昭和の子供も大人も魅了! こちらが俺たちの惚れた「あだち充ヒロイン」です
マグミクス / 2024年8月25日 12時45分
■昭和男子の心をつかんだ「あだち充ヒロイン」
マンガ家のあだち充先生は、昭和スポコンマンガブームの波に乗って、多くのヒット作を生み出しました。彼の作品には、明るく、かわいく、非の打ち所がない、魅力的なヒロインが登場します。そうした、昭和男子が惚れた「あだちヒロイン」を振り返ります。
●ひたむきに幼なじみを応援する姿がかわいい「浅倉南」
1981(昭和56)年に「週刊少年サンデー」(小学館)にて連載がスタートしヒットした『タッチ』のヒロイン「浅倉南」は、日本男児を魅了したキャラクターです。タレントの明石家さんまさんは理想の女性として名前を挙げ、夕方のTVニュースでは「南ちゃんを探せ」という、全国のスポーツ少女を取り上げるコーナーが放送されるなど、TVアニメ化後は社会現象といえるほどの作品になりました。
南のアイデンティティは、容姿端麗、明朗快活、文武両道、同級生からも好かれる人気者で、三角関係が描かれた幼なじみの双子「上杉達也」「和也」や、父の面倒をかいがいしくみる優しい少女です。
南に好意を寄せる和也は、彼女の憧れでもある「甲子園」を目指し、たゆまぬ努力を積み、かつ南はそれを応援するため野球部のマネージャーになります。しかしその実、南は達也に恋心を抱いているため、いかに和也が甲子園に出場しようとも、南と恋仲になることはなかったでしょう。
そうした振る舞いや、のちに登場するイケメン球児「新田明男」に対する態度を見て、南をずるい女ととらえる読者もいるといいます。しかしながら、これは南のひたむきさや優しさが可視化しただけのことです。
また、天才肌の和也よりも、当初はパッとしなかった達也に自分を投影する読者も多く、そのような等身大の少年を、学校のヒロインでもある南が好いているというのは、わが人生にも期待(夢)を持たせてくれるキャラクターでした。
●義妹と激重彼女がヒロインというどうかしちゃってる名作『みゆき』
『みゆき』は、1980(昭和55)年にマンガ雑誌「少年ビッグコミック」(小学館)にて連載がスタートした名作です。
主人公の「若松真人」と血のつながらない妹の「若松みゆき(以下、みゆき)」、真人と同級生の「鹿島みゆき(以下、鹿島)」という、ふたりの「みゆき」との三角関係が描かれた作品で、1983(昭和58)年にアニメ化されます。そのエンディングテーマとなったH2Oの「思い出がいっぱい」は大ヒットし、のちに卒業式に歌唱される定番ソングになるほど、社会にも大きな影響を及ぼしました。
みゆきは、勉強やスポーツ、そしてビジュアルまでもが優れる鉄壁のヒロインです。そうした彼女が、義理の兄でパッとしない真人と鹿島との関係が深くなると、嫉妬したり、ベタベタくっついてきたりする姿は、猛烈にかわいさを感じます。
真人と住む自宅では、スカートのままヨガをしたり、水着になったりと、意図せず義兄の目をくぎ付けにする天然な部分もありました。自分がセクシーなばかりに義兄の受験勉強に支障が出ると気付くと、あえて「もさい」恰好をするという、思いやりもある少女です。
かわいく甘えん坊、そして優しいみゆきのキャラは、理想の妹像で、当時の読者は『みゆき』の兄妹に憧れを抱いたものです。
■『みゆき』もうひとりのヒロインは、恋人のために浪人…!
タイプの異なるふたりの「みゆき」。右が義妹のほう。『みゆき』第9巻 (小学館)
そして、『みゆき』におけるもうひとりのヒロイン、鹿島は、ロングヘアーで清楚な美少女というみゆきとは対局のビジュアルを備えた少女です。
鹿島も成績優秀、眉目秀麗なのに、なぜか物語冒頭から真人に好意を抱いており、しかも「自身のビキニを盗んだ真人を許す」という、心の広すぎる少女です。
また、真人と学力レベルを合わせた大学を受験し、自身は受かるものの真人が落ちると、ともに浪人生活を選択するという、良く言えば一途、悪く言えば激重ムーブを見せました。
少年読者は、パッとしない真人に自分を重ね、かわいい妹と一途な恋人が自分を取り合う夢想をしたものです。
ここまで、文字面だけで見るとヤバい香りしかしませんが、最終回とその前の2話は、いわゆる神回といわれるほど、昭和ヒロインを愛するおじさんには広く知られた名作です。
●恋人は大学生……『陽あたり良好!』のヒロインは岸本かすみ
『陽あたり良好!』は、1980(昭和55)年から「週刊少女コミック」(小学館)にて連載が始まった、あだち先生初期のヒット作です。アニメ化されると、ヒロインの「岸本かすみ」の声優は、テレビ番組『はやく起きた朝は…』などでおなじみの森尾由美さんが担当していました。
アニメ化、実写ドラマ化もされた。『陽あたり良好!』第1巻 (小学館)
さて、この作品の主人公にしてヒロインであるかすみは、ショートカットで元気な高校1年生です。下宿所でともに暮らすクラスメイトの「高杉勇作」たちに、食事やお茶を作ってあげるなど面倒見のよい一面があります。
かすみと高杉は、日々の生活のなかで惹かれあっていくのですが、そもそもかすみには、下宿所に入る前から「克彦」というイケメン大学生の恋人がいました。
つまり本作の主人公にしてヒロインのかすみは、中学生の頃から、当時の年齢は明かされていませんが男子大学生と交際していたことに……危険な香りがします。
その後、下宿所に遊びに来た克彦から唐突にキスをされたかすみは狼狽してしまい、庭でのんきに蛍を探していた高杉に抱きつき涙するというシーンがあります。
かすみ……貞操観念はそれでいいのか? と読者を困惑させました。
とはいうものの、ヒロインとひとつ屋根の下に暮らし、さらに同じ高校に通うという常に共にいる展開は、こんな生活をしてみたかったなと思わせました。
※ ※ ※
浅倉南、若松みゆき、鹿島みゆき、岸本かすみという、あだち先生が生み出した稀代のヒロインを振り返ると、共通点がいくつか見えてきます。
それは、「パッとしない主人公に惚れ、イケメンをふる」「重めなプレッシャーをかける」「少年がたぎるサービスカットが手厚い」、そして「髪型を同じにしたら区別つかない」といった点ではないでしょうか。
それでも昭和時代にときめいたあだちヒロインは、おじさんになった今でも、独立した個性として魅力的に生き続けています。
(南城与右衛門)
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