「不開示もうやめて」 赤木さん妻、遺影手にし涙 森友文書判決
毎日新聞 / 2025年1月30日 20時37分
なぜ夫は死に追い込まれたのか。森友学園への国有地売却を巡る公文書改ざん問題で、赤木俊夫さん(当時54歳)の妻雅子さん(53)は、司法の場で明らかにしようとしてきた。文書開示を巡り国側の主張を真っ向から否定した30日の大阪高裁判決。真相解明に向けて一歩進むことになり、雅子さんは「不開示はもうやめてほしい」と訴えた。
この日、法廷で裁判長が主文を言い渡すと、雅子さんは隣に座った弁護士と握手した。左手で顔を覆い続け、目を赤くした。閉廷後、取材に応じた際には夫の遺影をしっかりと握り、「落ち込んだこともあったが励まされ、なんとかやってこれた。苦労が報われた」と語った。
一連の問題が表面化したのは8年前。財務省近畿財務局が小学校の新設を計画していた森友学園に対し、格安で国有地(大阪府豊中市)を売却していたことの発覚が始まりだった。
小学校の名誉校長には安倍晋三首相(当時)の妻昭恵氏が一時就任していたことから、野党は「首相へのそんたくだ」と追及。安倍氏は「私や妻が関係していたら首相も国会議員も辞める」と反論した。
国会が紛糾するさなか、財務省は売却に関連する文書の改ざんに手を染めた。検証結果によると、当時の財務省理財局長の佐川宣寿氏が主導し、昭恵氏の名前を削除するなどしていた。その目的について「国会審議の紛糾を避けるため」とされた。
改ざんにも加担させられていた赤木さん。2018年3月に自ら命を絶った。残した手記には「うそにうそを塗り重ねるという通常ではあり得ない対応」とつづられていた。
公務員の仕事を誇りにし、きちょうめんだった夫。雅子さんは一つのファイルが残されているのを知る。「赤木ファイル」だ。国や佐川氏を提訴した別の訴訟の中で国側から開示された。全518ページにわたり、改ざんに抵抗する財務局に対し、財務省が削除や修正を指示するメールなどがあった。
ただ、改ざんの発案者や動機は何なのか定かではない。「詳細が明らかにならなければ、夫がどれだけ苦しんだのか分からない」。さらなる解明に向けて着目したのが財務省が捜査で提出した文書だった。
1審判決が言い渡された法廷ではしばらく立ち上がれなかった。これを覆した高裁判決が重視したのは、「原則公開」とする情報公開法の趣旨だった。文書の存否すら明らかにしない対応は「例外的」だとし、国側の主張を一蹴した。
わずか10ページの高裁判決だった。赤木さんの代理人を務める坂本団(まどか)弁護士は判決後、「当たり前のことを当たり前に書いている。国の主張や理屈が話にならないということだ」と批判した。そのうえで「公開が基本だとする姿勢に立ち返ってほしい」と注文を付けた。
新たな文書開示に向け、雅子さん側にとっては弾みになる判決。生越(おごし)照幸弁護士は「赤木ファイルはすでにあるが、改ざんに至る意思決定のほか、財務省と財務局の指示の流れが詳しく分かるようになれば、我々の目的に近づくのではないか」と語った。
ただ、この訴訟は国が上告することでまだ続く可能性がある一方、判決が確定しても完全な形で文書が開示されないことも考えられる。
雅子さんは訴える。「行政文書は国民のもののはずだが、開示しなかったり、黒塗りしたりするのが公務員の仕事なのか。何のための改ざんだったのか知りたい」【土田暁彦、高良駿輔、井手千夏】
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