その投資信託、本当に長期保有できますか? 妨げる2つの問題とクリアする方法
MONEYPLUS / 2024年10月2日 7時30分
その投資信託、本当に長期保有できますか? 妨げる2つの問題とクリアする方法
「投資信託は長期保有すること」などと言われますが、それには2つの問題をクリアする必要があります。
長期保有すれば投資信託は儲かる?
「投資信託は長期保有で」。この言葉を疑っている人は、恐らくいらっしゃらないでしょう。私もそう思います。
そもそも投資信託の運用資産の増減が激しいと、運用者は非常に運用しにくくなります。解約に備えて一定のキャッシュを持たなければなりませんし、売買が頻繁に起こると売買コストもかさみます。何よりも一定のキャッシュを持たなければならないため、フルインベストメントができず、運用効率が悪化します。
それゆえに、投資信託での運用は長期保有が合理的なわけですが、ひとつ問題があります。それは、本当に長期保有できるのか、という問題があることです。
恐らく、よほど変な投資信託を選ばない限り、長期保有していれば一定のリターンは得られるはずです。
「よほど変な投資信託」とは、たとえばオプションなどのデリバティブを組み合わせて、日経平均株価が一定水準まで下がらなければ値下がりリスクが限定される「リスク軽減型ファンド」や、特定のテーマに集中投資する「テーマ型ファンド」などのことです。この手の投資信託はそもそも長期保有に向いておらず、状況に応じては損失を取り戻す間もなく償還されてしまうこともあります。
でも、これらを除けば、たとえばオール・カントリーやS&P500などの株価指数に連動するインデックスファンドでも、ひたすら積立投資を続けていれば、20年後、30年後には、相応のリターンを享受できている可能性が高いと思われます。
暴落を1回でも経験し乗り越える
投資信託の長期保有で一定のリターンを手にするためには、「運用し続ける」ことが極めて重要な前提条件になりますが、長期保有することを妨げる2つの問題があり、その問題について対処する必要があります。
第1の問題は、投資にありがちな心理によるものです。
マーケットは常に上下します。上昇局面にある時は、誰もが多幸感に包まれているでしょうから、特に何も問題はありませんが、大変なのが下落局面にある時です。恐らく多くの人が、「このまま下がり続けるのではないか」、「もう二度と買値に戻らないのではないか」という気持ちになるのですが、こうした局面で絶対にやってはいけないのが、積立を止めてしまったり、持っている投資信託を解約してしまったりすることです。
一度、投資することを止めてしまうと、それを再開させるためには途方もないエネルギーが必要になります。再開させること自体はとても簡単なのですが、実際に再開しようと思っても、かつて大きく損をした記憶が蘇り、躊躇してしまうのです。そのうち徐々にマーケットが元の水準を回復するなかで、「ああ、もっと早く買っておけば安く買えたのに」と考えるようになり、「もう少し調整したところで買いたい」などと策を弄するうちに、マーケットはさらに回復して、いよいよ手が出せなくなります。
このように極めて心理的な問題ではあるのですが、ここを乗り越えて、マーケットが急落しても我慢して積立を続ける、解約せずに持ち続けるようにしないと、資産を形成することはできません。
ただ、このように積立を続けられる、あるいは保有し続けられるようになるためには、恐らく努力すれば何とかなるだろうと思います。マーケットが急落した後も、投資し続けることによって損失が回復する経験を1回でもすれば、その経験が活かされて、動揺しなくなります。
運用会社の経営面にも注意する
問題は2つめです。たとえマーケットが暴落しても投資し続けられるだけの胆力が身に付いたとしても、投資信託には長期投資を諦めなければならない状況に直面するケースがあるのです。
運用会社は企業ですから、皆さんから集めた資金を運用するのと同時に、運用資産から日々、一定率の信託報酬を受け取って売上を立て、利益を捻出して経営を続けていきます。
では、利益を計上できなくなったら、運用会社はどうなるのでしょうか。最悪、倒産。良くて他の運用会社に吸収されるか、でしょう。なかには個人向けの投資信託事業は脇役で、メインは年金基金などの大きな資金を運用し、全体で黒字を確保している運用会社もありますが、それでも赤字続きであれば、投資信託事業から撤退することも十分に考えられます。
自分の保有しているファンドの運用会社が、このような状況に直面した時、その影響を直接受けるのは、ファンドの受益者です。長期的な資産形成を目的にして購入したファンドの運用会社が存続できないとなったら、運用し続けるための前提条件が崩れてしまいます。
したがって、投資信託を自分で選んで購入するにしても、運用成績だけでなく、それを運用している投資信託会社は今後も長期間、経営を持続できるのかどうかも、併せてチェックしておく必要があるのです。
もちろん設立から間もない運用会社は、最初のうちは運用資産の規模も小さいので、赤字が続くのはある程度、仕方のないことですが、それにも限界があります。設立からある程度の年数が経過しているにも関わらず、運用資産の残高が100億円にも満たない運用会社は、経営の持続性に疑義ありと見るのが妥当でしょう。
これを「投資信託の誤解」という言葉でまとめるのは、いささか違和感ありなのですが、運用会社の経営の持続性まで見ている人は少ないので、指摘させてもらいました。
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(鈴木雅光)
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