新型日産デイズ開発責任者インタビュー「設計・開発は日産主体だが、三菱が持つ軽自動車の生産ノウハウをフル活用」
MotorFan / 2019年3月30日 6時35分
3月28日に2代目となった日産デイズの発表会で、開発を指揮した日産自動車の齊藤雄之CVEと報道陣が囲み取材で一問一答。開発の裏話から採用技術の詳細まで、様々な疑問をぶつけました。 REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、日産自動車、三菱自動車工業、ルノー
【開発の背景】
--いま軽自動車の市場は超背高ワゴンが主流になっている中で、なぜデイズルークスではなく、敢えて軽ワゴンのデイズを先にフルモデルチェンジしたのでしょうか?
齊藤 軽ワゴンの市場にもお客様はいらっしゃいますし、本来はこちらがスタンダードという想いもありますから。モデルライフのことも考え、まずはデイズをフルモデルチェンジしました。
--日産さんのクルマでこれだけ新規開発のものを投入するのは珍しいと思いますが、それはなぜですか?
齊藤 珍しいですね(笑)。やはり先代でお客様からいろいろ声をいただいていましたので、それをきちんと反映しようと思うと、走りならエンジン、室内の広さならホイールベースを伸ばすためにプラットフォームも換える必要があるので、そうすると全部換えないと成り立たなかったんですね。しかも軽自動車は全長が決められているので、室内長を伸ばしたいからといって全長を伸ばせないんですよ。
そこでホイールベースを伸ばして、代わりにエンジンルームが小さくなるので、その中に入れるコンポーネントを小さくしなければなりません。それでトランスミッションも、先代は副変速機付きCVTでしたが新型は軽自動車専用に作り替えました。
--今回開発が三菱さんから日産さん主体になったのは、どういった背景があるのですか?
齊藤 やはり先進技術ですね。プロパイロットは三菱さんの技術だけではできなかった所なので、そういうものをしっかり入れていくためには、我々日産が開発した方がスムーズだということですね。
--SOSコールを新型デイズで初採用したのはなぜでしょうか?
齊藤 事故が山の中で起きて、ガードレールを突き破ってしまった時、すぐに救急車やドクターヘリが飛んでくれば、絶対助かるはずなんですよね。仮に心臓が止まっても何分以内なら助かるということを考えると、軽自動車のユーザーが初心者からご老人まで本当に幅広く、特に高齢者の事故が統計的にも多い中で、提供できるのはこれだと思ったんですね。ですから開発としては、これは入れるべきだろうと思い、そのためのスペースも設けました。
【生産】
--開発の現場では三菱さんの開発者も交えていたのでしょうか?
齊藤 ご意見を聴くことはしました。三菱さんとはボルト・ナットのサイズや締め付けトルクが違いますので、それは設計者がきちんと教えてもらいながら進めました。
--三菱さんが設計した先代から受け継いだものは?
齊藤 クルマ自体はほとんど新規開発なのですが、三菱さんは軽自動車に最もふさわしい設備をお持ちなんですね。また水島製作所の周辺には、軽自動車の部品を作るのが得意なサプライヤーさんがいらっしゃるんですね。そこからいろんなノウハウをいただきながら開発しました。
そして水島製作所は三菱さんの工場で、現行デイズルークスもまだラインを流れていますので、ボルト・ナット類を日産のものに換えることはできないんですね。そういうものはそのまま使っています。ただし治具などは、どちらのエンジンもラインに流せるよう工夫しています。
--エンジンも三菱さんの工場で作っているんですか?
齊藤 はい、エンジンも最終アッセンブリーは三菱さんの水島製作所で行っています。
--生産を引き続き三菱さんの水島製作所で行うことを早めに決めたのは、競争力があるからですか?
齊藤 そうですね。日産には軽自動車を作れる設備がなく、例えば車体を吊るハンガーの幅が違うんですね。そうすると、軽自動車を作るためにハンガーを全部作り直さなければなりません。ですから三菱さんが軽自動車のサイズを作れる工場を持っているというのは大きいですね。
--追浜工場で作りたいという話が最初あったようですが、それは無理だった?
齊藤 投資すればもちろんできますが。
--新型デイズに採用されている三菱さんの技術は?
齊藤 ものづくり、生産側の所が一番大きいですね。三菱さんでなければできないことがたくさんあって、例えばプレスを何工程で終えたいという時に、生産側で作りやすい形をデザイナーにフィードバックしています。他にもアッセンブリーの際に動かしやすい、組みやすいよう分割線やヒンジを決めたりなど、そういう所にノウハウがたくさん入っています。
--では、生産に関しては三菱さんと一緒に開発を進めたんですね?
齊藤 はい。そういう所は我々が水島製作所まで行って、もしくは水島製作所の方に来ていただいて、CADデータを見て生産できるかを確認してもらいました。あるいは「こういう組み付けはやったことがない」という話になると、我々の生産担当に来てもらってアイデアを出してもらいました。
開発は新しいことがやりたい、生産は守りたい、しかもそこに会社の垣根があったのですが、それを克服するためにはとにかく会って話そうと。最初はこちらに来てもらうことが多かったのですが、その後の試作は全部水島製作所で進めています。だから我々は1000人単位で開発スタッフが水島製作所に行って、クルマを良くしていきました。
--CADは三菱さんと同じなんですか?
齊藤 違います。ですからデータ変換しています。もっと言えば、ルノーさんと三菱さんは一緒ですね。
--それは今後、統一していくのでしょうか?
齊藤 した方がいいとは思いますが、元々持っているデータがたくさんあるので、簡単ではないようですね。
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