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用もないのにスライドしたくなるシートレール [人とくるまのテクノロジー展2018横浜]

MotorFan / 2018年5月24日 14時10分

用もないのにスライドしたくなるシートレール [人とくるまのテクノロジー展2018横浜]

「ぜひ、まず乗ってみてください」と担当者はおっしゃる。スムーズ&ガタレスレールっていったってそんなに感動することもないだろうな──と動かして本当に驚いた。スルスルを通り越してヌルヌルという印象、前方へのスライドはレバーを上げた瞬間に自重で動き始めるくらいの滑らかさだ。

 このような円滑さが実現できた理由は、ガイドレールとのロック機構構造を見直したから。従来品はシートトラック(シート本体側のロック機構などを収めている部位)とガイドレール間のガタをなくすために、樹脂のブロックを挟み込んでいた。シートトラックひとつにつき前後左右の4カ所。つまり、シート1脚で8カ所。なお、樹脂ブロックにはクリアランス調整の役目も与えられていて、他社の例ではこれをラインで選択組み付けするというケースもあるという。

 それに対して本品は、シートトラックのロックレバーを動かしたときにその前後左右4カ所の樹脂ブロックも下に落ち込む構造とした。常時接触式の従来品に比べればその優位性は明らか。結果、シートトラックとガイドレールはローラーベアリングだけで接触していることとなり、体感した「ヌルヌル」という感触につながったというわけだ。

右側前端部の様子。くさび形状の樹脂ブロックは、スライドレバーを操作すると斜め下に落ち込む。

 さらに本品の樹脂ブロックはくさび形状とし、作動時は真下ではなく斜め下に動くようにした。固定時に隙間があればどんどん食い込んでいく、摩耗にも強い構造としたのだ。

 シートトラックの工夫だけに目が向きがちだが、その実現にはガイドレールの寸法安定性の高さが大いに寄与している。トヨタ車体精工はガイドレールに100kg級(980MPa)の超ハイテン鋼を使用、35回ものロール成形機を用いて、社名どおりの精工な加工を施している。

 スルスル動くのに気を良くしていたら「動きすぎるという声もありまして、だから前に動くときにはスムースに、うしろに行くときは少し抵抗を持たせてという可変機構を開発中なんです」と担当者はおっしゃっていた。人間、欲張るときりがないとは言え、だから高機能製品というのは次々と生み出されていくのだとあらためて認識した。

 なお、本品はホンダ・ステップワゴンをはじめとしてすでに採用されている。


アルファード/ヴェルファイアの3列目シート

 同社ブースにはアルファード/ヴェルファイアのシートフレーム一式も展示されていた。あの、レバーを引くとバヨーン!と一気に跳ね上がる3列目は、こんな機構で成り立っていた。道理で操作が軽いわけだ。ちなみにシート自体はトヨタ紡織の製品。トヨタ車体精工はロングトラベルのガイドレールを供給している。

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