『関西は地震が少なかった』は事実?大震災前の"迷信"の根底にあったものとは 近畿には発生確率「Sランク」の活断層地震も 地下に潜む地震リスクの警鐘(3)【阪神・淡路大震災から30年】
MBSニュース / 2025年1月17日 18時5分
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は「関西で地震は起きない」という“迷信”を打ち砕いた。それまでは、「関西は地震が少ない」と広く思われていたと聞く。その根底にあるのは、「東京では地震が多い」という文脈だったのではないか。
神戸市の「約19倍」 東京23区で「震度2」を観測した回数
気象庁の震度データベースで調べると、震災までの過去20年間の「東京」と「神戸」で観測された地震の回数差は歴然としている。面積などが異なるため単純比較はできないとしても。
神戸の震度1の回数は20年間で52回。平均すると年2~3回となる。一方、東京ではその約8倍となる。震度2では東京が約19倍多い。神戸の震度3の観測は2回で、震度4は20年間で観測されることはなかった。「関西で地震は起きない」との思い込みは、このような地震の“少なさ”が背景だったではないだろうか。
阪神・淡路大震災以降、市民にも広く知られるようになった「活断層」の存在。ただ、震災前は、「活断層地震」がどれくらいの周期で起きるのか、つまりは、地震発生間隔が何年くらいなのかは明らかではなかった。その研究が進むのは震災後だ。
30年以内の発生確率が1~3%でも「Sランク」…なぜ?
地震発生確率の長期評価は、南海トラフ地震の数値が有名だ。国の地震調査委員会は、今年1月15日、南海トラフ地震の発生確率を「今後30年以内に70~80%」から「今後30年以内に80%程度」に引き上げた。このように数値で表すことができるのは、阪神・淡路大震災後の研究知見によるものだ。
「海溝型地震」である南海トラフ地震は、歴史上おおむね100~150年周期で起きてきた。直近では1940年代(1944年の昭和東南海地震、1946年の昭和南海地震)に発生し、それから約80年が経過しているため、南海トラフ地震の発生確率が高く見積もられている。
しかし、海溝型地震と比べると活断層地震の発生周期は長いため、発生確率は非常に低く算出される。近畿地方では、大阪の南北に通る「上町断層帯地震」や滋賀県の「琵琶湖西岸断層帯地震(北部)」などは、確率が最も高いとされる「Sランク」だ。しかし、「上町断層帯地震」の今後30年以内の発生確率は2~3%。「琵琶湖西岸断層帯地震(北部)」は1~3%だ。
活断層があるなら確実に地震リスクがある
一見低く見える数値だが、もしこの手法が震災前にあったとすれば、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)発生確率は、0.02%~8%だったとされる。それでも起きるのが地震だ。
阪神・淡路大震災の前から、「六甲山断層」の存在は分かっていた。ただ、その地震の発生は目前なのか、数年先か、数十年先なのか、さらに先か―。「いつ」なのかが明確には分からないのは今も昔も同じだ。
確実に言えるのは、「活断層があるということは、確実に地震リスクが存在している」ということだ。阪神・淡路大震災の経験と教訓や反省を踏まえて提供されるようになった「リスク情報」。これらをどのように受け止めるのかは、最終的には私たち一人ひとりに託される。地震リスクは、いまも地下に潜んでいる。
◆取材・文 福本晋悟
MBS報道情報局 災害・気象担当デスク。「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」特別研究調査員。阪神・淡路大震災発生時は滋賀県在住の小学3年生。震災で両親を亡くし転校して来たクラスメイトと過ごした。
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