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<ワイドショーこそがテレビの本質>なぜワイドショーの「立てこもり事件」の生中継は視聴率を稼ぐのか?

メディアゴン / 2015年4月13日 6時55分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

筆者はこれまで放送作家として、笑い、バラエティ、トーク、対談、批評、報道、ドキュメンタリー、クイズ、歌、アニメ、人形劇、教育、子供、ギャンブル、スポーツ、ドラマ、そしてワイドショーと、ありとあらゆるジャンルの番組をやって来た。

来る仕事は拒まないのが営業方針だからだ。もちろん、原稿料が好きだからだ。ちょっとかっこよく言うと、ある日、テレビという箱から出て行く放送物はすべて同じだと気づいたからだ。どんなジャンルであろうが、テレビはテレビ、と思ったのだ。

こうして38年やって来て、気づいたことは、

 「ワイドショーこそがテレビの本質だ」

と言うこと。

番組を観る方も作る方もジャンルの好き嫌いはあるだろう。筆者は作る側としては笑いが好きだ。でも、ここで言っているテレビの本質とは、好き嫌いのことではない。

なぜ、「ワイドショーこそがテレビの本質だ」と考えるのか。

まず、

 「より多くの視聴者が観たいものにストレートに答えているから」

である。そして、もう一つの理由は、

 「生放送だから」

である。まず、前者(より多くの視聴者が観たいものにストレートに答えている)についてはこう考えてみたい。人間の趣味嗜好は多様である。あまり多くの人が好まない哲学とか、物理とか、数学とか、そういうことに興味がある人も居るし、筆者のように食い物、ギャンブル、遊郭など、下卑たものに興味のある人までその幅はとてつもなく広い。

しかし、テレビは視聴率を取らなければならないから、数の少ない高尚な趣味を持つ人に合わせて番組を作るわけにはいかない。できるだけ多くの人が興味関心を持つ事象を取り上げて番組にしなければならない。平均には合わせない。最大多数に合わせる。

そこに特化している番組が「ワイドショー」なのである。

では、沢山の人が興味を持つこととは、何なのか?

いまや臨床ではほとんど役に立たないことがわかった精神分析学だが(科学的根拠を提示できないため)、精神分析学の祖、フロイト先生は、その慧眼で、人であれば誰もが興味を持つことを見抜いていた。

それは、「エロス」と「タナトス」である。誤解を恐れずに日本語訳すると、「生」と「死」である。

もっと卑近に訳すと「性」と「暴力」である。「暴力」は「攻撃すること」「殺人」「他人の不幸」ととらえてもらってもよい。人がみな興味のあることは「性」と「暴力」であると、フロイト先生は見抜いていた。

ワイドショーはそこから逃げない。テレビ風のオブラートに包みはするが(最近のオブラートが分厚すぎることも指摘しておく)、興味関心に率直に見せるものは「性」と「暴力」である。だから、ワイドショーはテレビの本質なのである。

後は、生放送であること。ネットが充実して世界中が同時に観られるなどと言っても、事件現場にすぐさま中継を立て、容疑者の護送をヘリコプターとバイクに積んだカメラで追いかけるなど、こんな規模を生(現在)で見せてくれるのはワイドショー以外にない。

ワイドショーで最も視聴率を稼ぐ内容の一つが「立てこもり事件」の生中継である。何も起こらなくても数字は上ってゆく。何か不幸が起こりそうだという下衆ば興味で視聴率が上がってゆく。

ワイドショーがテレビの本質だとしたら、ワイドショーなどより遙かに高い視聴率を記録することのある他の番組は何なのだろう。

それは、「テレビが売る夢である」というのは、考えが甘いだろうか?

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