<東京ディズニーランド記事への投書(2)>安月給でも従業員を満足させる「キャスト専用イベント」の仕組み
メディアゴン / 2015年11月10日 7時30分
メディアゴン編集部
* * *
メディアゴン編集部に届いた手紙。10月29日に配信した「<TDL現役キャストが直言>意外?東京ディズニーリゾートの従業員不足が死亡事故の原因」(http://mediagong.jp/?p=13033)という記事に対するリアクションである。
以下の投書はメールではなく、編集部宛に封書で届いたいわゆる「タレコミ」に類する書面である。真偽の判断は読者にお任せするとして、非常に長文の書面であったため、3回に分けて全文掲載する「その2」である。
***<以下、投書(その2)>***
(その1はこちら:http://mediagong.jp/?p=13179)
準社員に当てがわれた「M・A・G・I・C」の5段階のランク。オンステージキャストはI、Cまでの昇格があるのですが、クラークキャストと呼ばれる本社部門で事務サポートを行うキャストにはI、Cの昇格制度がなく永遠に「G止まり」です。
本社部門でのクラークキャストも私の知る限り、将来の不安や昇格がない環境でモチベーションが下がり、多数離職しているキャストがいます。
評価されない上に、人手が足りないことを理由に、キャストはどんどん多方面の業務を当てがわれていることもモチベーションが下がる原因です。いままで正社員が行っていた業務を、いとも簡単に準社員に降ろしています。
一般的なアルバイト員がやるような仕事ではない、かなり責任能力の高い仕事をどしどし降ろします。それなのに、評価も変わらず、同じ時給でやらされるのです。
よい例として、社内にはさまざまなインストラクター業務が存在します。その内の一つとして「ユニバシティーリーダー」という全ての従業員が入社した直後に行うトレーニングを担当するインストラクターがいます。毎年新しいインストラクターをキャストから公募で募集し、選考で選ばれた10数名のインストラクターが、日々入社してくる従業員にディズニーのいろはを教えます。
何年か前までは、それを正社員が担当していました。それが、今は準社員が担当しています。準社員に担当させるのは悪いこととは思いませんが、選考で選ばれた優秀な準社員にもかかわらず、給与は一切変わりません。
要は時給¥1,000で、誰もが簡単にできる訳ではない「インストラクター業務」をやらされています。そういった選考タイプのインストラクター業務は、ュニバシティーリーダー以外にも多く存在しますが、すべて特別手当などありません。
この他、インストラクター業務だけではなく、テーマパーク内の日常業務や、本社部門の事務業務においても、責任が必要とされる業務を次々にアルバイトキャストに与えられているのが現状です。
ではなぜ、特別な手当も出ないのに、インストラクター業務をやりたがる従業員がいるのか?なぜ、長く続けるキャストがいるのか?
その疑問を説く、この会社の特異性に触れたいと思います。
離職率が高いとお伝えしたものの、それと反比例し、長く働くキャストも大勢います。簡単に言うと、この夢と魔法の世界にどっぶり浸かるキャストもいれば、それに染まらず離職するキャストもいるということです。
ディズニーの夢と魔法の王国に憧れて入社する人たちも実際のところ多く、入社後その風土にハマり、どんなに安月給でもここで働けることに満足し、プライドを持つキャストが多く存在します。悪い言い方をすれば、彼らは、いわば宗教の信者のような人間です。
現実と懸け離れたこの空間で、理想の仕事ができる。ゲスト(お客さん)の笑顔を見られるだけで幸せと感じる。そういった自己陶酔している人も多くはありません。
実際に、弊社はキャストを離職させまいと、さまざまなイベントを社内で開催しています。その内の一つが、「ファイブスターパーティー」と呼ばれるイベントです。
職場の上司がファイブスターカードと呼ばれるカードを、頑張っているキャストに配布し、そのカードをもらったキャストだけが参加できるパーティーが「ファイブスターパーティー」です。パーク内の施設を使い、運営時間外にキャストを呼んで、慰労会のようなイベント開催します。そこには上司が参加者にむけて「いつもありがとう」とお礼の言葉を述べて、彼らのモチベーションを上げたり、ディズニーのキャラクターのショーを実施したりします。
また、秋には、「お互いの良いところを褒めたたえましよう」と仲間にメッセージを送り合う「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」というイベントも全社的に開催しています。メッセージをたくさんもらい、各部門内で選ばれたキャストは、年明けに開催される授賞式に招待され、特別なピンバッジをもらえます。
バッジをもらえるだけで、給与には何の影響はありません。残念なことにこのイベントは、キャスト間の投票率が各部門で競争化されてしまっており、強制的にメッセージを書きなさい!という本来の趣旨とは逸脱された状況になっています。
とはいえ、受賞したキャストは誇りを持ち、モチベーションが上がっているのは事実のようで、会社としてはイベント実施を自己満足とはいえ、見事成功に導いていると言えるでしよう。しかし、これらのイベントでモチベーションを上げることができるのは、一部のキャストだけであり、上述の「信者」がほとんどなのです。
ファイブスターパーティーといい、スピリット・オブ・東京ディズニーリゾートといい、こういったキャスト向けイベントは、社外的にも見栄えがいいので、ここ最近、色々なメディアに取材してもらい、メディア露出が激しいのですが、あくまでもこの露出は社内の評判を上げるための戦術だと言えます。
***<その3に続く>***
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