お正月といえば『人生ゲーム』。誕生から52年、“人生山あり谷あり”を家族で味わった
マグミクス / 2020年12月29日 7時10分
■架空の人生に、大人も子供も大熱狂
『人生ゲーム』」といえば、誰もが一度は遊んだことのある大人気ボードゲーム。通常バージョンの他にも「M&A」「極辛」「平成版」などのテーマ性を持ったバージョンや、お笑い界とのコラボなど、これまでさまざまなバリエーションが登場し、2020年の最新版『人生ゲーム ジャンボドリーム』は歴代66作目という、超ロングヒットシリーズです。
もともとはアメリカで生まれたゲームで、タカラトミー(当時タカラ)から国内発売されたのは1968年9月です。時は高度経済成長期のまっただなか。大人は日々忙しく、子供は普段はあまり構ってもらえなかったのですが、お正月だけは“親に一緒に遊んでもらえる特別な時間”という時代でした。その特別な時間に登場したのが、『人生ゲーム』。お正月のごちそうを食べた後、こたつの上を片づけて広げる『人生ゲーム』は、夢の時間を約束してくれる、まさに魔法のアイテムとなりました。
『人生ゲーム』のルールは単純で、ルーレットを回して出た数の分だけコマを進め、止まったマスの指示に従いながらゴールを目指すという、おなじみのすごろく形式です。けれども、発売当初のCMで「♪人生、山あり谷あり~」と歌われた通り、マス目では人生の悲喜こもごもが待っているのです。
初代『人生ゲーム』はアメリカ版の直訳だったため、マス目に書かれている出来事も昭和の庶民のこたつの上では、「どなたの人生!?」的な内容が多かったのですが、実際の人生でもまだ入り口の子供たちにとっては、「人生って、なんだかすごそう!」と思わせてくれるものでもありました。
マス目に止まるたびに「石油が出た!」「牧場のあとつぎになった!」「やった!金鉱発見!」などと大騒ぎしたものです。大人もきっと、自分の人生には訪れそうもない架空の人生を楽しんでいたのでしょうね。
■大人にはやや切なかった「人生はマネー!」
『人生ゲーム』内での通貨は、初代から変わらずドル札が使われている。画像は2016年に発売されたスタンダード版7代目『人生ゲーム』 (C)TOMY (C) 1968,2016 Hasbro. All Rights
『人生ゲーム』の勝敗はゴール順ではなく、「最後にお金をいくら持っているか」で決まります。さすがはアメリカ発祥といった感じですね。ゲームの始めには銀行役を決めますが、大変な役回りかと思いきや、子供たちは意外にもやりたがりました。自分がお金を渡す、支払ってもらう(少々、巻き上げる感覚で)ということで、なんだか大人になった感じがしたのでしょう。
すべてのマス目の出来事には必ずお金が絡んでくるため、みんな、手持ちのお金を気にしつつ、必死に祈りながらルーレットを回します。牧場のあとつぎになったら$10万2000ドルもらえるけれど、ヘリコプターを買ったら4万ドル払わなければならない……。運まかせとはいえ大きな差が出るため、ルーレットを回す手に力が入りすぎてひっかかり、ブーイングを浴びることもよくありました。マス目によっては子供が意味もわからず株を買ってみたり(当時は大人でもあまり株には縁がありませんでしたが)、お金が足りなくなって借金して、こちらも意味もわからず約束手形をもらったり。
さらに、子供が生まれると全員からお祝い金をもらえ、ゴール後には1人あたりいくら……と精算されるため、子供たちが「また子供がうまれた~!」と子だくさんを大喜びするシュールな光景が繰り広げられました。
子供の頃は、それぞれのマス目のイベントがひたすら楽しく、ゴール後のお金の計算もワクワクした『人生ゲーム』でしたが、今あらためて思うと、このゲームの根幹は「人生はマネー」の教えだったんですね。なんだか夢がない……と思ってしまいますが、でも一周回ってそれが正解かも。一緒に遊んでくれていた大人たちも、爆笑しながらも時には身につまされて切ない場面もあったかもしれませんが、ゲームの最中にも、子供たちのこれからの人生に失敗がないようにと願ってくれていたはずです。
(C) 1968,2020 Hasbro. All Rights Reserved. (C)TOMY
(古屋啓子)
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