『装甲騎兵ボトムズ』JR稲城長沼駅に立った「スコープドッグ」 なぜ惹かれるのか
マグミクス / 2020年4月13日 7時50分
■そびえ立つ鋼の威圧感
2020年3月15日、JR南武線稲城長沼駅前の「いなぎペアパーク」に、アニメ『装甲騎兵ボトムズ』に登場したAT(アーマード・トルーパー)「ATM-09-ST スコープドッグ」の実物大モニュメントが設置されました。1984年に初めて姿を現した「スコープドッグ」はなぜ人気を博しているのか、ライターの早川清一朗さんが語ります。
* * *
実物大スコープドッグが製作されたのは、筆者が知る限りでは2004年に倉田光吾郎氏が作り上げた「1/1スコープドッグ ブルーティッシュカスタム」以来、2体目となります。倉田氏が作り上げたスコープドッグを初めて見たとき、4メートルという高さは想像以上に大きく威圧感があり、重厚な鋼の存在感も相まって、「こんなものがヘビーマシンガンを撃ちながら時速80キロで突っ込んできたら、絶対に死ぬ」と感じました。『機甲猟兵メロウリンク』でシュエップス小隊が置かれた状況がいかに絶望的だったのかを改めて思い知らされたのです。当然、稲城長沼のモニュメントの除幕式にも行く気満々だったのですが、残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響で断念せざるを得ませんでした。いつか必ず見に行ってみたいと思います。
さて、「スコープドッグ」が登場した『装甲騎兵ボトムズ』は1984年に放送された作品です。作中での「スコープドッグ」は主人公キリコ・キュービィーの愛機でありながら単なる量産兵器であり、スクラップとなった機体をいくつか組み合わせれば動作する機体を作り上げることができるという、従来の主人公ロボットの概念を覆す存在でした。
主人公ロボットと言えば何らかの理由でそれ1体しかないというのが当たり前。そんな時代に現れた「スコープドッグ」から匂い立つ鋼鉄と戦場の香りは、従来のロボットアニメに食傷気味になっていた世代から強烈な支持を受けたのです。
『ボトムズ』の監督を務めた高橋良輔氏によると「スコープドッグ」のモデルは米軍が使用していたジープで、特殊な兵器と言うよりも、頑強な道具として存在する感じが欲しかったのだそうです。ただ装甲の薄さは気になっていたようで「もっと装甲が欲しいよね。これで戦争には行きたくない」とも語っています。
■ローラーダッシュの迫力
左:原作・監督の高橋良輔氏 右:メカデザインの大河原邦男氏(稲城市経済観光課提供) (C)サンライズ
ローラーダッシュも「スコープドッグ」が従来のロボットとは一線を画す重要な要素でした。強烈な回転音と共に高速で前方にダッシュしてアームパンチで敵ATを撃破するシーンのスピード感は強烈です。方向を変えるときはターンピックを地面に打ち込み強引に軌道を変えるなど、リアルさが追及されていました。
従来のロボットアニメでは、移動するときに地上を走ることが多かったのですが、お世辞にも早そうにも強そうにも見えません。強さを表現するのであれば、ジャンプするか、空を飛ぶ演出に頼ることが多かったのです。
では、地上でのスピード感を演出するにはどうすればいいのかと考えた高橋監督が編み出したのが、ローラーダッシュです。この発明により、ロボットが高速で地上を移動する迫力満点の映像を作ることが可能になったのです。高橋監督は次作『機甲界ガリアン』でもガリアン・ソード(蛇腹剣)を生み出しており、後世の創作作品に、多大な影響を与えています。高橋監督の功績は本当に偉大なものだと言えるでしょう。
さらにはベースとなる機体から、多くのカスタム機を作れるというのも、ロマンを刺激しました。
かつてキリコが所属していた第24メルキア方面軍戦略機甲兵団特殊任務班X-1ことレッドショルダー隊にて考案・採用された高機動戦闘型「ATM-09-STTC スコープドッグ ターボカスタム」は兵装制御用支援型コンピューター「MCA-628」とロケットブースターとグライディングホイールを内蔵した「ジェットローラーダッシュ機構」を装備し、超高速機動戦闘が可能となっていました。OVA『ザ・ラストレッドショルダー』ではキリコと仲間たちが搭乗し、元レッドショルダーが狩る最新鋭AT「ブラッドサッカー」を瞬殺しています。
他にも水上戦闘可能な「マーシィドッグ」や雪上戦闘用の「アバランチドッグ」など、数え上げればキリがありません。状況に応じて武装や装備を自在に変更し、戦い続けることができるのもジープが実際の戦場で便利屋としてさまざまな任務を果たしたことが連想されます。
ただ、駆動に必要なポリマーリンゲル液の気化性と引火性が高く、少しの被弾でも引火・爆発しやすいというのは、自分が乗るとしたら大分厳しい設定かなとは思います。もし選べるのであれば、筆者は「ATM-08-MCスペンディングウルフ」に乗りたいというのが本音です。
(C)サンライズ
(早川清一朗)
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