レーサー直系・ホンダCRF450Lに乗って分かったこと→ 軽量ボディのバイクは絶対正義である!
MotorFan / 2018年10月19日 11時45分
技術説明の場では開発関係者が語る新製品に込められた想いの丈に耳を傾ける。そんな取材経験は既に40年を超え、常に淡々と冷静に拝聴するのだが、今回CRF450Lはいつもとは違っていた。 REPORT●近田茂(CHIKATA Shigeru)
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ホンダ・CRF450L……1,296,000円
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技術資料をパラパラとめくりながら目をやると、税抜きで120万円というお高い価格設定に少し驚かされた。しかし次の瞬間、あるデータに目が釘付けとなり、ドキドキと心臓が高鳴り始めたのだ。
動悸ではない(笑)。目に留まったひとつのデータに大きなインパクトを覚えたからである。主要諸元表に示された車両重量の項目。そこには131kgと明記されており、筆者は一瞬自分の目を疑ってしまった程だ。CRF250Lの車重は140kgを超えているし(正確には144kg) 、セロー250だって133kg。450ccのビッグシングルを搭載する今回のCRFが、それよりも軽いなんて、にわかには信じられなかったのである。
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ドキドキがワクワクを呼ぶ。筆者はそんな気持ちを押さえながら冷静に試乗車を走らせた。朝霧高原にあるイーハトーブの森や、牧草地の間を駆け抜ける舗装路、それはまさに想像を超える軽さだった。450ccのデュアルパーパスモデルで、オフロードを駆けめぐるなんて、あまり得意ではない筆者だが、ジャリやマディ、凹凸や山坂等多彩なダートコースに飛び込んでも、何とかコントロールできてしまった。これまでの経験で言えば、少々遠慮したくなる(エンジンの大きな)クラスであることも忘れ、あたかも自分のテクニックがいつの間にか上達してしまったような錯覚にとらわれる程、気軽にスポーツライディングが楽しめ、心地よい汗をかけたのだ。
この軽さには大きな価値がある。ベースとなったのは競技用車両のCRF450R。サスペンション等、かなり多くの部品が共用されている。もちろん公道走行用へと多くの部分に手が加えられているが、基本構造はコンペモデルから踏襲の上、灯火類の装備を始め、公道走行要件を満たすべく専用設計されていた。
セミダブルクレードルのフレームはアルミ製。6速ミッション搭載にあわせてピボットプレートは新設計。フロントのジオメトリーやフレームの剛性バランスも見直された。アルミ角断面のスイングアームには、発砲ウレタンを封入。スプロケットにはモーリスダンパーを採用。チェーンスライダーも一新される等、ドライブチェーンから発せられる走行騒音を低減。7.6ℓ容量を稼いだ燃料タンクは何とチタン製で、その重量は僅か1.214kgに過ぎない。
そしてエンジンはクラウン形状の異なるピストンが採用されて、圧縮比を13.5から12.0対1に変更。排出ガス規制対応で、ピストンリングは3本化されてシール性が向上、同時にオイル消費の低減も実現していると言う。当然クランクも一新されてマスはCRF450R比で約12%アップ。バルブタイミングやリフト量と燃料噴射制御の最適化も図られている。
その乗り味は、意外にもマイルド。ビッグシングルという響きから想像されるパンチ力は穏やかな感触。しかし十二分に太いトルクが実用にピタリとはまる中低速域で発揮されて、その柔軟な出力特性が、どんな場面でも非常に心強く頼れる存在となる。
操舵に対して剛性感の高いフロントフォークは非常にしっかりしたレスポンスを発揮。素晴らしい仕事ぶりを披露し初期作動性に優れたリヤサスペンションの仕上がりも絶品。それで車体が軽いと来れば、走りは楽しいに決まっているのである。コンペモデル並のスポーツ性を優しい雰囲気の中で楽しみたい人にはまさにうってつけ。軽量故の真価が楽しめるライバル無き存在として大きな魅力を覚えた。
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足つきチェック (ライダー身長170cm)
![シート高は895mm。このタイプのモデルとしては当然とも言える高さだが、ご覧の通り足つき性はそれほど悪くはない。シェイプされた車体デザインが利いて、両足の踵が浮く程度。体重のあるライダーならさらに楽になるだろう。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698132_201810181550040000001.jpg)
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ディテール解説
![コンペモデルさながらの骨格はセミダブルクレードルタイプ。ボルトオンされたリヤフレームは新たに専用設計されている。搭載タンクはチタン製。気液セパレーター付きで容量は7.6ℓ容量を確保。単体重量は1214kgに過ぎず、エンデューロ用CRF450Xの樹脂タンクより400g以上軽い。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698136_201810181552350000001.jpg)
![保安部品が装備されたとは言え、機能的な仕上がりを誇るフォルムが印象深い。長いリヤスイングアームは騒音低減策のためにウレタンフォーム注入式となったが、それによる重量増は200g程度だ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698137_201810181552350000001.jpg)
![圧縮比の変更とシール性確保等で専用設計されたピストン。右はコンペモデルのR用。クラウン形状の違いが顕著。そしてピストンリングが3本化されている。強度の最適化等で十分なメンテナンス間隔を確保。シール性も向上し、排出ガス規制対応やオイル消費低減にも貢献している。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698138_201810181608360000001.jpg)
![ピストンの上下震動を打ち消すカウンターウエイト部分の形状に注目。左のLはクランクマスが約12%重く設計されている。俊敏な噴き上がり性がスポイルされる代わりに、粘り強くスムーズで扱いやすいスロットルレスポンスを発揮する。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698139_201810181608350000001.jpg)
![リヤ・アルミスイングアームのカットモデル。角断面の中にはウレタンフォームが充填されている。走行騒音低減策のひとつで、チェーンスライダーの形状変更も相まって、静粛性に寄与している。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698140_201810181608350000001.jpg)
![コンペモデルのRよりは減衰特性を若干ソフトな方に専用チューニングが施された倒立式フロントフォーク。ボトムのインナーチューブにはシッカリとフォークプロテクターが装備されている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698141_201810181553420000001.jpg)
![フロントフォークのトップエンド部にあるアジャスタースクリュー。コンペモデルのRと同様、マイナスドライバーで減衰力の調節ができる。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698142_201810181556540000001.jpg)
