「夫がお金を入れてくれない」夫名義の住宅ローンを払い続ける妻…離婚前に考えること
MONEYPLUS / 2024年8月4日 18時0分
「夫がお金を入れてくれない」夫名義の住宅ローンを払い続ける妻…離婚前に考えること
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、離婚を検討している女性。離婚の際に考えておきたいお金のポイントは?FPの當舎緑氏がお答えします。
【相談者プロフィール】
・妻:200万円(月給15万円 賞与あり)
・協会けんぽ・厚生年金に2023年からから加入している
・夫:不明
・こども:小学6年生、中学2年生
【毎月の支出の内訳】
・住宅ローン及び住居費:月10万円(夫負担)
・食費と日用品:8万円(主に夫負担だが妻もある程度の負担)
・水道光熱費:夫負担のため不明
・携帯電話代及びインターネット代:夫負担のため不明
・子どもの習い事代:2万円(妻負担)
・自動車維持費用:約1万円(ガソリン代など妻が負担)
當舎:近年、パートに対する社会保険適用拡大が促進され、妻の所得が増えたご家庭も多いでしょう。その増えた分をそのまま貯蓄や投資に回すことができればいいですが、そういったご夫婦ばかりではないのが現実です。
今回のケースでは、まだ離婚には至っていませんが、家計に関するすり合わせが夫婦で話し合えないまま離婚の危機に瀕している状況です。
厚生労働省の令和5年人口動態統計月報年計(概数)を見ると婚姻数47万4717組に対し離婚件数は18万3808件で、離婚率(人口千対)は令和4年の数値1.47から1.52となり、わずかに増加しています。離婚の原因として挙げられるものの一つに、お金の問題があるケースは多いもの。夫婦といっても育った環境が異なればお金に関する考え方が違ってくるのも当たり前でしょう。このような場合に知っておきたいこと、準備すべきことをお話しします。
夫が家計に入れるお金を減らし始めた
このご夫婦は、これまで妻が扶養の範囲内で働き、毎月夫からその都度お金をもらうという形で家計管理をしていました。この方法は、住宅ローンも夫の名義であることから、夫婦円満なら何の問題もありません。ところが、妻が扶養を外れるくらいに収入を得られるようになったころから、夫から毎月渡されていたお金が減り始めました。何度注意しても聞いてくれないことから、今後離婚も視野に入れたほうがいいのか悩んでいます。
ただ、子どものことを考えると、すぐに離婚するには経済力に不安があります。妻によると、購入したマンションは、子ども達が通学している小学校と中学校に近く、売却するよりも「住み続けたい」という希望があります。返済中の住宅ローンは、夫が契約して住宅ローンを借りている状態で、マンションの名義も夫のみ。
もし、今後夫がローンを負担してくれなくなった時、妻の選択肢として考えられるのは、以下の3つのいずれかになるでしょう。
(1)このまま夫名義の住宅ローンを代わりに返済し続ける
(2)新たに妻が住宅ローンを借りる
(3)離婚をして財産分与をしてもらう
妻にとって、ここでの選択がライフプランの分岐点となります。
離婚したいと迷った時に考えるべきこと
現在は、お金を家計に入れてくれない夫の代わりに妻が補填して住宅ローンを支払っていますが、このまま住宅ローンの返済を継続していくという選択枝は確かにあります。この状態で「円満夫婦」であれば、あくまでも夫婦間の問題と言えるかもしれません。ただ、今後、離婚も想定するということであれば、この選択は悪手となります。
では、妻が新たに住宅ローンを組むことはできるのでしょうか。そもそも、一般的に金融機関の融資では、借り手の返済能力に応じて金利を決めます。確実に返済できそうなら低く、そうでなければ高くなるのが原則です。つまり、急に所得が上がった妻では返済能力に不安があるため、そもそも融資が認められるかはわかりません。
住宅ローンを返済していく際に適用される金利は、融資実行時の金利が適用されるのが一般的ですが、「住宅ローンを申し込んだ時点の金利」か「融資が実行された時点の金利」のどちらかになるのが通常です。つまり、夫の返済中の住宅ローンと同条件ではなく、さらに悪い条件となることも考えられます。そうなれば、返済額が今よりも高くなるという可能性もあるでしょう。つまり、妻が今するべきことは、離婚を「する」と仮定し、以下の点を整理し、今後とるべき行動を検討することです。
・マンションを財産分与してもらったその後のローンを返済できるのか
・夫の代わりにこのまま返済し続けて夫と円満でい続けられるのか
・借金を支払って今の自宅に居続けることのメリットと母子家庭になったことによる公的支援によるメリットとの比較
一旦別居するという選択肢も
相談者が、「自宅マンションに住み続ける」ことにこだわっていることから、住宅ローンに照準を合わせて説明しましたが、家計収支を見ると、それ以外の問題も山積です。夫の全体の収入や支出状況を妻がはっきりと把握していませんし、携帯電話やインターネットなども契約者は夫です。食費や日用品などの日常費は、毎月夫からお金を渡された範囲内でまかなっていたため、家計簿もつけていませんでした。
このまま妻が無理をして家計を支え続けても、妻の収入だけでは自転車操業となる可能性があります。もし、離婚を考えたものの、もう少し状況を見極めたいと思われるのであれば、一旦別居をして、家庭裁判所に婚姻費用の分担調停を申し立てするという方法もありますので、ご紹介しておきます。詳細については、裁判所のHPの「婚姻費用の分担請求調停」のページを参考にしてみてください。
夫婦の資産、収入、支出など一切の事情について、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらうなどして事情をよく把握して、解決案を提示したり、必要な助言が調停委員から提案されます。合意を目指しますが、なお話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始されます。妻からいきなり調停にするには勇気が必要ですが、裁判所のHPに記載されている婚姻費用の算定表
は、家計を夫婦が分担する際の目安にはなります。これを見て、調停をして争うよりも、減らした金額を元に戻して家計に入れる選択を夫がするのか様子を見るのもいいかもしれません。
離婚には準備が必要
「調停」には、離婚を目的とするものだけではなく、「夫婦関係調整調停(円満)」という調停もあります。実際に離婚してしまうと、携帯電話の名義変更や子どもの健康保険など、手続きだけで非常の面倒になりがちです。大変な手続き関係で何があるのか、婚姻期間を加味した財産分与がどうなるのかなど、いきなり離婚を切り出す前にできることはたくさんあります。
今回、夫がお金を渡してくれなくなったことが原因で離婚の危機に瀕していますが、妻が将来、経済的に自立するきっかけと考えることもできるでしょう。自分が我慢すればいいとは思わず、無理をしないようにしてください。
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(當舎 緑)
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