あれ、セーフ？ 深夜枠とはいえ「やり過ぎ」だった過激マンガ実写化ドラマ

■最終回に登場したキスシーンは合計60回？

　幅広い世代の人が視聴するゴールデンタイムに放送される番組は、コンプライアンス面でのチェックが厳しくなるイメージがあります。しかしその逆に、視聴者層が限られる深夜枠ではちょっと過激な番組が放送されることも珍しくありません。これまで,、そうした深夜枠ならではの利点を存分に生かし、ハードな内容のマンガを実写化されてきました。

●『山田くんと7人の魔女』

　2013年7月にドラマ化された『山田くんと7人の魔女』は、吉河美希先生の同題マンガを原作とした学園ラブコメディーです。主人公の「山田竜（演：山本裕典）」が通う学校には特殊能力を有する7人の「魔女」が存在し、彼はひょんなことから学校イチ成績優秀な「白石うらら（演：西内まりや）」とともに魔女探しに奔走することになります。

　魔女たちの能力は「キス」によって発動するため、原作では毎話のごとくキスシーンが登場していました。もちろんドラマ版でも忠実に再現されており、主人公の山田竜は、ヒロインである白石うららはもちろんのこと、ほかの魔女や同級生の男子、果てはクラスメイトの母親ともキスを交わすことになります。クラスメイトの母親役は女優の阿知波悟美さんで、自分の母親より年上という阿知波さんとのキスシーンについて、山本さんが「今までキスした中で一番柔らかい唇で気持ち良かった」とコメントしていたことも話題になりました。

　ちなみに最終回「魔女封印」に登場したキスシーンは、回想シーンやエンディングも含めると実に60回にもおよびます。はっきりとしたキス以上の場面はありませんでしたが、やはり過激な実写化と呼ぶのにふさわしいのではないでしょうか。

●『君が獣になる前に』

　さの隆先生の傑作ノワールサスペンス『君が獣になる前に』は、過激な内容ながら2024年4月から金曜の深夜枠でドラマ化されました。葬儀会社の社長「神崎一（演：北山宏光）」が、幼なじみの「希堂琴音（演：玉城ティナ）」が起こしたテロ事件の真相を求め、何度もタイムリープするというストーリーです。

　同作の実写化で難しい点は、まず第1話の琴音によるテロシーンの残酷さでしょう。地下鉄の駅で毒ガスが散布されたこのテロは、死者61人、重軽傷者605人、計666人の犠牲者を出し、「“666”The Beast」という名で作中の日本犯罪史に刻まれることとなります。

　毒ガスを吸い、吐血しながら苦しみ倒れていく人びと、その凄惨な光景を平然と見下ろす琴音の姿など、ドラマ版では多少マイルドな表現になっているのかと思いきや、テロの様子が克明に描かれていました。被害者のひとりが、琴音に向かって血をドバッと吐き出すシーンまでしっかりと再現されています。

　言うまでもなく、実際に起きた過去の事件を想起させるセンシティブな題材でもあり、作者であるさの先生も、実写化の話を受けたときにはかなり驚いたというコメントを出していました。

●『ライフ』

　すえのぶけいこ先生の『ライフ』といえば、苛烈なイジメを描いた少女マンガとして有名です。同作は2007年に『ライフ～壮絶なイジメと闘う少女の物語＝』というタイトルでドラマ化されました。

　北乃きいさん演じる主人公「椎葉歩」は、受験に失敗した親友から「あんたなんかいなければよかった」と罵られたことで心を閉ざし、陰鬱な高校生活を送るようになった人物です。同級生の「安西愛海（演：福田沙紀）」によって一時は心を救われるものの、今度は彼女の恋愛トラブルがきっかけで、愛海を中心にイジメを受けることになるのでした。

　あるときは弁当を机にばら撒かれ、またあるときはトイレで頭にモップを押しつけられ……と、歩が受けるイジメの内容はかなり壮絶で、放送当時には「いじめを助長する」「子供が見るには不適切」といった苦情が、放送倫理・番組向上機構（BPO）に殺到したそうです。

　また物語終盤、立場が逆転してイジメっ子だった愛海が逆にイジメられっ子になってしまう展開は、イジメのリアルな実情を描いているとして話題になりました。教室の窓から愛海の机と椅子が投げ捨てられ、「おめーの席ねぇから！」と吐き捨てられるシーンは、知っている人も多いのではないでしょうか。

　直接的な残酷シーンがあるわけではありませんが、視聴者の精神にダメージを与えるという意味で、非常に過激な作品でした。

（ハララ書房）