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南海トラフだけじゃない「京都」に潜む大地震のリスク『花折断層』とは?最大震度7・負傷者最大6万人以上か 専門家は"京都らしい街並み"のリスクを指摘

MBSニュース / 2024年9月4日 11時21分

 南海トラフ巨大地震以外にも関西に潜む大地震のリスクがあります。最大震度7を観測すると言われている活断層「花折断層」(はなおれだんそう)です。その被害想定とは一体どのようなものなのか、取材しました。

8月8日の地震 南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」初めて発表

 8月8日、宮崎県を襲った最大震度6弱の地震。震源は日向灘で地震の規模を示すマグニチュードは7.1。気象庁は南海トラフ地震臨時情報の「巨大地震注意」を初めて発表しました。

 関西でも海水浴場が相次いで閉鎖されたほか、非常食が一時、品薄となるなど、巨大地震と津波への不安が広がりました。しかし、関西に潜む大地震のリスクは南海トラフだけではありません。

京都にある「花折断層」 被害想定は死者最大4660人

 今年5月、京都市役所前で行われた市民向けの防災イベント。“ある活断層”への注意が呼びかけられていました。

 (京都市消防局の職員)「京都で地震を起こす断層をご存じですか?花折断層というのが一番大きい断層で。(最大)震度でいえば震度7、能登半島地震と同じくらいの地震」

 花折断層は京都市左京区にある吉田山の西側を先端とする活断層です。断層は京大農学部のグラウンドを通って、市街地を北北東に横切り、三千院がある大原へ。そこから比良山系を抜けて滋賀県高島市まで全長は約47kmに及びます。京都府によりますと、想定される最大のマグニチュードは7.5で、その場合、京都市内では震度7を観測すると言われています。

 そして今年4月、府は新たに花折断層による地震の被害想定を発表しました。
 
 死者(最大)4660人、負傷者(最大)6万830人。

“京都らしさ”の木造家屋がリスク「住宅が密集する街の構造が延焼に拍車をかける」

 なぜ、これほど大きな被害が予測されているのでしょうか。防災学の専門家である牧紀男教授は、京都の街並みにその理由があるといいます。

 (京都大学防災研究所・牧紀男教授)「“京都らしい景色”でもあるのですが、やはり地震のときには火がどんどんと次に移って止まらない」

 牧教授がリスクとして指摘するのは町家などの木造家屋です。“京都らしさ”の象徴とも言えますが、大地震が起きれば火災が広がる恐れがあります。さらに…

 (牧紀男教授)「火災は広い大きな通りにいくと。それから先には飛び越えていかないんです、燃えるものがなくなるので。この道を見ていただくと約3mで、ここの木造住宅で火災が起きると、向かい側の家にも広がっていってしまう」
 
 住宅が密集する街の構造が延焼に拍車をかけるといい、府の被害想定でも焼失する建物の数は最大2万3500棟にのぼるとされています。火災による被害を拡大させる要因は他にもあります。牧教授と街を歩いていくと…

 (牧紀男教授)「家の入り口みたいですね、たぶん路地ですね。ここが地震で壊れてしまうと、この奥に住む人は外に出て来られない」

 京都でよく見られる家と家の間を通る小さな路地。幅は1mほどで進んでいくと複数の住宅が軒を連ねています。こうした路地は「袋路」と呼ばれ、奥は行き止まりになっていて火災の際に逃げ遅れが発生しやすいといいます。

 (牧紀男教授)「火災が迫ってくると、建物は大丈夫でも出口が塞がれてしまって、逃げられなくて命を落とすと。それが大変心配だなと」

最大37万人と想定される「帰宅困難者」京都市は一時滞在施設を増設へ

 また、懸念は火災だけではありません。大勢の観光客でにぎわう京都。地震が起きたときに心配されるのが多数の「帰宅困難者」です。京都市は最大37万人もの数を想定しています。帰宅困難者にどう対応するか。行政と宿泊施設が対策を始めています。

 (市の職員)「発災から1時間後をめどに開設の準備をしていただきまして、『一時滞在施設の開設をお願いできますか?』という依頼を出させていただきます」

 この日、市の職員が訪れたのは京都駅近くのホテル。帰宅困難者などのための「一時滞在施設」に新たに指定されたことを受け、災害が起きた際に開放される朝食会場などを見学しました。

 (市の職員)「何人ぐらい入りますか?収容人数は」
 (ホテルの社員)「87席あるんですけれども、宿泊のお客さまとの兼ね合いもあります」

 ただ、京都市によりますと、こうした一時滞在施設は7月末時点でまだ123か所で、さらに数を増やすべく今後も事業者らに協力を求めていく方針です。

「1週間~10日は地元で助け合わないと」地震で孤立集落となる恐れ…備え進める地域

 一方、市の中心部以外でも強い危機感を持つ地域があります。花折断層が通る左京区の大原です。今年6月、住民らが集まったのは地区にある教育関連施設。新たに避難所として指定され、飲料水や非常食など備蓄品を運び込んでいました。

 (住民)「飲料水。アルミ缶のボトルです。490mL入りのボトル缶が24本入っています。大原は道路が寸断されたときに、行政が来るのに時間かかるだろうと」

 市の中心部から大原に向かう道は山道の2本だけ。地震で土砂崩れなどが起き道路が寸断されれば、孤立集落になる恐れがあるのです。

 (住民)「震度7の時の災害の状況を想定してどんな状況になるのか。寸断されたときはヘリポートはどこになるのか」
 (住民)「花折断層が動けば、京都市内(中心部)が大変になると思うんです。ここら辺はすぐに(行政からの)応援は来ないだろうと。最低限1週間~10日ぐらいは地元で助け合わないといけない」

「防災への第一歩は知ること」街歩きツアーで花折断層を紹介

  「知ることが備えにつながるのではないか」。そんな思いから、花折断層を紹介する街歩きツアーを催す男性もいます。気象予報士の資格を持つ吉村晋弥さんは、東日本大震災の被災地を目の当たりにし、「防災への第一歩は知ること」だと、13年前からツアーを始めました。ツアーでは、観光客や地元の人たちにも親しみのある左京区の吉田山が、過去の花折断層の活動によって隆起してできた山だという知られざるエピソードの紹介もされます。

  一方、吉村さんはこうしたツアーを通じて、“ある変化”を感じています。定期的に開催してきたこのツアーですが、これまでは地元の人よりも、観光客の参加が多かったといいます。しかし、能登半島での地震以降、京都府民らの参加が増えたというのです。

 (京都市民)「(断層が)動いたときのエネルギーってものすごいんだなって純粋に思えたので、ちょっと危機感が高まりました」
 (京都市民)「やっぱり他人事のように離れていると思ってしまうんやけれども、私たちも直面した時に備えて注意しないとダメなことってたくさんあるので」

 (吉村晋弥さん)「花折断層という名前はご存知の方が多いと思うんですけど、実際どこを走っているとか、どんな性質の断層なのかとかまで詳しく知っている人は多くはないんじゃないかなと思っています。まずは知ってもらって、断層が身近にあるということを感じていただけることで、防災や減災の第一歩になるんじゃないかなと」

 大きな被害が想定される花折断層。いつか来るその日のために、一人ひとりが備えを進める必要があります。

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