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内山昂輝がコロナ禍の現場で考えること「どんな状況下でもメリットに目を向けたい」

マグミクス / 2022年6月2日 11時30分

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■コロナ禍で変わらざるを得ないアフレコスタイル、一方メリットもあって…

「数字にとらわれすぎるのは良くないですが、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』の興行収入をみると、普段はあまりアニメを見ない人たちが『最新のアニメってこんなに面白いんだ。じゃあ、他の話題作も見てみようかな』と、興味を持ってくれているのを感じます」

 そう語るのは声優の内山昂輝さん。『鬼滅の刃』では「那田蜘蛛山編」に登場する鬼・累を、『呪術廻戦』では都立呪術高専2年生・狗巻棘を演じる内山さんは、近年のアニメブームをダイレクトに体感し、その状況を「ポジティブにとらえている」と言います。

 幼い頃から芸能界で活動し、時代の流れを冷静に見つめてきた内山さんだからこそ、現在の状況を一過性のブームではないと感じているのでしょう。コロナ禍で様変わりしたアフレコスタイルによる若手育成の難しさなど、声優業界が抱える新たな課題も多いなか、第一線で活動する声優が今、率直に思っていることとは──。
(取材・文:とみたまい/撮影:藤田亜弓/編集:沖本茂義)

『黒の召喚士』 (C) 迷井豆腐・オーバーラップ/黒の召喚士製作委員会

●最新主演作は「異世界転生もの」

 2022年7月より放送されるTVアニメ『黒の召喚士』にて、記憶をなくし異世界に転生した主人公・ケルヴィンを演じる内山さん。原作となる『黒の召喚士』(著者:迷井豆腐)は小説投稿サイト「小説家になろう」で連載され、シリーズ累計140万部以上を記録する人気作品です。

 現代社会でごく平凡に暮らしていた主人公が突如異世界に転生・召喚され、勇者や救い主として活躍する、いわゆる「異世界転生もの」は今やライトノベルの定番ですが、なぜこれほどまでに多くの人に受け入れられるジャンルとなったのでしょうか。

「理由のひとつに、『自分の実人生とは違う世界を楽しめる』ことがあるんじゃないかと思います。でもこれって実は、昔から続く『ファンタジーもの』にも同じことが言えるんですよね。『異世界に転生する』という今っぽい表現の作品は増えているのかもしれませんが、ファンタジーという普遍的なジャンルとしては、ずっと変わっていないと僕は思います」

内山昂輝さん

 内山さんが言うように、異世界転生物語は「何らかの理由で異世界に飛ばされる」という導入のインパクトが強く、以降はなじみの深い冒険譚や成長譚が展開されることが多い印象です。そういったなかで、異世界転生ジャンルとして内山さんが感じる『黒の召喚士』の魅力とは?

「物語の導入が独特ですよね。前世から転生する作品の場合、『前世でできなかったことを果たしたい』とか『前世をやり直したい』といった動機が主人公を突き動かすことが多いと思うのですが、ケルヴィンは『前世の記憶と引き換えに、強力なスキルを獲得したい』と望んだ。言うなれば、本当に1からのスタートを自ら望んでいるんです。そこが個性的だし、その後、冒険を進めていく展開はRPGを楽しむプレイヤーの心境に近いものがあるんじゃないかと感じました」

■「少人数収録」だからこそできる作品づくりがある

内山昂輝さん

「前世の記憶をなげうってでも強力なスキルを手にしたい」というケルヴィンは、出会う相手が強いほど興奮する戦闘狂。戦闘が始まると豹変する様子がケルヴィンというキャラクターのフックになるだろうと内山さんは考え、丁寧に演じるよう意識していたといいます。

『黒の召喚士』で内山さんが演じるケルヴィン

「他者と適度にコミュニケーションをとる普段のケルヴィンと、バトルが始まって強い敵が出てきたときにワクワクしているケルヴィンのギャップは、完成途中の映像でも印象的に描かれていました。アフレコの際は、戦闘が始まると笑みがこぼれてしまうようなケルヴィンのクレイジーな側面を『派手な表現で積極的に演じてほしい』と言われていたので、思いきった表現も投入して演じました」

『黒の召喚士』では、同じシーンで会話するキャラクターについて、できるだけ一緒の時間にアフレコができるよう、現場が調整していたそうですが、それでもコロナ以前のように大人数でのアフレコが不可能となっている現在。相手と直接芝居を掛け合えない、新人声優が先輩の芝居を学ぶ機会が減ったというようなデメリットばかりが浮き彫りにされがちですが、内山さんは「どんな状況下でもメリットに目を向けたい」と語ります。
「以前は大勢で録っていたので、どうしてもメインキャラクターがからむ部分に全体のリソースを集中せざるを得なかったんです。その点、今は少人数で分けて収録するため、その話数のメインではないキャラクターのディテールも詰めやすい状況がある気がする。やり方は人それぞれだろうけど、『このセリフはこういう言い方でいいですか? ここの設定はどうなっていますか?』といったように、制作サイドとコミュニケーションをとるタイミングが増えて、僕はやりやすくなったと感じています。今後この状況が緩和されて以前のスタイルに近づいていったとしても、今のやり方の良い部分はしっかりと残すべきだと思います」

内山昂輝さん

 この言葉からもわかるように、これまでも内山さんは声優の立場からアニメ業界を俯瞰し、自分なりの考えを示してきました。数年前にインタビューした際には、「声優は『作る側』ではあるけれど『製作する側』ではないため、自分ではどうすることもできずに、業界の流れや資本に動かされる側面がある」(『声優男子。』2019 Winterより)と話していた内山さん。そんな彼が感じている、現在の業界の流れとは?

「ここ数年で言うと、やはり『鬼滅の刃』の功績が大きかったのではないでしょうか。ゴールデンタイムなどに放送されていたわけではないTVアニメ作品の、なおかつ続編が劇場版として公開され、日本映画の興行収入を塗り替えるほどの人気になったこと……業界の片隅にいる者として感じる空気感ではありますけど、『魅力的な原作があって、それを真摯に映像化したら、これほど多くの人に劇場で観てもらえて注目されるんだ』という成功例ができたことで、業界全体の仕事への考え方に良い影響を与えた気がします。その流れに『呪術廻戦』も見事に続いて、ますますマンガやアニメに新たに興味を持ってくれる人が増えたと思うので、とてもポジティブな流れだととらえています」

内山昂輝さん

『鬼滅の刃』にも『呪術廻戦』にも出演しているという意味ではまさに流れの渦中にいる内山さんですが、声優として望むのは「自分が視聴者として楽しめるような『面白い』作品に、キャストとして関わっていたい」というシンプルな思いだけとのこと。

「なにが『面白い』かというのは……基本的にアニメの場合、ストーリーが大事なのはもちろんですが、映像の力が観客の心を動かすと僕は思っているんです。作画やキャラクターデザイン、その他のさまざまな作業を含めて、土台となる画が強いものでないと、声優がいくら頑張って熱演したところで限界があるというのが僕の経験則なので……。ですから、面白い原作、あるいは優れた脚本家が書くオリジナルアニメのシナリオと、魅力的な映像を作り出す会社が組み合わさったら、『素晴らしい土台ができたな』と感じてのびのびと演じることができる。そういった作品との出会いが続くかどうかは、僕自身ではどうしようもないところではあるし、実際のアフレコ中はそんなことは頭になくて、ただセリフをどうするか考えてるだけなんですけど。これからも幸福な出会いを信じて、ひとつひとつの作品にしっかりと向き合おうと思っています」

(とみたまい)

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