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『ガンダム』連邦軍MSの「水泳部」なぜジオンと比べてマイナーなのか もっともなワケ

マグミクス / 2024年9月4日 6時35分

『ガンダム』連邦軍MSの「水泳部」なぜジオンと比べてマイナーなのか もっともなワケ

■ジオン水泳部に負けない連邦の水陸両用MSたち

 ファンから「ジオン水泳部」の愛称で親しまれている「ジオン公国軍」の「水陸両用MS(モビルスーツ)」、独特の形状が人気の秘密でしょうか。しかし、水陸両用MSは何もジオンの独壇場ではありません。種類では劣りますが、「地球連邦軍」にも粒ぞろいの水陸両用MSたちがいました。

 連邦軍初の水陸両用MSが「RAG-79 アクア・ジム」です。ジオンの水陸両用MSに対抗するため、「RGM-79 ジム」をベースに急遽、開発した機体でした。メカニックデザイン企画「M-MSV」で初登場、アニメでは『機動戦士ガンダムUC』に登場しています。

 このアクア・ジムをベースに、エース用にチューニングを施した機体が「RAG-79-G1 水中型ガンダム」でした。頭部はガンダムになっていますが、型式番号を見ると分かる通り、実はジムのカテゴリーとなっています。アクア・ジムと同じく「M-MSV」が初出でした。

 水中型ガンダムの別称として使われているものに、「ガンダイバー」という名前があります。これはあくまでも別称というのが通例でしょうか。なぜならガンダイバーという名前を持ったガンダムが2種類ほどいるからです。

 そのひとつが『SDコマンド戦記 G-ARMS』などに登場する「GDV-178 ガンダイバー」で、「RX-178 ガンダムMk-II」をベースにしたSDキャラクターになります。世代の人たちには一番知名度の高いガンダイバーでしょうか。

 もうひとつがアニメ『SDガンダムフォース』に登場した「ガンダイバー」で、こちらは「RGZ-91 リ・ガズィ」がベースのSDキャラクターでした。ちなみにアニメ『ガンダムビルドダイバーズ』では、「GBN」のゲームマスター「カツラギ」のアバターとして使用されています。

 アクア・ジムとはまた別に、水中に対応した機体として開発されたのが「RGM-79U ジム・スループ」でした。メカニックデザイン企画「MSV-R」が初出です。

「RB-79 ボール」をベースにした機体もいくつかありました。マンガ『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』(著:MEIMU/原作:矢立肇、富野由悠季/KADOKAWA)などに登場した「RB-79N フィッシュアイ」、メカニックデザイン企画「F.M.S.」が初出の「RMB-79 フロッグ・ボール」などです。

 そして「一年戦争」終結後の連邦軍が開発した水陸両用MSは、いずれも「MS-06 ザクII」をベースにした改良機でした。

 そのひとつが『機動戦士Zガンダム』に登場した、「RX-106M(MS-06M) マリン・ハイザック」です。外見は一年戦争時にジオンが開発した「MS-06M ザク・マリンタイプ」と変わりませんが、全天周囲モニターやリニアシートを導入して性能が向上しています。

 異なる設定がいくつかありますが、ザクIIのパーツを流用しながらも「RMS-106 ハイザック」の系譜の機体として完成したという形でしょうか。いずれにしても少数が量産されていたようです。

『機動戦士ガンダムZZ』や『機動戦士ガンダムUC』に登場したのが、「RMS-192M ザク・マリナー」で、ザク・マリンタイプをベースに開発され、より原型機のザクIIに近い外見となりました。皮肉にもアニメ登場時は、いずれもジオン側に奪取されて使用されています。

「ZZ-MSV」に分類されているのが「RMS-188MD ザク・ダイバー」です。他の機体と運用目的が少々異なり、深海作業用に開発されて潜航能力に特化した機体となりました。ザク・マリナー同様「ジャブロー」で開発したという設定です。

 こうして並べていくと、ジオン水泳部に比べて連邦軍は平凡なラインナップといえるでしょう。それはなぜか、探っていくと、そこに連邦軍の海洋戦略が透けて見えてきました。

■連邦とジオンでまったく真逆だった海洋戦略

240902-eff-02.jpg,連邦生まれのザクながら、アニメ登場時は「ジオン側に奪取されて使用されている」ので結局は敵役。「HG 1/144 ザク・マリナー」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 ジオンが水陸両用MSの開発に注力した要因は、地球連邦軍本部ジャブローへの進攻を念頭に入れていたというのが現在、一般的に考察されている定説です。

 もともと地球への「コロニー落とし」による攻撃で、ジオンの戦争は終わる予定でした。ところがさまざまな思惑からか、ここで戦争終結とはいかず、ジオンの地球侵攻作戦が始まったというわけです。

 そして地球に進攻するに至って、地表の7割を占める「海」での戦闘を視野に入れなければならなくなりました。しかし宇宙に住む「スペースノイド」であるジオンにとって海は未知の領域です。そこで連邦軍基地から奪取した潜水艦を自軍戦力にした、というのが現在語られている通例でしょうか。

 ちなみにこの「連邦軍から潜水艦を鹵獲した」という設定が一般的になったのは、ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』シリーズで使用されて以降です。それまではいくつかの異なった説が各所で紹介されていました。

 こうして海洋戦力となる潜水艦を手に入れたジオンは、続けて搭載する水陸両用MSの開発に着手します。その最大の理由は「ジャブローへの進攻」でした。なぜならジャブローはアマゾン川流域に存在すると噂されており、対空装備が万全である以上、水中からの侵入の方が容易だからです。

 それゆえにジオンの水陸両用MSは短期間に多くの機体を生み出しました。単純に型式番号だけを見ても、10種類もの水陸両用MSを開発しています。これに「アッグシリーズ」といわれる特殊なMSもいるわけですから、ジオンのジャブロー進攻は地上での最大目標だったといえるでしょう。

 一方の連邦軍はどうだったのでしょうか。実のところ、海での戦闘には注力していなかったと考えられます。悪くいえば「あきらめていた」といえるかもしれません。もちろん、これには理由があります。

 それは国力のないジオン相手に、同じ戦略をとる必要がないからでしょうか。そして、本丸である宇宙での戦いを重視して、戦略プランを一本化していたわけです。それゆえに地上での最大の反攻作戦は、宇宙に物資を送っていた鉱山基地のせん滅である「オデッサ作戦」のみだったのでしょう。

 国力のない、つまり兵員の少ないジオンには海洋戦力を整えたとしても、地球の海は征服するには広すぎたということでしょうか。そう考えた連邦軍はジオンとは逆に、海での戦闘に力を割かないという戦略を立てたと考えられます。

 水中の敵に対しての備えは、対潜能力を持った「ドン・エスカルゴ」といった攻撃機も存分に数があり、まず十分といえる状態でした。その点で考えると、陸上でのMSに比べて、水中のMSは脅威に思えなかったのかもしれません。

 それゆえに連邦軍の水陸両用MSの数は少なく、一年戦争中にノウハウを貯めたジオン系の水陸両用MSを改良するなどして、戦後も安定して使用したと考えられるでしょう。

 もっとも、この判断によって地球にいたジオン潜水艦隊はほぼ無傷で残ったのかもしれません。そう考えると、『機動戦士ガンダムUC』でやけに水陸両用MSが多かったことにも説得力があるというわけです。

(加々美利治)

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