『ファイプロG』発売から21年。プロレス愛あふれるストーリーモードを体感せよ!
マグミクス / 2020年6月20日 15時10分
■道場に入門して大舞台を目指す。主人公の背景も細かく設定可能
プロレスというものを1試合、1試合の「点」ではなく、まるで大河ドラマを見るように壮大な物語を「線」で結んでいくものととらえ、長年見続けているマニアの方も多いと思います。過去に発売されたプロレスゲームのなかでも、そのような世界観を最も適切に表現したゲームは、『ファイヤープロレスリングG』(以下、ファイプロG)といえるかもしれません。
同作は今から21年前、1999年6月24日にヒューマンより発売されたプレイステーション用ソフト。数多のプロレス・ゲームのなかで「ファイプロ」シリーズを最高傑作として挙げる方は少なくないと思いますが、そのなかでも筆者が個人的に好きなのが、『ファイプロG』の「ファイティングロード」。このモードは、ひとりの若手レスラー「山下裕二(初期設定の名前)」として「若元一徹道場」に入門し、ライバルの「坂上浩一」とともに明日のメインイベンターを目指していく……いうストーリーですが、やりこめばやりこむほど唸らされる、奥深さを感じさせるものとなっています。
最初の段階で主人公の名前や生年月日、そしてアマレスや空手、柔道などのバックボーンが選択可能、「なし」や「不良」という選択肢まで存在するという芸の細かさです。この最初の設定によって主人公が使用する技やパラメーターの数字が変化する点も、マニア心をくすぐります。
この『ファイプロG』が発売された1999年といえば、前年にアントニオ猪木(敬称略)が引退し、「グレイシー柔術」や「UFC」、「プライド」などの総合格闘技が台頭した時代。プロレス業界も混沌としたムードだったのですが、このゲームはそんな空気感を見事に表現。主人公の台詞の選択や使用する技によって、所属団体やプロレスラーとしての人生も変化していくなど、今から21年前に発売されたゲームであるにもかかわらず、飽きのこない魅力を感じさせてくれます。
新型コロナウイルスの影響で「ステイホーム」が推奨されるなか、筆者は久々に『ファイヤープロレスリングG』をプレイしました。ストーリーのなかで起こる出来事や事件などは、当時のプロレス業界の流れを、ファンタジーを交えながら忠実に再現。「VIEW JAPAN」編で海外遠征後の「FWO」入り、あの「99年1・4」の橋本 VS 小川戦を彷彿とさせる「野川康哉」との抗争、その試合に向けて「ハイクラス」の「桧垣誠」から受ける特訓など、マニアにとってはなかなかに「胸熱」な展開です。
■プロレス界混沌の時代に発売、マニア納得の胸熱展開
「ファイヤープロレスリング」の原点、PCエンジン向けに発売された第1作『ファイヤープロレスリング コンビネーションタッグ』(ヒューマン)
また、「OLIVE JAPAN」編で「R・Y・U」に移籍した際、社長のグレート司馬から「二度とウチのリングには上げない」と冷たく言い放たれるあたりは「SWS」を、「新生IW』で一度引退した「沖田勝志』のユニット「JEN」に参加し、「VIEW JAPAN』のリングに乱入、「ハリケーン力丸」への対戦要求など、「あー、そういえば当時のプロレスってこんなコトあったなぁ」などと、感慨にも似た想いがアタマをよぎったりします。
アメリカ編での「赤FWO」と「白FWO」の抗争や「UWH」編での「GONGS」と「Uインテル」、「梶原組」の三派への分裂と、その後の「キャッスル」や「ハイクラス」、「格闘探偵団バトレーション」への細分化。パッケージに象徴されるようなプロレス界の宿敵、「ニクソン・ステイシー」との一戦など、懐かしい展開も待ち受けています。
とはいえ、この『ファイプロG』。「ファイティングロード」の途中で選択する台詞だけでなく、試合展開などもストーリーに反映されるようで、同じ技ばかりを使った「塩試合」や、往年のカール・ゴッチの如く「秒殺試合」を繰り返していると、たとえ全試合・全勝でストーリーを終えたとしても最終的にはヒザや腰を壊したりしてヒッソリと引退。バッド・エンディングになってしまいます。
このあたりは、若元道場で一徹先生から告げられる「レスラーの闘いの場は『観客に囲まれた』リングの上だということを決して忘れるな!」という教えのとおり。試合で何回か負けたとしても観客を沸かせた場合はバッドエンディングにならない……といった部分も、ゲーム製作者のプロレス愛を感じさせるものです。この点は救いのない終わり方をする『ファイヤープロレスリングSPECIAL』の「チャンピオンロード」とは大きく異なる部分でしょう。
全コースをクリアするのは簡単ではない『ファイプロG』ですが、現在もなお、間違いなくプロレス好きにオススメできるゲームです。
(渡辺まこと)
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