アムロが一年戦争終結前に戦死 小説版『ガンダム』での正史とは違った運命とは
マグミクス / 2024年12月30日 21時45分
■意外と知られていない小説版アムロの設定
『機動戦士ガンダム』の主人公「アムロ・レイ」の逸話で、アニメ版とは異なる小説版での運命が語られることがあります。この意外と知られていない小説版でのアムロについて、アニメ版と小説版の相違を交えて振り返ってみましょう。
ここでいう「小説版」とは、『ガンダム』がTV放送中に朝日ソノラマ社のレーベル「ソノラマ文庫」のラインナップのひとつとして発行されたものです。第1巻の発行日が1979年11月30日でした。現在では「角川スニーカー文庫」から発売されています。
この小説を書いたのは『ガンダム』の総監督である富野喜幸(現:富野由悠季)さんでした。後に富野さんは「スポンサーに左右されない独自の世界を書きたかった」と述べています。その点からも、小説版は富野さんが意図していた本来のガンダム世界といえるかもしれません。
小説版に登場するアムロは、登場時からアニメ版と大きく異なる点がありました。それはアニメ版では15歳(一説には16歳)の民間人でしたが、小説版では19歳のパイロット候補生。階級は曹長です。そして物語はアムロがコア・ファイターの訓練をするところから始まりました。
ちなみに母艦はホワイトベース級一番艦「ペガサス」です。アニメ版ではペガサス級ホワイトベースですから、まったくの逆といえるでしょう。こうした名称だけの変更点もあれば、アムロのように大幅な設定変更がされたキャラクターもいます。
アムロの設定変更が物語に与えた影響は少なくありません。なぜならアニメ版では民間人だったアムロが戦いを通して成長していくというドラマが主軸のひとつでしたが、小説版ではその部分がオミットされてストーリーがシンプルになったからです。
そのためか物語のテンポも速く、小説版では地球への降下をせずに舞台は宇宙だけになっていました。具体的に説明すると、サイド7での戦闘でアムロは「ガンダム」に乗り込んで「ザク」を撃退、その後は避難民を乗せて脱出するところまでの流れは同じです。
それからルナツーに向かいますが、「シャア・アズナブル」の妨害を受け、「ジオン公国軍」の宇宙拠点「キャリフォルニア・ベース」の「ガルマ・ザビ」率いるガウ部隊との戦闘となりました。これらはすべて宇宙での出来事です。
この戦闘でガルマは戦死、ペガサスはルナツーに到達しました。ルナツーで避難民を下ろしたペガサスは、「レビル将軍」からこれまでの活躍を称賛され、正式に第十三独立部隊として「テキサスコロニー」へと向かうことになります。この時、クルーの昇進も同時に行われてアムロは少尉となりました。
テキサスではシャアのザクと「ララァ・スン」の「エルメス」と交戦します。アムロはここで初めてララァと出会い、感応するもののエルメスを撃墜しました。しかし、この戦闘でガンダムは大破してしまい、アムロはコア・ファイターで脱出します。
最後に宇宙世紀0080、戦争は終わってはいない……という一文で第1巻の物語は幕を閉じました。
■アムロが撃墜されたもっともな理由とは
2024年現在、発売されている角川スニーカー文庫版第3巻カバー。『機動戦士ガンダム III』 著:富野由悠季/イラスト:美樹本晴彦(KADOKAWA)
続いて発行された小説版の第2巻『機動戦士ガンダムII』では、「地球連邦軍」により月のジオン軍拠点「グラナダ」は陥落、「キシリア・ザビ」が撤退するところから物語が始まります。
そのころコア・ファイターで脱出したアムロはサイド6の民間船に救助され、ペガサスの仲間たちと再会を果たしました。そして前回の戦闘で撃破されたペガサスとガンダムの代わりに、ホワイトベース級二番艦(後の記述では三番艦)「ペガサス・J(ジュニア)」と、ガンダム3号機「G3」を受領、新たに「第百二十七独立戦隊」となります。
一方のシャアもキシリアの用意したニュータイプ部隊の指揮官として新型MS(モビルスーツ)「リック・ドム」を受領、「シャリア・ブル」や「クスコ・アル」といったニュータイプを部下に持つことになりました。
このクスコ・アルとアムロの戦いが第2巻の物語の中心となります。またシャアの妹である「セイラ・マス」とアムロが関係を持つというアダルトな展開が用意されていました。
完結編となる小説版第3巻『機動戦士ガンダムIII』では怒涛の展開となっています。ジオンの宇宙要塞「ア・バオア・クー」へと艦隊を進めるレビル将軍。その背後から、宇宙要塞「ソロモン」にいた「ドズル・ザビ」が猛追してきました。ペガサスJはこのドズル艦隊と交戦、ドズルの「ビグ・ザム」をアムロが撃破します。
この後のブリーフィングでペガサス・Jクルーは、戦争を終わらせるためには「ギレン・ザビ」を討つべきだと考えました。その意見にアムロはシャアの協力があればと思うようになります。
一方のシャアも、ギレンがソーラ・レイで連邦軍艦隊ごとキシリアを亡き者にしようとすることを知りました。ここでシャアはアムロと協力してギレンを倒せないかと考えます。偶然にもアムロとシャアの考えは一致しました。
このアムロに呼びかけるため、シャリアは「ブラウ・ブロ」に乗り込みます。ブラウ・ブロの「ゼロ・サイコミュ」が、相手に意志を伝えやすいからでした。しかし、最初のソーラ・レイの発射で状況は一変します。この一撃で消えた数万人の断末魔がニュータイプに強力な圧力をかけました。
その結果、シャリアの説得を聞きながらもアムロは混乱からブラウ・ブロを撃墜します。しかし、その時にシャリアの意識が直撃し、アムロはようやく理解しました。目の前で「ハヤト・コバヤシ」の「ガンキャノン」を撃墜されながらも、アムロはシャアとの停戦を訴えます。
その時、このアムロの行動の変化に気付かずに、シャアの部下「ルロイ・ギリアム」はG3を撃墜しました。散っていったアムロの意志は仲間たちに拡散し、ペガサス・Jはシャアとの同盟を果たします。
一方のルロイは「俺は……とりかえしのつかないことをしてしまった……」と後悔の言葉をつぶやきました。それはかつてのアムロと同じ姿です。結果的にシャアのクーデターは成功をおさめ、戦争が終結したところで小説版は幕を閉じました。
ララァ、クスコ、シャリアといったニュータイプと分かり合えたかもしれないのに撃墜してしまったアムロ、その最期が自分のしてきたことと同じという部分に、アムロの業ともいえるものを感じざる得ません。
(加々美利治)
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