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『帰ってきたウルトラマン』を何と呼ぶ? 「ジャック」ではなく「新マン」「帰りマン」派も多いワケ

マグミクス / 2024年8月24日 8時25分

『帰ってきたウルトラマン』を何と呼ぶ? 「ジャック」ではなく「新マン」「帰りマン」派も多いワケ

■『帰ってきたウルトラマン』の名前問題

『帰ってきたウルトラマン』に登場する「ウルトラマン」は、現在では「ウルトラマンジャック」のキャラクター名が定着しています。しかしながら『帰ってきたウルトラマン』本編では、このウルトラマンジャックの名称はいっさい登場しません。

 いわば「後付け設定」で、この名称になじみのないリアルタイム視聴者と、後の世代の間でしばしば論争が巻き起こる原因ともなっていました。いったいどうしてこのような事態が起こったのでしょうか。ここではその背景を探ってみたいと思います。

 作品タイトルが『帰ってきたウルトラマン』とあるように、そもそも本作は『ウルトラマン』の続編、今でいうリブート作品として企画されました。企画当時の1960年代末に流行していたTV時代劇『帰って来た用心棒』やフォークソング「帰って来たヨッパライ」がヒントになったとも言われており、それゆえに後に続く『ウルトラマン何某』とは作品タイトルそのものが大きく異なっています。

 キャラクターとしても、当然のことながら初代ウルトラマンが再登場する想定でした。この時点では「ウルトラ兄弟」の概念は存在せず、現在のような「ウルトラマンシリーズ」が形成される遥か以前の話であることも留意する必要があるでしょう。

 ところが、商業的な理由でそのままのデザインで登場させるわけにはいかなくなりました。そこで初代ウルトラマンに赤いラインを追加して撮影が開始されるも、途中で腰回りがホットパンツのようになり、ひざ上の赤い部分が太くなるなど、デザイン自体にも微調整が加えられました。それが、今日我々が目にしているウルトラマンジャックの姿となります。

 こうした変更については、当時の児童誌において「まえのウルトラマン」「こんどのウルトラマン」と違いが紹介されました。なお、初代ウルトラマンに赤いラインを追加しただけの、いわゆる「NG版帰ってきたウルトラマン」は、スチール写真が残されています。

 一方、劇中では、かつてハヤタ隊員と一体化したウルトラマンと同一人物か否かは説明されることがなく話が進んでいきましたが、恐らく作り手としては、デザインが変更されても、キャラクターとしては同一人物ととらえていたのではないでしょうか。

 それが、第38話「ウルトラの星 光る時」で、ウルトラセブン(※第18話で客演済み)とともに初代ウルトラマンが登場したことで、はじめてMAT隊員の郷秀樹が融合しているウルトラマンは、初代ウルトラマンとは別のキャラクターであることが明らかになりました。

 また、この際にモロボシ・ダンと握手を交わしながらハヤタ隊員は「ウルトラマンを蘇生させるためには」と言っており、まだ個人名が設定されていないことが分かります。そして、最終回「ウルトラ5つの誓い」においては、ゼットンに敗北する初代ウルトラマンの悪夢にうなされる郷秀樹が「初代ウルトラマン」と呼んでおり、同話では、郷自身の変身体をウルトラマンとし、オリジンに「初代」を冠することで区別していました。

 その後、『ウルトラマンA』からは「ウルトラ兄弟」の設定が生まれたことで、両者を区別する必要が生じたことからさまざまな名称で呼ばれるようになりました。以後、第2期ウルトラシリーズにおけるウルトラマンジャックの客演回を見てみると、第14話ではヤプールが「ウルトラマン二世」と呼称し、『ウルトラマンタロウ』の第34話では地球の少年が「新マン」と呼んでいるのを確認できるほか、第40話ではナレーションで「帰ってきたウルトラマン」と紹介されています。

■ついに「ジャック」の名が登場!

1984年の映画『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』で「ウルトラマンジャック」と命名されるに至った(バンダイビジュアル)

 また『タロウ』の第52話ではナレーションや二谷副隊長ともに「ウルトラマン」で統一されていますが、これはウルトラマンジャック単独の客演回で区別する必要がなかったからではないかと思われます。

 続く『ウルトラマンレオ』においては、第34話では「帰ってきたウルトラマン」、第38話では「新マン」ですが、第38話のオープニングの登場キャラクター一覧では「帰ってきたウルトラマン」とクレジットされており、統一されていません。

 さらにそこから数年を経た映画『ウルトラマン 怪獣大決戦』では、『タロウ』の第52話と同様に「帰ってきたウルトラマン」と紹介されていますが、作品タイトルならいざ知らず、キャラクター名としてはいささか不似合いといえるでしょう。そうした過程を経て、1984年の映画『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』で、ついに「ウルトラマンジャック」と命名されるに至りました。

 なお、『ウルトラマンタロウ』のタイトル案のひとつには『ウルトラマンジャック』がありましたが、それを転用したか否かについては特に明言されていません。またこの間に放送されていたアニメ『ザ☆ウルトラマン』でも、最初は単にウルトラマンと呼ばれていたのが、彼の故郷U40とウルトラ人の設定が登場するに伴い、「ウルトラマンジョーニアス(※ウルトラマンジョーとも呼称されることもある)」の個人名が劇中で明かされる描写が盛り込まれており、そうした経緯も多少は影響を与えているような気がしますが、あくまで推測に留めておきたいと思います。

 ともあれ、以上のようにして、ついに設定されたウルトラマンジャックという個人名ではありますが、『帰ってきたウルトラマン』放送から13年を経て、突如命名されたキャラクター名だけに、リアタイ世代を中心にこれに抵抗を覚えるファンも少なくはなく、浸透するには長い期間を擁しました。

 そうした過程を物語る、ひとつのエピソードがあるので紹介しておきたいと思います。2008年に公開された映画『大決戦!超ウルトラ8兄弟』では、ウルトラマンメビウスに変身するヒビノミライが、別世界の郷秀樹に対して「ジャック兄さん!」と呼びかけるも通じず、「だったら、新マン兄さん、帰りマン兄さん」と呼びかけるという、名称が統一されてないことをネタにした場面が描かれました。

 ただし、ファン同士の会話ならいざ知らず、作品タイトルの『帰ってきたウルトラマン』の略称として『帰りマン』『帰マン』の表記は存在するものの、キャラクター名としての「帰りマン」は、劇中はもちろん、書籍などでも用いられたことは基本ないはずです。ですから、これはメタ的な場面に過ぎず、こうした誤用には、いささか注意する必要があります。

『帰ってきたウルトラマン』から半世紀以上の53年が過ぎ、2024年の今年はウルトラマンジャックと命名された『ウルトラマンZOFFY』の公開から40年目を迎えるに至りました。この40年の間にウルトラマンジャックの名称をファーストインプレッションとして育った世代が増えたこともあってか、X(旧:twitter)を見る限りでは、かつてのような、激しい議論も沈静化しつつあるように思います。

(田中一)

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