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『京都市の死者最大4100人』懸念される大地震リスク 市のハザードマップから見えた"落とし穴"とは「私のいる場所は震度5強...と思ったら震度6強!?」

MBSニュース / 2024年9月5日 12時5分

 京都に潜む大地震のリスク「花折断層」。最大震度7を観測すると言われていて、京都市における被害想定は死者最大4100人です。しかし、その京都市の地震ハザードマップには課題も。MBSの気象・災害担当で『人と防災未来センター』の特別研究調査員でもある福本晋悟記者が取材しました。

南海トラフと花折断層…2つのリスクに備える「震度7も頭の片隅に」

 (立命館大学リスクマネジメント推進室長 深川良一教授)「こちらは文学部の建物です。基本的にキャンパスにあるすべての建物は耐震補強が済んでいます」

 京都市北区にある立命館大学衣笠キャンパス。大地震などの災害に備えて対策を進めています。地下の倉庫には、学生や教職員ら最大8000人が3日間生活できるよう食料や毛布などを備蓄しています。

 (深川良一教授)「震度6強とか震度7も頭の片隅に置いて対応する必要がある。南海トラフ地震と花折断層地震が懸念されていて、その2つに対して備えています」

 人口約143万人の京都市。その周りには、西に樫原-水尾断層、南には宇治川断層などいくつもの活断層があります。なかでも地震が起きると最も大きな被害が想定されているのが花折断層です。花折断層は左京区から滋賀県高島市まで続く全長約47kmの活断層で、その一部は江戸時代の1662年に寛文近江・若狭地震を起こし、約700人~900人が亡くなったとされています。

花折断層地震 専門家は「阪神・淡路大震災に匹敵する可能性」と警鐘

 今、花折断層地震が起きるとどんな被害になるのか?日本活断層学会の会長で同志社大学理工学部の堤浩之教授は、市街地のすぐそばを断層が通っていることから大きな被害が出る可能性が高いと指摘します。

 (堤浩之教授)「単純な比較はできませんが、都市直下で起こった地震という点では、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)に匹敵するような地震の規模。それから人口密集地と断層との位置関係といい、同様なことが起こる可能性は十分にあると思います。京都市内は結構古い家屋が多いので、やはり建物の耐震補強をしておけば、全壊を免れ命は助かる」

 京都市の想定では、中京区や左京区などで最大震度7。最悪の場合、市内の死者は約4100人にのぼるとされています。

なぜ?京都市のハザードマップは『区の境界で想定震度に違い』

 市は今年3月、花折断層など京都市周辺の断層で地震が発生した際の最新のハザードマップを作成、市民に注意を促しています。ところが…

 (記者リポート)「こちら三条通の交差点の南側です。こちらはハザードマップで最大震度6弱が想定されているんですが、横断歩道を渡ると震度6強の想定に変わります」

 一体なぜなんでしょうか。

 京都市のハザードマップでは想定される複数の地震のうち、その区ごとに最も多くの住民が強い揺れに襲われる地震について記載しています。例えば同じ区内でも住民が多い市街地と少ない山間部で揺れが大きい地震が異なる場合、住民が多い市街地の地震の想定が区内全域に適用されるのです。

 中京区は花折断層の地震を想定していますが、隣の右京区は別の地震を想定しているため、区の境で想定震度が異なる場所が出たのです。立命館大学衣笠キャンパスは北区と右京区にまたがるため、同じキャンパス内で、震度5強と震度6強の異なる震度が想定されています。

専門家「京都市のハザードマップはミスリードを起こす可能性」

 では、震度5と6はどれほど違うのか、京都市市民防災センターで地震の揺れを体験すると…

 (記者リポート)「震度6クラスはテーブルの脚を強く掴んでいないと身体がもっていかれそうになりました。震度5クラスと震度6クラスではかなりの差を感じました」

 地震ハザードマップを研究している龍谷大学の石原凌河准教授は、京都市のハザードマップは住民に誤解を与える恐れがあると指摘します。

 (龍谷大学政策学部 石原凌河准教授)「区ごとの地震ハザードマップは、断層がかなり特定されすぎていて、『その断層(の地震)だけしか想定されていないんじゃないか』というミスリードを起こす可能性がありますので、他の断層による被害も想定されているということを合わせて伝えていくべきかと思います」

 同じく複数の断層が周辺を通る札幌市では京都市のように区で分けるのではなく、想定される5つの地震の中からその地点の最も高い震度をハザードマップに載せ、市民に備えるよう啓発しています。

 京都市は一部の区の境界で想定震度に差が生じている今のハザードマップについてどう考えているのでしょうか。

 (京都市防災危機管理室 吉川暢担当係長)「行政区ごとに想定する断層が違うことによって安心材料になってしまう可能性もありますので、今後この方式が正しいのかどうかも検討していきたいと考えます。(住む場所の)震度階級を見ていただいて『低いから安心』ではなくて、最大の揺れに備える心構えを持っていただくことが大事。京都市でもそれを今後はお伝えしていく必要があるのかなと思っています」

「もしもの時は自分が守らないと」住民主体の防災訓練を行う地区も

 花折断層の地震で震度6強が想定されている右京区の西京極地区。毎年、地域の住民が主体となって防災訓練を欠かさず行っています。

 (参加者)「子どもがいるので『もしもの時は自分が守らないと』思うのと、地域のために何かあった時は助け合いだと思って参加しました」
 (参加者)「いずれ大きな地震が起きる可能性が高いと常日ごろ言われていますので、防災・予防をしていかないといけないと思います」

 京都の地下で息をひそめる活断層。いつか来るその時に備えるため、的確にリスクを伝える必要があるのではないでしょうか。

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