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【シャーマンキング30周年への情熱(1)】今なお支持される作品、背景にある「価値観」の浸透

マグミクス / 2020年4月13日 12時10分

【シャーマンキング30周年への情熱(1)】今なお支持される作品、背景にある「価値観」の浸透

■単なるバトルもので終わらない、「異色」の少年マンガ

 マンガ『シャーマンキング』が2018年に誕生から20周年を迎え、今なおその盛り上がりが続いています。新型肺炎の影響で各地での開催が中止や延期となってしまいましたが、2019年から全国各地で開催されている原画展「シャーマンキング展」にも、多くの来場者が詰めかけています。2020年は同シリーズをさらに盛り上げる企画が複数進行しています。

 ご存じない方のために説明すると、『シャーマンキング』は1998年に連載がスタートした武井宏之氏のマンガ作品で、2001年にはTVアニメ化もされています。2004年に本編が完結した後も、前日譚や続編、スピンオフ作品が世に送り出され、現在も継続中というビッグタイトルなのです。

「シャーマン」というのは、霊魂と対話したり、彼らを使役したりできる存在。日本でいえば巫女や陰陽師、恐山のイタコなどもシャーマンです。作中でのシャーマンは幽霊や精霊を「持霊(もちれい)」として行動をともにしており、彼らと縁の深い物品(媒介)に霊を降ろすことによって、物理世界に影響を及ぼせるようにします。

 主人公・麻倉葉(あさくら よう)の場合、600年前の武士・阿弥陀丸(あみだまる)が持霊で、生前の愛刀・春雨(はるさめ)に彼を降ろして戦うのですが――。

 戦う……? いったい何と?

 実は、500年に一度「シャーマンファイト」という試合が世界のどこかで開かれるのです。この優勝者をシャーマンキングと呼び、全知全能の「精霊の王」を持霊にして、究極の存在……つまり神になれるといわれているのです。世界中のシャーマンたちがその立場を目指して戦い、代々陰陽師の家系に生まれた葉も例外ではありません。

 本作はこのように、分類上はバトルマンガですが、主人公が戦いを望んでおらず、勝敗にもこだわらず、何事も「なんとかなる」と考えているユルい性格というのが大きな特徴です。そのため、迫力あるバトルシーンは山ほどあるにもかかわらず、作品全体としてあまり重視されていません。

 こうした構造について、作者である武井氏自身も「本作はマイノリティに属している」と述べており、異色であることを認めています。しかし、本編が長期連載であったことは事実で、しかも今また脚光を浴びているというのは、どういうことなのでしょうか?

■連載当時から若い世代に響いていた「価値観」

主人公、麻倉葉と持霊の阿弥陀丸。葉にとって「霊は大切な友達」という考えも、作中の随所で語られる(『シャーマンキング』第7話「SHAMAN ×SHAMAN」より)。 (C)武井宏之/講談社

 連載開始から20年あまり経った現在もなお『シャーマンキング』が支持され、注目を集めている理由は、端的に言えば、当時も今も作品の主張と社会の風潮がリンクしている点が挙げられるでしょう。

 連載当時、武井氏は「周りにないものを描く」ことを意識していたといいます。そのなかでも特に「がむしゃらに頑張らなくていい」ということに重点が置かれ、作中では葉が「なんとかなる」と言って笑っています。これは他人を蹴落としてトップに立つ必要はない、それに固執しなくていいという、バトルマンガのフォーマットに対するアンチテーゼとして、氏が掲げた想いでした。

 現代の学校や会社では、順位にこだわらず「自分の持つ能力をいかに発揮するか」が問われる機会が増えています。そこにやり甲斐や楽しさを覚え、報酬の高さよりも大切だと感じている人もいるそうです。

 また、「責任の重い仕事をしたくない」「メリットがない」「向いていない」といった理由で管理職への昇進を避ける若い世代が増えているともいいます。これは逃避に見えるかも知れませんが、彼らは持っているモノの値段や数よりも、「自分に必要なもの」を厳選することで精神的な幸福を得たいという価値観で、現状に満足しているから望まないと考えることもできます。

 このような価値観は「自分自身のありようが一番大事」とも言い換えられ、『シャーマンキング』の重要な軸と合致します。彼らがマンガのメイン読者層だった小学生~高校生の頃は、その価値観は現在ほど世間に理解されていたとは言えませんが、読者の心には響いていました。彼らの支持によって、『シャーマンキング』は長期連載を成し得たと言えるのではないでしょうか。

 そして時は経ち、当時のファン層の価値観も本作の主張も時代に浸透した現在、再び同作に触れた人には、懐かしさだけでなく新しい解釈や発見もあったことでしょう。そうした喜びが拡散されることで、さらに新しいファンも生み出しています。もし、「読んだことはないがタイトルは知っている」という方は、ぜひ敬遠せず読んでみてください。すんなりと受け入れることができると思います。

 筆者は、20周年を迎えた『シャーマンキング』がこの先さらに10年、20年と続くことを願い、企画に携わる一員としてこの場での連載を開始するに至りました。今後は作品の解説だけでなく、現在進行中の活動や、劇中に登場するシャーマンが現実ではどういったものとして知られているのか……など、さまざまな観点から『シャーマンキング』の魅力を伝えていきます。取り上げて欲しい題材があれば、ぜひ編集部までお聞かせください。

※武井宏之氏による「シャーマンキング」シリーズ最新作『SHAMAN KING THE SUPER STAR』は、講談社「少年マガジンエッジ」(http://magazine-edge.jp/)で連載中。

(タシロハヤト)

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