『ミスミソウ』原作者 x『貞子vs伽椰子』監督 最凶タッグ作『サユリ』はJホラーの超進化系?
マグミクス / 2024年8月24日 12時10分
■従来のJホラーにはない爽快感
漫画家と映画監督との幸福なマリアージュがこの夏、ついに実現しました。2024年8月23日から劇場公開が始まったホラー映画『サユリ』こそが、幸福なマリアージュが生み出した最凶に怖くて、最高に面白い実写化作品となっています。
山田杏奈さんが主演したバイオレンス映画『ミスミソウ』(2018年)の原作者として知られる漫画家・押切蓮介氏が、2010年~2011年に雑誌連載したホラーマンガ『サユリ』を、『貞子vs伽椰子』(2016年)などのヒット作で知られる白石晃士監督が、作品内容はそのままにブーストをかけて実写化した作品です。
どちらも振り切った作風、過激すぎて思わず笑ってしまうという気鋭の人気クリエイターです。鬼才同士のパワーとパワーががっつりと掛け合って、これまでのJホラーにはない怒涛の展開と胸のすくクライマックスが待っています。そして、観終わると爽快感すら感じさせる不思議なホラー映画に仕上がっているのです。
■悪霊にガチ対決を挑む人間たち
これまでのJホラー映画と、『サユリ』はどこが違うのでしょうか? 中田秀夫監督の『リング』(1998年)や清水崇監督の『呪怨』(2003年)が大ヒットし、1990年代から2000年代にかけて日本製恐怖映画=Jホラー映画は世界的な大ブームとなりました。しかし、その後に作られたJホラー系の作品は、『リング』『呪怨』のパターンを踏襲し、悪霊に取り憑かれて主人公たちが全滅しておしまい……というバッドエンドのものがほとんどです。
人間が悪霊に一方的にやられてしまうという展開に「ちょっと待った!」を掛けたのが押切蓮介氏でした。映画好きな押切氏はJホラーにありがちなストーリーの逆を突くホラーコメディマンガ『でろでろ』や『ゆうやみ特攻隊』などで人気を博しています。『でろでろ』はヤンキー少年が、『ゆうやみ特攻隊』は「心霊探偵部」の高校生たちが怪奇現象にガンガン立ち向かっていくという内容です。
一方、白石晃士監督はオリジナルビデオシリーズ「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」(2012年~2023年)で、カルト的な人気を集めました。『コワすぎ!』は都市伝説を検証する撮影クルーを主人公にしたドキュメンタリータッチのホラー作品です。とりわけ、パワハラ上司の工藤ディレクター(大迫茂生)が金属バットで口裂け女らに立ち向かう様子が評判となり、低予算ホラーと思えないほどスケールの大きな物語へと展開していきました。
生きている人間が、実体のないオバケに負けてたまるかッ! そんな気合いたっぷりな主人公たちを、押切氏も、白石監督も描いてきたわけです。しかし、『サユリ』に登場する悪霊はハンパなくこの世に強い恨みを抱いています。一体、どんなバトルになるのか、想像できない面白さが『サユリ』には待っています。
■おばあちゃんが念じた大切な言葉
則雄が窮地に陥った時、認知症だった祖母の春枝が覚醒し、物語が大きく動き出す
Jホラー史において記念碑的な作品になりそうな『サユリ』の舞台となるのは、海沿いの地方都市にある中古の一軒家です。中学3年生になる則雄(南出凌嘉)たち一家は、広々とした家に引っ越したことを喜びます。しかし、怖がりの弟・俊(猪股怜生)だけは、この家に潜む不気味な気配を感じて、怯えていました。
高校に通う長女・径子(森田想)の様子が、まずおかしくなります。いつもは優しい性格なのに、夜中まで起きていた径子は、俊に容赦ない暴力をふるうのでした。さらに父親の昭雄(梶原善)、祖父の章造(きたろう)らにも異変が起きます。
一家を襲う大惨事に、認知症が進んでいた祖母の春枝(根岸季衣)がふいに覚醒します。すべてはこの家に取り憑く悪霊の仕業であることを見抜き、オロオロする則雄にこう告げるのでした。
「命を濃くしろ!!」
生命力を高めることで、悪霊に立ち向かえと春枝は言うのです。もともと春枝は、太極拳の師範でした。則雄に家の中を大掃除させた上で、ご飯をモリモリ食べさせ、太陽のもとでの特訓を施します。則雄に明るい日常生活を送らせながら、春枝は着々と悪霊退治の準備を進めるのでした。
■TV放映が心配になる、破壊力抜群な名ゼリフ
映画『サユリ』ポスタービジュアル
この春、スマッシュヒットしたミステリー映画『変な家』でも元気にチェンソーを振り回していた大ベテラン女優の根岸さんが、悪霊を相手に大活躍します。押切氏のサバイバルホラーマンガ『ぐらんば』が実写化された際には、こちらもぜひ根岸さんに主演してほしいものです。
主人公となる則雄を演じたのは、オーディションで選ばれた南出凌嘉さん。同じ中学に通う霊感少女の住田(近藤華)との甘酸っぱいシーンに加え、悪霊に対して最高級の決めゼリフを放ちます。則雄が口にするこのセリフは、白石監督が小学校時代に女の子から教えられた言葉だそうです。原作マンガにはないこのセリフ、実生活でも魔除け代わりになりそうなくらい破壊力抜群です。実際に白石監督の高校時代、金縛りに悩んでいた女子にこの言葉を教えたところ、金縛りに遭うことがなくなったそうです。
ホラー映画なのに、笑えて、せつなくなり、そして最後にはほっこりした気持ちになれます。それは原作者の押切氏も、白石監督も、人間の生命力というものを常に大切に描いているからでしょう。決して、バイオレンス描写の過激さだけで注目を集めているわけではないのです。
8月8日に行われた完成披露舞台あいさつでは、登壇した押切氏は「クラスでずっと狙っていた女の子と両想いになった気分」と白石監督とコラボできた喜びを語っています。
漫画家と映画監督との最高のマリアージュ作、ぜひ劇場で楽しんでください。テレビ放送では、則雄の名ゼリフが禁止用語扱いされる可能性がありますから。
映画『サユリ』
原作/押切蓮介『サユリ 完全版』(幻冬舎コミック)
監督/白石晃士 脚本/安里麻里、白石晃士
出演/南出凌嘉、近藤華、梶原善、占部房子、きたろう、森田想、猪股怜生、根岸季衣
配給/ショウゲート 8月23日より全国公開中
(C)2024「サユリ」製作委員会/押切蓮介/幻冬舎コミックス
(長野辰次)
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