「おまえもビグ・ザム?」意外と多いバリエーション機 これだけあったら連邦粉砕!
マグミクス / 2024年8月13日 6時35分
■ジオン軍が生んだ一年戦争最強のMA!
『機動戦士ガンダム』には、いろいろなMA(モビルアーマー)が登場しました。そのなかでも印象的だったMAといえば、多くの人が「ビグ・ザム」の名前を挙げることでしょう。
「MA-08 ビグ・ザム」は、要塞攻撃および防衛を目的にジオン公国軍が開発したMAでした。その全高は通常のMS(モビルスーツ)の3倍以上である59.6mにも及びます。そして、その火力は「一年戦争」中の機体としては最大級といえるでしょう。
このビグ・ザムに乗り込んだのが、宇宙要塞「ソロモン」を指揮していた「ドズル・ザビ」です。しかし、初見でのドズルの評価は辛辣なものでした。劇場版では「戦いは数」だと、ビグ・ザムを1機しか送らなかった「ギレン・ザビ」に憤慨し、TV版でも「代わりにリック・ドムを10機も回せ」といっています。
これは直前のサイド6での戦いで、18機(劇場版では12機)のMS「リック・ドム」を失っていたことに起因するかもしれません。サイド6での戦いで「コンスコン」が敗北したことにより、地味にソロモンの防衛線が削られていたというわけです。
ところが、ビグ・ザムに乗り込んだドズルの、同機に対する評価は一変しました。その圧倒的な火力と、機動兵器に初めて搭載された「Iフィールド」による長距離ビームの無効化という攻防兼ね備えた強さに、「ビグ・ザム量産の暁には連邦なぞあっという間に叩いてみせるわ!」と豪語しています。
確かに圧倒的な戦闘力を秘めたビグ・ザム、はたして量産は可能だったのでしょうか。一説によると、その生産コストはムサイ級軽巡洋艦2隻ぶんだったそうです。しかもコストの割には、稼働時間は20分以下という資料がありました。
こういった問題点から、ビグ・ザムは試作された1号機のみだったそうです。しかし問題点はそれだけではなく、ジオン軍の戦略プランにもあります。ジオン軍は国力が低いにもかかわらず、いくつもの新兵器の開発を同時並行で行っていました。このプランをいくつか統合すれば、より効果的な開発ができたといえるでしょう。
ビグ・ザムに限っていえば、MAの試作数をもっと絞ればよかったのかもしれません。たとえば「アプサラス」のような運用目的の似たMAとの競合になっている点で、無駄にコストを消費していることになります。
これはトップダウンで物事が決まるのに、その決定権を持つ者が複数いるという、ジオン軍の長所であり短所でもある点が問題でした。ビグ・ザムは経緯からいってギレン主導のプランであり、そしてアプサラスはデギン・ソド・ザビによる裁可を経ているとされています。つまり似たような機体を別の部署で開発していたといえるかもしれません。
この逆が「地球連邦軍」で、時間短縮も考慮して量産するMSを「RGM-79 ジム」の1種類として、迅速な大量生産で数を揃えたというわけです。ここにジオン敗北の原因があったのかもしれません。
もっともビグ・ザムの量産はドズルだけでなく、多くの人間の夢だったようです。そのためか、外伝も含めると何十機ものビグ・ザムが宇宙世紀に誕生していました。
■ドズルの夢「ビグ・ザム量産」が果たされた世界線とは?
ビグ・ザムといえばこのお方。「エクセレントモデルRAHDXG.A.NEO ドズル・ザビ~限定復刻版~」(メガハウス) (C)創通・サンライズ
本来はビグ・ザムの後継機となる予定だったのが、『機動戦士ガンダムZZ』に登場した「AMA-01X ジャムル・フィン」です。戦況の変化により、当初の仕様から変更されて急造の頭部と手足を付けた可変機として完成しました。それゆえに腹部のハイ・メガ・キャノンは当時としては破格の攻撃力を有します。
ゲーム媒体では多くのビグ・ザムバリエーションがありました。「ギレンの野望」シリーズに登場する「MA-08S ビグ・ザム(ザビ家仕様)」は、その名前の通りザビ家が使用することを前提に開発されたものです。それゆえに機体各所には華美なエングレービングが施されていました。
『SDガンダム GGENERATION』に登場したのが、「MA-09 量産型ビグ・ザム」です。量産化のため大幅にデザインが変更され、脚部は胴体側面に取り付けられていました。ドズルの夢である「ビグ・ザム量産」が形になった機体といえるでしょうか。
『ガンダムトライエイジ』では、「MA-08A ビグ・ザム(アクシズ仕様)」という機体が登場しています。白を基調とした「ハマーン・カーン」の専用機をイメージしたカラーリングでした。これはビグ・ザムの脚部が女性を思わせるデザインだからとのこと。
『機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122』で登場予定だったのが、「OMAX-01 グラン・ザム」です。一年戦争時の機動兵器をリファインして使用していた火星のジオン軍残党「オールズモビル(火星独立ジオン軍)」が開発しました。地上戦用に脚部がホバーユニットとなっています。
書籍関連でも、ビグ・ザムのバリエーションは登場していました。月刊児童漫画誌「コミックボンボン」(講談社)のメカニックデザイン企画「MSV90」で発表されたのが「ドグザム」です。近接戦闘も可能なように、ビグ・ザムの頭の上にMSの上半身を取り付けたようなデザインとなっていました。
マンガ『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』(漫画:夏元雅人/原作:矢立肇、富野由悠季/協力:サンライズ/コンセプトアドバイザー:今西隆志/KADOKAWA)に登場したのが「RMA-081 ジービッグ・ザッム」です。ソロモン攻略戦で破壊されたものをベースに、連邦軍が、ジオン残党への威嚇のために改修したそうです。
マンガ『機動戦士ムーンガンダム』(ストーリー:福井晴敏/漫画:虎哉孝征/メカニックデザイン:形部一平/原案:矢立肇、富野由悠季/KADOKAWA)に登場した「AMA-X9 ギガッザム」は、ビグ・ザムだけでなくジオン軍の各MAの長所を組み合わせた機体でした。そのため各特性を生かした3つの形態にモードチェンジすることが可能です。
このほかにもさまざまなバリエーションがあるなかで、おそらく本来の仕様で登場したのが『機動戦士Ζガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのレポートより―』(漫画:ことぶきつかさ/原作:富野由悠季/原案:矢立肇/KADOKAWA)で、「ティターンズ」のキリマンジャロ基地攻略に参加した「8機の」ビグ・ザムでしょうか。
一年戦争終結後、ドズルの元副官「ラコック」配下のアナハイム・エレクトロニクスに吸収された旧ジオン開発者たちが、ひそかにキャリフォルニアベース周辺で生産、完成させたようです。
単純な破壊力では一年戦争最強と考えられるビグ・ザム。その圧倒的な戦闘力には魅せられた人も多いのでしょう。それゆえに、その後を追いかけるものも後を絶たないのかもしれません。
(加々美利治)
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