『ウルトラマン』が最初に戦った怪獣なのに不人気? 再評価の兆しもある「ベムラー」とは
マグミクス / 2024年8月15日 8時50分
■栄えある第1号怪獣……のはずが?
宇宙忍者バルタン星人、どくろ怪獣レッドキング、棲星怪獣ジャミラ、古代怪獣ゴモラ、三面怪人ダダ、悪質宇宙人メフィラス星人、宇宙恐竜ゼットン……。1966年に放映された『ウルトラマン』には、数多くの人気怪獣が登場します。彼らはバラエティ番組やCMなどにも頻繁に姿を見せており、本編での活躍を観たことがない世代にも広く認知されているのではないでしょうか。
しかし、筆者を含めた怪獣ファンにとっては忘れじの君であり、押しも押されもせぬシリーズの大立役者であるにもかかわらず、一般的な知名度はいまひとつ……という怪獣も少なからず存在します。「宇宙怪獣ベムラー」は、その代表格といえるかもしれません。
ベムラーは、『ウルトラマン』第1話「ウルトラ作戦第一号」に登場する怪獣です。つまり初代ウルトラマンが、劇中で最初に戦った怪獣ということになります。もちろん、初代マンは歴戦の勇士なので、地球に来る前からさまざまな怪獣を倒しているはずですが、とにもかくにも宇宙の墓場に護送中だったベムラーが、地球まで逃げてきたことがすべての始まりでした。
ベムラーを追ってきたM78星雲の名もなき宇宙人は、科学特捜隊のハヤタ隊員を誤って死に至らしめてしまい、その責任を取るべく「ウルトラマン」として地球に留まることを決意します。つまり、そもそもベムラーがいなければ、ウルトラマンという稀代のヒーローは誕生しなかったわけですね。「ウルトラマンシリーズ」の歴史全体から見ても、極めて重要なキャラクターといえるでしょう。
ただ、これまであまり顧みられる機会に恵まれなかった怪獣であることも事実です。最初に挙げた怪獣は、いずれもそれほど間を置くことなく再登場を果たしているのですが、ベムラーにはなかなかそのチャンスがやってきませんでした。
特に決定的だったのが、『ウルトラマン』の実質的リメイクである『ウルトラマンパワード』です。このとき、上記のもの以外にも多数の「初マン怪獣」が新たな姿を与えられて復活したにもかかわらず、ベムラーは選から漏れてしまいます。パワードが戦った最初の相手は、バルタン星人でした。
ちなみに『ウルトラマンティガ』のヤナカーギー、『ULTRAMAN』のビースト・ザ・ワンは、どちらもベムラーをモチーフにした怪獣として知られていますが、もう少しこういったリスペクト怪獣が多くてもいい気はします。『仮面ライダー』の1話怪人だった蜘蛛男なんて、ことあるごとにスポットが当てられており、特に原点回帰を謳(うた)うようなタイトルでは、必ずといっていいほど蜘蛛モチーフの怪人が、最初期の敵として採用されているくらいですから。
■ベムラー再評価の兆し! ここから巻き返しなるか?
『Ultraman X the Avengers』 第1巻(Marvel)
では、ベムラーそのものに魅力がないのかといえば、決してそんなことはありません。デザイナーの成田亨さんは「典型的な二本足怪獣を作ろう」と考えたと語っていますが、獅子をモチーフにしたという凶悪さと愛嬌を兼ね備えた面構えは、従来の怪獣にはなかった個性的なものでした。
さらにティラノサウルスのごとき小さな前肢も、怪獣の中には人間が入ってると分かっていればこそ目を引く特徴です。黒を貴重としたカラーリングや背中を覆う無数のトゲなど、子供好きする要素も盛り込まれており、スター怪獣になる素質は充分に備えていたはずです。
しかし、いかんせん同期のライバルが強過ぎました。ベムラーとレッドキング、どちらを新作に出すかということになれば、やはりレッドキングになってしまうのではないでしょうか。これがバルタン星人やゼットンでも同様です。
また、1話怪獣といえば番組を象徴するキャラクターでもあるので、逆に他のシリーズには登場させづらかったという事情もあったかもしれません。いずれにせよ本格的なベムラーの復活は、2009年公開の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』まで待たなくてはならなかったのです。
もっとも一度でも復活すればしめたもの。近年の「ウルトラマンシリーズ」では、予算との兼ね合いもあって、新怪獣(≒新規造形の着ぐるみ)は減少傾向にあり――ここ2年ほどは「新怪獣ぞくぞく登場路線」に舵を戻しているのですが――既存の着ぐるみを再利用することができる旧作怪獣の登板が増えてきています。
当然、ベムラーも度々お呼びがかかることに。さすがに1体で1話丸々を背負うような大役は稀で、他の怪獣と一緒に暴れたり、ほんのチョイ役だったりすることのほうが多いのですが、『ウルトラマンオーブ』では大きなツノを備えた強化形態まで登場しており、新世代の特撮ファンや怪獣キッズたちにその存在感をアピールしていました。
また、こちらも冒頭のチョイ役とはいえ、先日配信開始された日米合作アニメ『Ultraman: Rising』に登場! さらにこの夏発売のコミック『ULTRAMAN X THE AVENGERS』のバリアントカバーまで飾っており、ベムラーってば最近、ちょっとキテるのかもしれません。
(ガイガン山崎)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
リアルタイム世代こそ知らない? 『ウルトラマン』最終話「黒くなってるゼットン」の謎
マグミクス / 2025年1月11日 9時5分
-
「ウルトラマン カードゲーム」ダークヒーローが満を持して登場! ブースターパック第3弾4月25日発売
マイナビニュース / 2025年1月10日 12時5分
-
『レオ』の惨劇はなぜ起きた? 「ウルトラ」シリーズ史上最大の大虐殺劇から半世紀
マグミクス / 2025年1月10日 7時35分
-
「ウルトラマン」キングジョー後継機もぶった切り! 磨き上げた技が光るシブい進化
マグミクス / 2025年1月3日 8時5分
-
ウルトラ怪獣と人間が共生する新世界…円谷プロx小森陽一によるSFファンタジー小説「ツイン・アース」発売決定
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年12月21日 11時0分
ランキング
-
1芸能人なぜ呼び捨て?「日本語呼び方ルール」の謎 日鉄会長の「バイデン呼び」は実際に失礼なのか
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 9時20分
-
2急増する大手黒字企業リストラのシビアな背景…2024年「早期・希望退職」1万人超え、前年比3倍に
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月15日 9時26分
-
3高齢者は「体重」が重要…標準を下回ると死亡リスクが急上昇
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月15日 9時26分
-
4「室内寒暖差がつらい…」その要因と対策が明らかに! - 三菱電機が紹介
マイナビニュース / 2025年1月14日 16時10分
-
5感染症の家庭内感染を防ぐために…温度と湿度、入浴、食事はどうしたらいいのか?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月15日 9時26分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください