自分が株主の企業に不祥事ニュースがあった場合、あなたはどう行動する? 模範的な投資家の行動とは
MONEYPLUS / 2025年1月9日 7時30分
自分が株主の企業に不祥事ニュースがあった場合、あなたはどう行動する? 模範的な投資家の行動とは
株式投資をしていると、突然の不祥事ニュースに巻き込まれてしまうことがあります。業績好調で、株価が上昇中にそういったニュースがあった場合、株の投げ売りが起きることは避けられません。もし自分が株主である企業にこういった報道があった場合、どういう行動を取るべきでしょうか? まさにわたしが最近巻き込まれた事例で考えてみたいと思います。
シックスパッドを手掛ける株式会社MTGの事例
美容ローラー「ReFa」や「シックスパッド」などの健康美容家電を手掛ける株式会社MTG(7806)が、2024年12月12日に「当社連結子会社におけるマーケティング費の過小計上の疑いに関するお知らせ」を発表しました。具体的には、子会社で広告関連の仕入れ計上において書類の改ざんが疑われるため、未計上や計上年度のズレが発生し、その影響額は、約6.6億円に上る可能性があるといった内容です。
当社は、この発表の約1ヶ月前に決算発表をしています。
画像:MTG「2024年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
2024年11月11日に発表された2024年9月期の①売上高予想は71,865(百万円)、②前年比19.5%、③営業利益3,965(百万円)、④前年比+10.2%でした。当初の営業利益予想は3,400(百万円)なので、16%の上振れ着地です。
画像:MTG「2024年9月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
さらに、2025年9月期の予想は、①売上高予想は80,000(百万円)、②前年比11.3%、③営業利益5,000(百万円)、④前年比+26.1%と、さらに増益率が拡大しています。これを受けて、株価は大幅上昇しており、投資家の期待が膨らんでいたところにこのニュースです。
不正会計報道の翌日、株価はストップ安の22%下落、さらにその翌日は11.5%、その翌日は3.8%の下落と、3日連続の急落となりました。発表前の株価2,270円から、たった3日間1,506円まで、66%の大暴落です。
じつは、わたしも当社の株を保有していました。このニュースは12日の17:30に開示されており、そのあとPTS(私設取引システム)の夜間取引で株価は大きく下落していました。翌日は、さらに下げるかもしれないと予想し、翌日を待たず夜間取引で一部売却。1,950円で売却できたので、翌日のストップ安の悲劇は受けずにすみました。
その後の株価の動きは、非常に興味深いです。報道翌日から3日間連続で下げたのちは、大納会の12月30日まで9営業日連続で上昇。下落前の株価には戻っていないものの、もうあと少しで手が届きそうな位置です。今振り返ってみると、報道後、大きく下落したときは、絶好の買い場だったと言えます。
ただし、この事例が、すべての不祥事報道後の株価の動きを表しているわけではありません。当然のことながら、不祥事の内容や、その後の企業の対応によって、株価の反応はまったく違ってきます。
それを前提に、模範的な投資家の行動を挙げてみます。
短期的な視点と長期的な視点で考える
まず、短期的には株価は下落することが予想できるため、保有株をいったん売却することを検討します。一部のみ売却して、短期的な下落のダメージを和らげるのもよいでしょう。その上で、長期的な視点で、MTGの再発防止策や、ガバナンス改善に信頼が持てるかを見極める必要があります。さらに、この不祥事が、ほんの一端で、追加の隠れた問題がないかどうかを確認することは非常に重要です。買い増しや、新規購入を考えるのであれば、調査結果が公表されるまで様子見するのが賢明です。
当社は、12月23日に株主総会を行いました。ここで、今回の不祥事についてなんらかの報告があると予想できますので、株主であれば、総会に出席して確かめるのがベストです。会場が名古屋のため、わたしは参加できませんでしたが、参加した投資家さんによると、社長は冒頭に株主からの質問にはすべて答えると発言。実際に、厳しい質問にも真摯に回答したそうです。
株価は、株主総会後に、いちだんと上昇の角度を強めていることから、注目していた投資家は多かったようです。
明けて1月6日、あらためて2024年9月期の有価証券報告書の提出期限が、3月7日まで延長されるとの発表がありました。これは事前に分かっていたことなので、株価の反応は限定的でした。
今回、株価が比較的早く回復に向かったのは、当社の業績が堅調であることが大きいと思います。下がってきたところで、買いたいと待っていた投資家にとっては、絶好の買い場になりました。不正会計については、あってはいけないことですが、影響があるのはすでに着地した過去の数字です。新年度予想が堅調であることに目を向ければ、変わらず魅力的な投資先であることは間違いありません。
慎重に考えるならば、次回発表の第1四半期決算まで待って、今期が予想通りに進捗しているか確認をしてから投資を検討してもよいでしょう。わざわざ不安の種がある銘柄を選ばなくても、ほかにもたくさん魅力的な銘柄はあります。
不祥事のニュースは投資家の良い教材
不祥事のニュースは、事前に予想するのが難しく、また実際に発表されてからの株価パターンもさまざまで、まさに投資家泣かせです。その都度、情報を精査し、どのくらい業績に影響するか、どのくらいの期間長引くか、などを熟考するしかありません。
ただし、そういった経験を重ねていくことで、買っていい場合と、ダメな場合の仕分けの精度が上がってきます。
保有株に限らず、不祥事のニュースがあった際にそういった分析を続けることで、大きなチャンスを掴める可能性が広がります。投資家としてステップアップするための教材と捉えてみてはいかがでしょう?
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
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(藤川 里絵)
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