![ボトムにリンク機構を持つプロリンク式リヤサスペンション。リンクレシオもRとは若干異なり、トレイル走行に適した路面追従性の良い専用セッティングが施されている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698143_201810181556540000001.jpg)
![リヤアクスル側に掛けてテーパー状にサイズダウンされていく角断面構造のアルミスインアーム。タイヤはIRC製GP-22R。120/80-18サイズでDID製ブラックリムをマッチ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698144_201810181553430000001.jpg)
![水冷4ストロークの単気筒。ユニカムと呼ばれるSOHCの4バルブ449㏄で、最高出力は18kW(24ps)/7500rpm、最大トルクは32Nm(3.3kgm)/3500rpmを発揮。出力特性はとても柔軟で扱いやすい。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698145_201810181553430000001.jpg)
![全幅は825mm。ブリッジバーがボルトオンされたハンドルの幅は広過ぎずとても馴染みやすい物だった。ブラックのハンドルはレンサル製。赤いハンドルパッドが良く目立つ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698146_201810181554540000001.jpg)
![シンプルで見やすいコンパクトな軽量液晶メーター。時計や燃費計等も装備。速度はデジタル表示式だ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698147_201810181554540000001.jpg)
![シート下に位置するエアクリーナー。蓋を外すとスポンジ式のクリーナーエレメントが現れ整備製が良い。ちなみにエレメントは6ヶ月毎の点検、3年毎の交換が推奨されている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698148_201810181552370000001.jpg)
![エアクリーナーボックスの直後に搭載されているのがエリーパワー社製のリチウムイオンバッテリー。公道仕様として必然の灯火類や冷間時の始動性確保で、Rより倍以上となる4.5Ahの容量を誇る。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698149_201810181552360000001.jpg)
![至ってシンプルなハンドル左側スイッチ。L用に専用設計された物だ。上からディマー&パッシングスイッチ、ホーンボタン、そしてウインカースイッチだ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698150_201810181554540000001.jpg)
![右側のハンドルスイッチもシンプルなデザインが印象的。上の赤いのがエンジンキルスイッチ。それを押す(切る)と中段のボタンが飛び出す仕組みで、エンジン始動時はそれを押してキルスイッチを解除する。下の黒い四角いボタンはスタータースイッチだ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698151_201810181554540000001.jpg)
![これも軽量コンパクトなデザインが追求されたヘッドライト。ハンドル操舵系の慣性マスを極力抑え軽快な操作フィーリングに貢献する。上下2灯の高輝度LED式。ウインカーも軽量なLED式で、新設計のフレキシブルラバーを介してマウントされている。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698152_201810181556150000001.jpg)
![ボルトオンされるリヤフレームはライセンスプレートやテールランプ等の装備を考慮して新開発された。軽量設計が追求されたLED式の後部灯火類。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698153_201810181556150000001.jpg)
![コンペモデルに倣った細くスマートなロングシート。ツーリング向きではないが、スポーツ道具として走る(操る)楽しさを演出するに相応しデザインだ。](https://motor-fan.jp/images/articles/10006115/big_698154_201810181556150000001.jpg)
■主要諸元■
・車名・型式 ホンダ・2BL-PD11
・全長×全幅×全高(mm) 2,280×825×1,240
・軸距(mm) 1,500
・最低地上高(mm)★ 299
・シート高(mm)★ 895
・車両重量(kg) 131
・乗車定員(人) 1
・燃料消費率※1(km/ℓ)
国土交通省届出値 定地燃費値※2
31.0(60km/h定地走行テスト値)<1名乗車時>
WMTCモード値★(クラス) 25.7(クラス2)※3<1名乗車時>
・最小回転半径(m) 2.4
・エンジン型式・種類 PD11E・水冷 4ストローク OHC(ユニカム)4バルブ単気筒
・総排気量(㎠) 449
・内径×行程(mm) 96.0×62.1
・圧縮比★ 12.0
・最高出力(kW[PS]/rpm) 18[24]/7,500
・最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 32[3.3]/3,500
・燃料供給装置形式 電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)>
・燃料種類 無鉛プレミアムガソリン
・始動方式★ セルフ式
・点火装置形式★ DC-CDI点火
・潤滑方式★ 圧送飛沫併用式
・燃料タンク容量(ℓ) 7.6
・クラッチ形式★ 湿式多板コイルスプリング式
・変速機形式 常時噛合式6段リターン
・変速比
1速 2.357
2速 1.705
3速 1.300
4速 1.090
5速 0.916
6速 0.793
・減速比 (1次★/2次)2.357/3.923
・キャスター角(度)★/トレール量(mm)★ 29°30´/127
・タイヤ 前 80/100-21M/C(51P)/後 120/80-18M/C(62P)
・ブレーキ形式 前 油圧式ディスク/後 油圧式ディスク
・懸架方式 前 テレスコピック式/後 スイングアーム式(プロリンク)
・フレーム形式 セミダブルクレードル
(Honda測定値)
*製造事業者/本田技研工業株式会社 熊本製作所
■道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
※1 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
※2 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です
※3 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果に基づいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます
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