『ガンダム』なぜ放送版と小説版は違う? 富野監督の「読者へのサービス精神」が生んだラスト
マグミクス / 2025年1月16日 7時10分
■「監督によるノベライズが正しい」は誤解?
人気コンテンツであればあるほどネット上にはさまざまな話題が載っているもの。放送から45年の歴史を刻む『機動戦士ガンダム』の話題の多さも続く人気の証といえましょう。
ただし、そんな話題のなかには、作品の制作現場にいた者にとっては「なぜこうなった?」と思わず首をかしげてしまう、いわば「都市伝説」も多数含まれているようです。
先日見かけたのが「主人公のアムロはTVシリーズの最後で死ぬことになっていた」という意味にとれる情報でした。
根拠になっていたのが、シリーズの監督であり原作者としても知られる富野由悠季監督が放送後に執筆出版した小説です。そこではアムロが最後に死んでいます。
なるほど、視聴者で読者の方がそう思うのは仕方が無いかもしれません。
しかし、いわゆるノベライズと、放送した「本編」とは別だと知って頂きたいのです。
商業アニメ、特に当時の制作会社オリジナル作品は、個人名の「原作」表記があっても、その内容決定には多くのスタッフが参加しており、ひとりのクリエイターが決めてしまうものではありません。
『ガンダム』本編の物語は、シリーズ構成の星山博之さんや松崎健一さんをはじめとする脚本家、その手前で、企画の矢立肇氏等々、多くの方々のディスカッションを監督がまとめることでできあがりました。
しかし小説版は、あくまでも本編が放送された後に富野監督個人が「こういう終わりもありじゃないのか」という発想で書いているものです。
その証拠として、富野監督と大変近しいスタッフは、会話のなかで「だってTVと同じじゃ(読者は)つまんないじゃない」という、監督らしいサービース精神あふれた言葉を聞いていますから。
ノベライズ小説には著作者個人の作家性が反映されます。かくいう私も、かつて書かせて頂いたノベライズは本編とかなり変えています。しかし、きちんと正規流通を通して販売されているノベライズは、版権元制作会社の許諾を受けていますので、そういう観点からいえば「公式」ではあります。
本編とノベライズ、どちらがお好きかはユーザーが決めてくださればいいことです。だからといって「原作者が書いた方が正しい」と決めつけるのは少々考えが浅いように私には思えますし、あたかもそれが「正解である」とネット等に表現すると、伝言ゲームで事実が曲がって伝わり「迷惑な都市伝説」になりますので、どうかご注意くださいね。
【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。
2017年から、認定NPO法人・アニメ、特撮アーカイブ機構『ATAC』研究員として、アニメーションのアーカイブ活動にも参加中。
(風間洋(河原よしえ))
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