たとえば、1面の人工太陽のステージは、太陽のなかからファイヤードラゴンが出てくるエリアを抜けると、『沙羅曼蛇』の3面を彷彿させるプロミネンスが吹き出すエリアが追加されています。本家にはない変更点ですが、こういう粋なオマージュなら、歴代シリーズを遊んだプレイヤーはニヤリとさせられます。
また、それまでのファミコン移植では技術的に難しいとされていた「最大4つまでのオプションがつく」部分が実現したり、自機パワーアップ時の「英語ボイス」が実装されたりと、確実に開発技術の進歩が感じられます。
そして一番驚かされたのは、到底ファミコンソフトとは思えない、高いクオリティのBGMです。本家『GOFERの野望』のBGMは、心地よいオーケストラヒットが印象的でしたが、それをファミコンの音源で再現しています。もちろん音の厚みなどはアーケード版に及びませんが、単体のBGMとして十分聴き応えのある仕上がりです。
さらに、ファミコン版のオリジナル曲が追加されていたり、エンディング曲が原曲の作曲者によって追加アレンジされていたりと、「ファミコン版だからこそ」の追加要素も目立ちます。オリジナルからの改変は歓迎されないこともありますが、『グラディウスII』の場合は改変のクオリティそのものがきわめて高いので、むしろ称賛したくなります。
今では、アーケード版『GOFERの野望』の忠実な移植作品がさまざまなハードで遊べますが、ファミコン版『グラディウスII』はアレンジ部分が多いので、オリジナル版とは違った魅力を楽しめる作品といってよいでしょう。
ファミコンへの移植は、ハード面の制約があるだけに開発者の苦労も大きかったはずです。それだけに「神移植」と呼ばれるような良質な移植作品を生み出したクリエイターには、リスペクトを感じざるを得ません。
(大那イブキ)
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