避難所運営が不可能な市町村も… その時、都道府県がすべきこと
毎日新聞 / 2025年1月14日 11時17分
今月17日で、阪神大震災の発生から30年となります。当時、被災者は寒い中で学校の体育館などに身を寄せ、雑魚寝が当たり前でした。そんな光景は、昨年の能登半島地震の被災地でも見られましたが、同じてつを踏まないようにしているのが群馬県です。
災害社会工学の専門家として、県に助言してきた金井昌信・群馬大大学院教授は「市町村によっては防災業務の実施は不可能になっている」と指摘します。どういうことなのか、話を聞きました。
「災害の多くで避難に失敗」
――「自然災害による死者『ゼロ』」を実現するため、群馬県は2021年に基本的な考え方となる「群馬県避難ビジョン」をまとめましたね。
◆災害時の避難のあり方を体系化しました。それに基づいて、県として県内35市町村をどう支援していけばいいのかという考えが、ビジョンの根本にあります。
なぜ、避難が重要かというと、国内ではこれまでに災害が相次いでいますが、多くで避難に失敗しています。特に、風水害ではそうです。ただ、死者がそれほど出ていない例が多いだけなんです。土砂災害や津波の場合、避難に失敗して逃げ遅れると死んでしまいます。
風水害でたまたま死者がいなくても、次も大丈夫だとは限りません。それで、群馬県は県として、きちんと対応することになったのです。
――災害によっては、確かに避難ができていれば救われた命がありました。
◆先ほど申し上げた「避難」というキーワードには、風水害が起こる前の段階の早めに実施する「事前避難」から、災害が起こりそうだった時の最後に命を守るための行動までをひっくるめています。
でも、ほとんどの人は避難というと、能登半島地震のように、数カ月間の避難生活をイメージするんです。「緊急避難と避難生活は違う」というところからビジョンでは位置づけています。緊急避難についても、避難生活についてもきちんと検討しました。
――そもそも、県に避難所の運営チームがなぜ必要なのでしょうか。
◆現在の防災体制に関することを定めた災害救助法の枠組み上、被災前も被災後も全て市町村が中心となって防災業務をしなければならないことになっています。そうなると、過疎化が進むような小さい町村でも被災したら、横浜市のように大きな市と同じように全部自分でやれって言われているわけです。もう不可能ですよね。
住民は若い人がいなくて高齢者ばかり。そういう町村が群馬県内にもあります。それぞれで頑張るのではなく、ビジョンでは県内の35市町村みんなで事前の準備からし始めることを定めています。さらに、いざという時も、県の号令の下で市町村域を越えて広域の連携や支援ができるような形を目指しています。
――都道府県は、避難所の運営でどんな支援をすればいいのでしょうか。
◆群馬県ではビジョンを検討する中で、専門家から「避難所にベッドと食事、トイレを確実にすぐに届けないと、関連死を減らすことはできない」という意見が出されました。
それを踏まえ、被災直後からオール群馬でそうした救援物資をどう確保するのか、そのためにそれぞれの市町村が日ごろから、どこにどれくらい備えておけばよいのかを検討してきました。
被災したことがない市町村は、避難所をうまく運営できないでしょう。それなりの規模の市町村は、他の地域で災害が起きたときに支援のために職員を派遣しています。そういう知見を県内で共有しながら、具体的にどういう点に注意して避難所を運営すべきかなどを、住民に携わってもらうことを前提にマニュアルにまとめています。
特に規模が小さな市町村は、地域防災計画も県の計画をまねして、主語を「群馬県」から「××村」と変えたくらいで中身が伴っていません。義務化されているから作っている市町村が多いわけです。それだと災害時は役に立ちません。
それでマニュアルでは、オール群馬で使えるような内容にしています。その中には住民がやるべきことを明記しつつも、被災した市町村だけでは頑張れない時は周りが支援し、県がそれを調整する、そういう仕組みにしています。
都道府県は主体的に裏方になって、支援のために被災していない市町村といろいろ調整してあげないといけない。そのための手間をかけられるはずなのです。【聞き手・砂押健太】
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